DAY2:舞台挨拶@TOHOシネマズ六本木ヒルズ
MC の呼びかけでポン監督、ソン・ガンホ氏が登壇すると、映画を観終わったばかりで興奮冷めやらぬ客席から大きな拍手と歓声が。4 度目のタッグとなる息の合った2人の舞台挨拶がスタートした。
まずポン・ジュノ監督が「本日はありがとうございます。今日から先行公開ということは、日本で初めて本作をご覧になったということですよね。まだ観ていない人がたくさんいますので、これから外に出たら映画の後半については絶対に話さないでくださいね(笑)。お願いします」とご挨拶。
続けて、ソン・ガンホ氏が「 ご覧になった皆さんならお分かりだと思いますが、息子役を演じたチェ・ウシクは私よりも少しだけ多く出演しているので、彼は自分が主人公だと言い張っているんですよ。でも主人公は私です(笑)」と、会場を沸かせた。
本作の設定の発想はどこからきたのですか?という質問に監督は「実際、裕福な人々と貧しい人々は分かれて生活していますが、この映画では両者をお互いの匂いが嗅げるほど近づけてみたいという意図がありました。 日本でも大学生は家庭教師のアルバイトをしますよね?実は私も大学生の頃、裕福な中学生の家庭教師をしており、家の内部を意図せずして覗き見る機会を得たのです。そのアルバイトは私の当時の彼女の紹介で始めました。 私も別の友人を紹介しようとしたのですが、その前にクビになったのでそれは叶いませんでしたが…。シナリオを書く時には、当時の気分を思い出しながら書きました」と明かした。
映画のオファーを受けた経緯について尋ねられたガンホは、「監督から4 年くらい前にイメージの説明がありました。酔っ払いが立ちションをして、それが窓を伝って壁に下りて来る、そんな半地下に住む家族の話だと。2回目には、貧しい家族がお金持ちの家族の中に入っていくという話を聞かされました。私は当然社長の役だと思っていたのですが、まさか半地下にいる役だとは夢にも思いませんでした(笑)」
お互いの印象について、ガンホは「監督とはもう 20 年一緒に仕事をしています。作家として監督として、社会に向ける温かく時に鋭いまなざしが、よ り深く広くなっています。俳優としてそれを見守ることができるのは感動的なこと。これからも監督の世界を見せてほしい」と語った。一方、監督は「今回クライマックスは非常に悩みました。ガンホ先輩のクローズアップなのですが、主人公が起こす突発的な行動は、一部の観客にとってはおかしく感じられるのでは、説得ができないのでは、論争を巻き起こすのではと。ところがとりあえず撮影してモニターを見たら、その悩みは払拭されました。まさにその人物そのもの、彼のまなざしと表情、醸し出されるものを見て、私のそれまでの悩みは無意味なものだったと思いました。最近、あるアメリカの評論家がその場面を“今年のクローズアップ”だと評価しており、とても嬉しかったです。偉大な俳優だからこそ、成し遂げられる瞬間だと思いました」と語り、互いに信頼し合っている様子をうかがわせた。
アカデミー賞に対する質問に監督は「こればかりはどうなるかわかりません。予測は難しいです。トロント映画祭で是枝裕和監督にお会いしました。監督はパルムドール受賞後にオスカーにノミネートされた方。“これから忙しくなるけど頑張ってね”と言ってくださり、とても嬉しかったです。万が一、本作がオスカーにノミネートされたら、また映画をみて分析してくださいね」と語った。
ここで、 監督の大ファンだという俳優の吉沢亮さんがサプライズゲストとして登場!会場はさらに大きな歓声と拍手の渦に包まれた。
吉沢は以前、自身の好きな映画をモチーフにしたカレンダーを作った際、「母なる証明」を使ったことを明かし、「昔から作品を拝見しているのでお会いできて嬉しい。本作はここ数年観た中で一番の作品。圧倒的なエンタメ感がすごい。一つの映画の中に笑い、涙、ホラー、サスペンスなど、様々な要素が入っていて、それが一切邪魔をせず完璧に調和・融合していました。絶対観るべき映画だと思います。普段映画感に行かない方にこそ、観てほしい」と大絶賛。
さらに吉沢が、大雨のシーンで娘が家の便器に座ってタバコを吸うところが好きだと明かすと、ガンホは「私は過去の出演作品でもなぜか水に縁があります。皆さん、おわかりと思いますが監督は水が与える印象を大事にしています。悲しみ、哀れみ、人間として感じ取ることができる偉大な感情を、水を通して表現しています」と語った。
最後に、ガンホが「この映画は、誰かが誰かを恨んだり、憎んだり、対立する映画ではありません。韓国に限らず、どこの国の人にも感じることができる、どう生きたら良いのかと問いかけてくる映画です。 この映画を観て幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいです」とコメント、 監督は「日本で一番早く本作を観てくれた大切な皆さん、ありがとうございます。この映画が皆さんの頭と胸に入り込み、永遠に抜き取ることができない“寄生虫”になったら嬉しいです」と結んだ。