1969年はまさに時代の転換期だったといえるし、いまに重なる部分もあるよね
──レオナルド(ディカプリオ)との関係をロバート・レッドフォードとポール・ニューマンの関係と比較されるそうですね
『小学一年生の時だったか、「明日に向って撃て!」を見てラストで泣いてしまったんだ。両親に見られたくなかったのを覚えているよ(笑)。そんな映画の主演コンビに例えられるなんて素晴らしいじゃないか。レオのことは心から尊敬している。めったに会えないが今回は二人のスケジュールが合って嬉しかった。この共演は貴重な宝ものだよ』
──あなたの演じるクリフはどんな人物でしょうか?
『レオの演じるリックは、常に満足感を得られず自分の人生が理不尽だと感じている男だけれど、僕が演じるクリフは自分をわきまえて、何でもその場で対処できると心穏やかに生きている。僕は二人は一人の人間の裏と表だと考えている』
──この映画のようにあなたがスタントマンとの絆を築いたことはありますか?
『今と当時では業界の状況が違うんだけど、ウマが合うスタントマンたちはいたよ。リックとクリフのパートナーシップは、今よりずっと強かった。だからスティーブ・マックィーンとバド・イーキンズや、バート・レイノルズとハル・ニーダムの関係について、みんなでよく話したんだ。(この映画に出るはずだった)バートからは生前に直接ハルとの関係について話を聞くことができた。彼らは一つのチームだったんだ』
──クリフがブルース・リーと闘うシーンがありますが、何かトレーニングをしましたか?
『ブルース・リーと闘うなんて全く想定外だった(笑)。年を取って以前より鈍くなったからトレーニングはたくさんしたよ。クェンティンはCGなどなしで、ワンテイクで撮影する監督だから、長いファイトシーンのためにトレーニングしないと駄目だったんだ』
──監督とのコンビは二度目ですね。
『彼の現場は本当に楽しい。映画やテレビの歴史、そして先人たちについて話すのが大好きなんだ。エフェクトに関しては昔ながらのやり方を守る人で、ズルは出来ないんだ。また彼の書く台詞にはリズムがあるんだ。コーエン兄弟のと同じで、途中で言葉を変えたりするとそれが狂ってしまうほど精密にできているんだ』
──舞台となった1969年のハリウッドにどんな魅力を感じますか?
メジャースタジオが低迷していて、「明日に向って撃て!」「イージーライダー」といった作品が新しい方向を示す時代だった。映画も国家も重要な転換期にあった時代じゃないかな。米国は混乱の時代だったけど、アーチストが自由でクールだった時代として、ロマンチックに振り返ることができる魅力があるよね。
今も僕らのビジネスは変化している。劇場でなくストリーミングで自宅で映画を見るようにね。多くの新たな才能が生まれる中で、映画のような共通体験はどうなるか、何が使い捨てられるのか。大きな問題だね。政治的にも、確かにこれは今の時代にも関係している映画かもしれないね』
──自分のキャリアの浮き沈みを考えることはありますか?
『僕らの仕事には賞味期限があることは僕もレオもわかっている。それを避けようとするのは無理だ。だから自分たちが過ごしてきた時間に感謝の気持ちが深くなるんだ。自分がやっていることに意義を見出している限り、それはまた別のものに変わっていくしね。アンソニー・ホプキンスやジーン・ハックマンといった素晴らしい俳優のキャリアを見ればわかるよ』
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
2019年8月30日(金)より公開中
配給:ソニー・ピクチャーズ