『M/OTHER』や『ライオンは今夜死ぬ』など国内外で高い評価を受けている諏訪敦彦監督の最新作『風の電話』。
今作で主人公の高校生ハルを演じたモトーラ世理奈のインタビューをお届けする。
画像: 『風の電話』
モトーラ世理奈インタビュー

岩手県、大槌町に存在する〈風の電話〉。電話線の繋がっていないその電話は、「天国に繋がる電話」として人々に広まり、今も多くの人の来訪を受け入れている。
今作は、この電話をモチーフにした初めての映像作品。
『M/OTHER』や『不完全な二人』、ジャン= ピエール・レオーが主演を務めた『ライオンは今夜死ぬ』などを手掛けた諏訪敦彦監督がメガホンを執り、主人公のハルを注目の女優モトーラ世理奈、共演には西島秀俊、西田敏行、三浦友和といった日本を代表する名優たちが集結している。
諏訪監督ならではの即興芝居という演出方法に初挑戦したモトーラ世理奈が、今作について語ってくれた。

ハルとして生きられなくなるのは悲しかった

ーー諏訪監督と言えば即興芝居を撮っていかれるスタイルで有名ですが、そんな諏訪組に初参加されてみていかがでしたか?

「今作のオーディションを受けた時に初めて即興芝居に挑戦したのですが、しっかりと相手を感じながらお芝居ができたような気がして、なんというか……凄く自分に合ってる感じがしたんです。ハル役に決まって撮影がスタートすると、今度は対人間だけじゃなく場所や匂い、温度など色んなことを感じながらお芝居することができて、それもハルを演じる上で凄く良かったというか。本当に即興芝居が自分に合っているんだなと実感しながら現場にいたのを覚えています」

ーー他の作品でも即興芝居に挑戦したいというお気持ちになったり?

「なりました。でも、もしかしたら諏訪監督の現場だから良かったのかもしれません」

画像1: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

ーーハルを演じるにあたり事前に準備したことがあれば教えて頂けますか。

「東日本大震災時の大槌町の映像を見せて頂いたのですが、それはハルを演じるための準備とかではなくて私自身がこの作品と関わるからには見ておきたいと思ったからなので、特にハルを演じるために準備したことというのはなかったです。ハルと同じような境遇の女の子も実際に沢山いますが、そういった方々を意識してというよりは“ハルになろう”という気持ちのほうが強かったというか」

ーー“ハルになれた”と一番最初に思えたのはどんな時でしたか?

「震災以降、ハルが8年間伯母と一緒に住んでいる広島の家があるんですけど、その家で撮影をしていくうちに、なんとなくハルというものが自分の中にできていったのを覚えています」

ーーハルが共に旅をする森尾を演じた西島さんとはどのようにコミュニケーションを取ってらっしゃいましたか?

「西島さんとは世間話も作品に関する話もほとんどしてなかったように思います。カメラが回っている時にハルとして森尾と会話していたという記憶しかないというか。でも、ひとつだけ凄く印象的だったのが、物語の終盤で森尾がハルに“大丈夫だよ”と言うシーンがあって、それが西島さんのクランクアップのシーンだったんですけど、ご自身の撮影が終わったあとに西島さんが“大丈夫”とご自身の言葉で私に言ってくださったんです。それは凄く響きましたし、“このまま風の電話に行ける”と思えたのでありがたかったです」

画像1: ハルとして生きられなくなるのは悲しかった

ーー個人的に森尾とハルがクルド人のコミュニティに入っていって話すシーンがドキュメンタリーを見ているようで凄くリアリティがあって引き込まれました。

「あのシーンはクルド人の方々がご自身のことを話しているので、ドキュメンタリーに近いと思います。1時間ずっとカメラを回しっぱなしで撮っていたんですよ」

ーー1時間も撮っていたのですね! モトーラさんにとってハルを演じた経験というのはどういうものになりましたか?

「ハルを演じたことは私の中で凄く大きなこととしてずっと残っていくと思います。クランクアップした瞬間に“もうハルとして生きられなくなるんだな”と思ったら凄く悲しくなってしまったんです。いまは撮影から何ヶ月も経って完全にハルではないんですけど、でも改めて公開日が迫るにつれて“ハルになれて良かったな”という思いがこみ上げてきます」

画像2: ハルとして生きられなくなるのは悲しかった

Photo by Tsukasa Kubota

ーーここからはSCREEN ONLINE読者のためにオススメの映画をご紹介頂きたいのですが、最近ご覧になって面白かった洋画を教えて頂けますか。

「ずっと昔から観たいと思いながら先延ばしにいていた『フォレスト・ガンプ/一期一会』をつい2ヶ月ほど前にやっと観たんです(笑)。もの凄く良い映画で感動しました。映画館では『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を観ました。実はスター・ウォーズシリーズはいまだに旧三部作も新三部作も観たことがなくて、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から観初めたんです(笑)」

ーーいきなりそこからご覧になったのですね(笑)。

「はい(笑)。最初から観たいと思いつつも…なかなか(笑)。でもせっかくだからスクリーンで観たいと思って劇場に行きました。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は途中まで登場人物の関係性がよくわからなかったんですけど、最後は凄く楽しめましたし『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』も面白かったです」

ーー次回お会いしたときには全エピソード鑑賞後の感想もお聞きしたいと思います(笑)。ちなみに一番好きなキャラクターは?

「チューバッカが好きです! 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でもハラハラするシーンがありましたよね。チューバッカの活躍をもっと見たいので、近いうちに全エピソード制覇したいと思います」

(インタビュアー・文/奥村百恵)

画像3: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

【ストーリー】
17歳の高校生ハル(モトーラ世理奈)は、東日本大震災で家族を失い、広島に住む伯母の広子(渡辺真起子)の家に身を寄せている。心に深い傷を抱えながらも広子のおかげで日常を過ごすことができたハルだったが、ある日、学校から帰ると広子が部屋で倒れていた。自分の周りの人が全ていなくなる不安に駆られたハルは、あの日以来、一度も帰っていない故郷の大槌町へ向かう。道中で福島の元原発作業員の森尾(西島秀俊)と出逢い共に旅をするが…。

『風の電話』
1月24日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
監督:諏訪敦彦
出演:モトーラ世理奈、西島秀俊、西田敏行、三浦友和
配給:ブロードメディア・スタジオ
©2020映画「風の電話」製作委員会

画像: 映画「風の電話」予告 youtu.be

映画「風の電話」予告

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