12月27日より東京と大阪で先行公開された「パラサイト 半地下の家族」(全国公開は2020年1月10日)のポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホが来日。12月26日に行なわれた記者会見と翌12月27日の舞台挨拶の様子をお届けする。

ポン・ジュノ×ソン・ガンホ「グエムル」以来13年ぶりに来日!

ゴールデングローブ賞3部門ノミネートを筆頭に、オスカー前哨戦各賞で作品賞はじめ怒涛の受賞、アカデミー賞受賞も有力視されている「パラサイト 半地下の家族」。この度、本作の主演ソン・ガンホと、ポン・ジュノ監督が『グエムル 漢江の怪物』以来13年ぶりに二人揃って来日。12月26日に記者会見、翌27日にはTOHOシネマズ六本木ヒルズにて舞台挨拶を実施した。

本作は、全員失業中の貧しい一家とIT企業を経営する裕福な社長一家という相反する2つの家族の出会いから想像を遥かに超える展開へと加速していくというストーリー。既に韓国動員1,000万人突破、フランス動員160万人突破ほか、各国で動員記録を塗り替える爆発的な盛り上がりをみせている。その後もオスカー前哨戦ともいわれるトロントや、ニューヨークなど各国の映画祭で絶賛&受賞を重ね、第92回アカデミー賞での受賞も有力視されている。

DAY1:来日記者会見@都内ホテル

画像: 左からポン・ジュノ監督、主演のソン・ガンホ(Photo by Tsukasa Kubota)

左からポン・ジュノ監督、主演のソン・ガンホ(Photo by Tsukasa Kubota)

12月26日、都内ホテルで行なわれた記者会見。集まったマスコミを前に、まず監督が「ソン・ガンホ先輩とは2003年の『殺人の追憶』、2006年の『グエムル 漢江の怪物』以来13年ぶりの来日です。とても意義深い時間になったと思っています」と挨拶。続いてソン・ガンホ氏が「監督とご一緒するのは4作目。私は他にもいろいろ出演していますが、どうも皆さんはポン監督の作品でないと愛してくれないようですね(笑)。ついに今回来日できて、私も皆さんに愛される準備ができました!」と会場を和ませた。

本作が世界中で熱狂的に受け入れられている現状について、監督は「まったく予想もしていませんでした。素敵な俳優陣とともに淡々と作っていた作品が、世界で予想だにしない反響を受けることになりました。日本でもそのような反応が起きてくれたら嬉しい。今回はガンホ先輩と来日しましたが、素晴らしい俳優の皆さんの手柄だと思っています」と最高のアンサンブルを見せたキャストに賛辞を贈った。

画像: ポン・ジュノ監督(Photo by Tsukasa Kubota)

ポン・ジュノ監督(Photo by Tsukasa Kubota)

一方のガンホは「この物語は特定の国に限らず、私たちが生きる地球上全てで起こりうる物語です。それを監督が温かい視線で描いたことが、多くの共感を得られたのだと思う。監督は『俳優の手柄』だと言いましたが、私は監督の20年の努力と彼だけが持っている野心が実を結んだ結果だ」と語った。

画像: 主演のソン・ガンホ(Photo by Tsukasa Kubota)

主演のソン・ガンホ(Photo by Tsukasa Kubota)

続いて、記者からの質疑応答タイムへ。
本作が国境を越えて受け入れられる理由という質問に監督は「是枝裕和監督の『万引き家族』やジョーダン・ピール監督の『アス』など、貧困や格差という本作と共通したテーマの作品は多く作られています。ただ、海外では『この映画では貧富と善悪の区別がない』という評判をよく耳にしました。明確な悪党や善人が出てこないからこそ、展開の予測が難しかったようです。悪党はいないにも関わらず、終盤にある悲劇が起こります。それがまさに本作が描こうとしていることなのです。善人悪人に分かれていないこの映画が持つレイヤーが、共感を呼んでいるのではないでしょうか」と回答。ガンホは「貧しい人と裕福な人の葛藤を描くだけではなく、私たちがどう生きるべきかを監督は語ろうとしています。今の時代を生きる全ての人が同じように考えさせられる点が共感を呼んだのでは」と分析した。

画像: 4度目のタッグとなる二人は息ピッタリ!(Photo by Tsukasa Kubota)

4度目のタッグとなる二人は息ピッタリ!(Photo by Tsukasa Kubota)

いつもシナリオは当て書きなのか?との問いに監督は「『グエムル』では、家族を演じた4人の俳優に事前に話してシナリオを書きました。『母なる証明』は最初からキム・へジンを想定して書いています。今回は、ガンホ先輩と息子役のチェ・ウシクさんの2人には事前に話して書きました。俳優のしぐさや表情を想像して書くと、人物を描くのにとても役立つのです。ガンホ先輩に話した時は2つの家族が出てくる変な映画だとシンプルに説明しました。ウシクさんには『これから太る予定はないですよね?痩せたままの体形でいてください』とお願いしました(笑)」

一方、ポン監督の作品であれば必ず出演するか?と問われたガンホは、「監督とは約20年の付き合いで、ファンとして同志として同僚としてずっと仕事をしてきました。初出
演は『殺人の追憶』ですが、デビュー作『ほえる犬は噛まない』も見ていました。非凡で独特、すばらしい芸術性を持 っている人だと思っています。新しい監督の世界を見たい、深まる監督の野心を見たいと思っていましたが今は違います。雨が降ったり、半地下に連れて行かれたりしたら、おそらく考え直すでしょう」と明かすと、すかさず監督が「来年渡そうと思っているシナリオのタイトルは『梅雨時の男』です(笑)」と合いの手を入れ、会場の笑いを誘った。

画像: ガンホに対しちょっぴりSっ気をみせるお茶目な監督(Photo by Tsukasa Kubota)

ガンホに対しちょっぴりSっ気をみせるお茶目な監督(Photo by Tsukasa Kubota)

画像: 監督の絶妙な合いの手に大爆笑するガンホ先輩(Photo by Tsukasa Kubota)

監督の絶妙な合いの手に大爆笑するガンホ先輩(Photo by Tsukasa Kubota)

最後に監督が日本のファンに向け、「タイトル通り、不滅の寄生虫のように観客の体、頭、胸に留まり、永遠に寄生する映画になりますように」と日本のファンに向けたメッセージを告げ、会見は幕を閉じた。

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