成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて38年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。
日本はいつも僕を大歓迎してくれて良い思い出ばかりだよ
アーノルド・シュワルツェネッガーに初めて会ったのは1984年の「ターミネーター」の時。当時35歳の元ボデイービルディング・チャンピオンはかなり強いオーストリア訛りや、場違いな筋肉の量を持ち前の愛嬌で補って、記者たちを魅了した(煙に巻いた)のである。
知り合いのドイツ人の女性記者が彼のことを何くれとなく世話をしていて、シュワちゃんも彼女を第2の母親のように慕っていたのが懐かしい。ちなみに彼女は彼がカリフォルニアの州知事に立候補した際、ハリウッド業界内のキャンペーンを大いに手伝っていた。
「ツインズ」(1988)では、自分の体の半分の大きさのダニー・デヴィートと双子を演じて、喜劇の才能も発揮して、シュワちゃんの独特のアクセントは夜のトーク番組で司会者たちがこぞって真似をしてはウケていた。
「ラスト・アクション・ヒーロー」(1993)の時はロスアンジェルスに集まった大勢の日本人メディアに囲まれて、たいそう満足そうにぷかぷかとトレードマークの葉巻を吸い、共演のキュートなオースティン・オブライアン(当時12歳)にはまるでパパのように優しく接していたのが印象に残っている。
さて最新の「ターミネーター:ニュー・フェイト」(2019)のインタビューには相変わらず、にきにきと楽しそうな表情を浮かべ、『おー、しばらく!』という、日本の政治家のような貫禄と鷹揚さを見せて現れた。紺の上着、薄いブルーのシャツ、おなじみの大きなバックルのベルトに青色の指輪、日焼けした顔、全て昔と変わっていない。『シュワちゃん、て日本で呼ばれていたの、よく覚えているよ。いやあ、日本ではいつも大歓迎されて良い思い出ばかりだ』とご機嫌で日本のことを褒めてくれた。
パスポートを忘れて来日して大騒ぎになったり、それなりにアクシデントも発生したのだが、今となっては全てが良い思い出ばかりになっているのも陽気でポジテイブなシュワちゃんならでは、である。
28年ぶりのリンダとの共演ではお互いに戦友同士のような感情が湧いてきた
『リンダ(ハミルトン)と28年ぶりの共演には感動したね。州知事の就任式に招待してサクラメントで会った時はあまり話ができなかったが、お互いに頑張っているねとハグして励ましあった。今回はアクション場面が多いばかりか複雑になっているし、リンダがどこまで体力的に動けるかがかなり気がかりだったが、相変わらず「やるとなったらとことんやる!」と豪語するだけあって、すごい気力とフィジカル・パワーを見せてくれた。さすが、元のままのサラ・コナーだったね。
お互いに戦友同士みたいな感情が湧いてきて、ここまで色々あったけれど、丈夫で健康で良かった良かったと励まし合ったりしての撮影現場だった。スペインでのロケから始めて、土地の気候とか時差とか色々と順応するのに苦労したがね。今回は今の女性向上の流れにのっとって、サラが全面的に大活躍し、二人の若い女性が彼女の後をついで前進するというストーリーがとびきりクールだと思った』
と新作でのリンダとの再会を喜ぶ。
『今も時々(シルヴェスター)スタローンと会っては、うまいものを食って、ワインを楽しみ、シガーを味わって昔の思い出話、現在の状況、シニアになっての健康やトラブルについて、また一つアクション映画を作ってみるか、ってな話をしている。一時はライバルでいがみ合った仲だったが、今はもう最高の友達だ。
政治の世界に戻る?絶対にあり得ないね。政治家は次の選挙のために次から次へと約束ばかりして実際にはほとんど何も出来ないままに、次のポジションに移って行く。創作意欲はまず満足するレベルに達しない。俳優として、製作者として働くほうがずっとやりがいがあると発見した』
と72歳のターミネーターは親指を立てて『やる気』を力強く見せてくれた。
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