この映画は業界に貢献したのに忘れられていった人たち全員へのオマージュなのかもしれない
──ブラッド・ピットとの本格的な共演は初めてですよね?
『昔、TVシリーズ「愉快なシーバー家」に二人とも出ていたんだけど、実際に共演したことはなかった。クエンティン(タランティーノ)とも話したんだけど、僕らは三人とも同じ時期、年代の半ばころにこの業界で芽が出たという共通点があったんだ。ブラッドは最高の役者で、すごく仕事がしやすかった。
あまり話をしなくても暗黙のうちに、二人が演じるリックとクリフの間柄を理解できたからね。クリフはリックにとってスイスアーミーナイフのような存在だ。スタントマンというだけでなく、愚痴を聞いてくれる相手で、精神科医で、ボディーガードで、アシスタントでもある。クェンティンが二人の業界での歴史について、ファイル何冊分もの情報を与えてくれたんだよ』
──タランティーノ監督とは二度目の作品ですが、彼から学んだことは?
『彼は名作映画の歴史だけでなく、僕が聞いたこともないようなB級映画や三文作品の歴史も知っている。映画史から消えてしまったような、ラルフ・ミーカーとかタイ・ハーディンといった俳優のフィルモグラフィーも完璧に把握しているんだ。
「彼らは決してロバート・デニーロやマーロン・ブランドのような大物じゃないけれど、この業界で彼らがやったこと、貢献したことを見てみろ。君たちが見たことも聞いたこともないへんてこなTV番組を見てみろ」っていう感じさ。だからこの映画はもしかしたらそんな風に忘れられてしまった業界人、成功しようと苦しんでそれなりにこの世界に貢献した人たち全員へのクエンティンなりのオマージュなのかもしれない』
──他にも仕事でそういうディテールを経験したことはありましたか。
『僕が一緒に仕事をした中ではマーティン・スコセッシもその一人かもしれない。マーティンやクエンティンは、子供時代に映画という芸術形式にどっぷり浸かって育ったから、文化であれ政治であれ、彼らは映画という文脈の中で語っているんだ』
──あなたの演じるリックは何をイメージしていると思いますか?
『彼はかつて人気番組で有名になったけど、賞味期限が尽きてしまったような俳優だ。スタントマンのクリフと一緒にまた何かを掴もうとしている。
変わりゆく世界で自分たちの居場所を見つけられずにいるんだ。クェンティンはそんな彼らの、ハリウッドの外側から内側を覗きこんでいる視点に立って、あの1969年という時代を、米国史における最も重要な時代の一つというだけでなく、映画史上屈指の名作の数々に向かう道筋を作った時代として敬意を抱きつつ、非常にユニークな手法でアプローチしていると思う』
──彼のようにキャリアに不安を感じたことはありますか?
『僕には役者の友人が大勢いる。13歳のころから彼らと一緒に育ってきた。だからどんな苦労があるかも知っている。苦労だけでなく、突然大きな波のように押し寄せる不安感などもね。だからリックのこともすぐに彼がどんな経験をしてきたかわかったんだ。僕自身にもこれからも浮き沈みはあると思うよ。
昔から僕はこの仕事は長距離レースだと思ってやってきたし、一回のチャンスを手に入れるのがいかに難しいかもわかっている。与えられたチャンスに最善を尽くし、できるだけ最高の人たちと一緒に仕事しようとしてきた。映画は現代最高の芸術形式と考えているから、僕はそこに参加できていることを本当に光栄に思うよ』
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
2019年8月30日(金)より公開中
配給:ソニー・ピクチャーズ