第2回はパニックブームの一翼を担う傑作「パニック・イン・スタジアム」
2回目は1970年代の人気ジャンル“パニック映画”の超大作「パニック・イン・スタジアム」を紹介。謎の狙撃者とSWATの息詰まる攻防を描くサスペンス・パニックが、このたび初めて国内でブルーレイ化される!(文=編集部)
「スター・ウォーズ」などが出てくる前の1970年代のハリウッドを支えた人気映画ジャンルといえば、パニック映画を忘れることができない。大ヒットした「ポセイドン・アドベンチャー」を筆頭に、災害ものの「タワーリング・インフェルノ」、乗り物編「エアポート」シリーズ、動物もの「ジョーズ」などなど、ジャンルも多彩だが、CG大作などなかったこの時代、ハリウッドらしさといえば、とにかく“巨大”“大型”であることが70年代のステータスだったといえる。「ポセイドン…」の大型客船、「タワーリング…」の138階建て超高層ビルなどが観客の心をワクワクさせていた最中、「パニック・イン・スタジアム」は身近でありながら大規模なロサンゼルスのメモリアル・スタジアムという、意表をついた器を舞台にして、なんと10万人級の観客が命を狙われ逃げ惑うという設定でパニック映画世代の心を掴んだ。
PANIC MEMO 01
10万人がパニック!生身の人間が逃げ惑う!
大都市ロスのメモリアル・スタジアム。この日、地元フットボール・チームとボルチモアのチームが全米王座をかけて激突するスーパーボールを見るために、10万人もの観衆が集まってくる。だがその広大な競技場のどこかに高性能の自動ライフルを持った謎の男が侵入していた。大統領もやってくるというこのゲームで彼は誰を狙っているのか。ロス市警はこの男の情報を知り、事件を未然に防ごうとするのだが……
高所から謎の人物が無差別に撃つという設定を聞くと、まず1966年にテキサス大学で起きた無差別乱射事件を思い出す。この事件自体も本作より前に映画化され、日本では劇場未公開のまま本作の公開直後に「パニック・イン・テキサスタワー」の題名でテレビ放送されたが、「スタジアム」の方はこれを超拡大版にしたものという印象。そのクライマックスは10万人級の観客・選手が一斉に銃撃犯の魔手から逃げ惑う壮絶なパニックシーンで、小品の多かったラリー・ピアース監督にとって、CGなどなかったこの時期、一世一代ともいえる大掛かりな演出だったのではと想像する。
PANIC MEMO 02
オールスターすぎてパニック!超豪華なキャスト陣
またもう一つ忘れてならないパニック大作の魅力は『グランドホテル』形式のオールスター・キャスト映画ということだ。本作はその点でも素晴らしい。主人公の警部役に大型パニック映画に欠かせないチャールトン・ヘストンを配した時点で箔がついているが、さらにインディーズ映画界の名匠にして名優ジョン・カサヴェテスと名女優ジーナ・ローランズの夫妻、オスカー受賞のベテラン俳優マーティン・バルサムや、テレビ界からデヴィッド・ジャンセンとジャック・クラグマン、ピアース監督の前作「あの空に太陽が」の主演コンビ、ボー・ブリッジスとマリリン・ハセットといった新旧織り交ぜた実力派がいくつもの人間ドラマを展開し、結末への興味を倍加させる。
PANIC MEMO 03
同時期公開予定の競技場パニック映画があった!
本作が日本公開された1977年、夏にはもう一つ大型競技場を舞台にしたパニックアクション「ブラック・サンデー」が公開予定だったが、上映中止を求める脅迫にあって直前で劇場公開とりやめとなった。アラブ系テロリストとイスラエル諜報員の戦いを描くこの作品が政治的な内容を含んでいたためと思われるが、この映画が正式に日本上映されなかったため、競技場もののパニック編では「パニック・イン・スタジアム」が代表的な一作として長く日本人の記憶に残ることになったことも追記しておこう。
STORY
地元のプロ・フットボール・チームが王座をかけて、強敵ボルチモアのチームと対決するロサンゼルスのメモリアル・コロシアム。その巨大な観客席は大観衆で埋め尽くされ、熱狂した歓声と興奮に包まれていた。しかし、テレビ局が用意した飛行船のカメラが、ライフルを持った男を発見した!警備を指揮するロス市警のホリー警部は、直ちにSWATの出動を要請するが……
「パニック・イン・スタジアム」 Two-Minute Warning
2019年12月11日(水)発売
ブルーレイ4,800円+税、DVD=3,800円+税
特典=予告編
発売・販売元:キングレコード
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