第24回釜山国際映画祭のガラ・プレゼンテーションに選出された今作の10月8日に行われたプレス用記者会見の模様を一部お届けする。
第76回ベネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門でワールド・プレミア上映された映画『キング』。
物語はウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ヘンリー四世」2部作や「ヘンリー五世」にインスパイアされたもの。英国王である父の死後、王位を継承したハルの物語で、自由気ままな王子が、宮廷の問題や戦争、混乱の時代を経験しながら、国王としてたくましく成長していく姿が描かれる。
ハルこと若き日のヘンリー5世をティモシー・シャラメが演じ、ヘンリーが信頼する友人のフォルスタッフをジョエル・エジャートン、ヘンリーと対立するフランスの王太子をロバート・パティンソン、ヘンリー4世をベン・メンデルソーン、フランスの王女キャサリンをリリー・ローズ・デップといった豪華キャストが集結したことでも話題となった。
8日の会見にはティモシー、ジョエル、そして監督のデヴィッド・ミショッド、製作会社プランBのデデ・ガードナー、ジェレミー・クライナーが登壇した。
ティモシーは「釜山国際映画祭という場に呼んで頂き心から感謝しています。僕は韓国映画の大ファンですし、2002年のFIFAワールドカップを見て以来ずっと韓国を訪れたいと思っていました。『キング』という素晴らしい映画で今回来ることができて嬉しいです」と笑顔を見せながら挨拶。
更にティモシーは
「今作は自分にとって大きなチャレンジでした。というのも、アメリカで生まれ育った僕がイングランドの王ヘンリーを演じるのはとても怖いことですから。でも、『ビューティフル・ボーイ』で一緒に仕事をしたデデからお話を頂いて、デヴィッド監督やジョエルと是非ご一緒したいと思ったんです。結果的にとても良い作品が完成したおかげで、ベネチア映画祭やイギリス、釜山、オーストラリアといった世界中を訪れることができました。僕ぐらいの年齢の役者は、本来ならまだそういうことに憧れている時期でもあると思います。僕にとって世界中を旅することは夢だったんです」とクールな表情で語ったあと、指でハートを作ってみせた。
ヘンリーを演じるにあたりティモシーは「イギリス英語のコーチが参考になる映画を教えてくれたので、撮影の2ヶ月前から準備することができました。また、王子が王になることや、人が危険に陥った時にどうやって切り抜けるかということを、デヴィッド監督のディレクションと共にブロックをひとつひとつ積み上げるように考えながら作り上げ、そして演じていきました。デヴィッド監督から終盤のバトルシーンについて“『スター・ウォーズ』のライトセーバーで戦うようなものではなく、君には泥んこになって格闘して欲しいんだ。そのほうがリアルだから”と言われたんです。撮影はとても大変でした(笑)」と撮影秘話を明かした。
デヴィッド監督は「ティミーは素晴らしい役者で、期待以上の芝居をしてくれました。今作の撮影が2年前だったら彼に出会えてなかったかもしれません。でも、『君の名前で僕を呼んで』を観たことで彼と出会えました。ティミーのように若い役者でソウルフルな人はとても貴重な存在なんですよ」と語った。
ジョエルは「ティミーは酷い男なんです(笑)」と冗談を言って会場の笑いを誘ったあと「今作の企画は2013年からあって脚本を書き始めていたんです。当時はハルを演じられる役者が見つからなかったので、その頃に撮影していたらうまくいかなかったと思います。ところが彼を見た瞬間にハルを演じられるのはティモシーしかいないと。彼が演じてくれたおかげでシェイクスピアの持つヘビーなムードを変えることができたと思います」と、力強く語ったジョエルの言葉に反応してティモシーが嬉しそうにジョエルに抱きつく場面も。
約50分ほどの会見だったが、記者の質問を真剣に聞きながらメモを取り、ひとつひとつ丁寧に答えるティモシーの姿が印象的だった。
ちなみにティモシーは会見の前日に海雲台にあるチキンが有名な店を訪れたそうで「今まで食べた中で最高のチキンでした」と満面の笑みでコメントしたり、会見が終わると自身の名前が書かれた紙を持って帰るなど終始チャーミングな姿を見せてマスコミを魅了していた。
この日の夜には4000人が詰めかけた屋外劇場のステージに登壇し、翌日も同場所にて多くのファンとの交流を楽しんだティモシー。いつか日本にも来てくれることを願わずにはいられない。
(取材・文・撮影:奥村百恵)
『キング』はアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて11月7日まで公開、本日よりNetflixにて独占配信中。