全米で話題を呼んでいる感動作『黒い司法 0%からの奇跡』が2020年2月28日(金)より公開。本作の原作者であり主人公である“全米の最注目弁護士”ブライアン・スティーブンソンについて、原作翻訳者の宮﨑真紀氏に解説してもらった。
画像: 『黒い司法 0%からの奇跡』

『黒い司法 0%からの奇跡』

映画と著書の原題『Just mercy』に込められた気持ち

本作『黒い司法 0%からの奇跡』は、冤罪の死刑囚たちのために闘う弁護士が起こした奇跡の実話を映画化したもの。物語の舞台は、黒人への差別が根強く残る1980年代アラバマ州、犯してもいない罪で死刑宣告された黒人の被告人ウォルターを助けるため、新人弁護士ブライアンは無罪を勝ち取るべく立ち上がる。

しかし、仕組まれた証言、白人の陪審員たち、証人や弁護士たちへの脅迫など、数々の差別と不正がブライアンの前に立ちはだかる。果たしてブライアンは、最後の希望となり、彼らを救うことができるのか―!? 可能性0%からの奇跡の逆転劇に挑む!

画像: 『黒い司法 0%からの奇跡』の出演者・監督に囲まれた弁護士ブライアン・スティーブンソン(中央左)

『黒い司法 0%からの奇跡』の出演者・監督に囲まれた弁護士ブライアン・スティーブンソン(中央左)

主演を務めるのは、「クリード」シリーズや『ブラックパンサー』などで知られるマイケル・B・ジョーダン。絶望の淵に立つ人々に寄り添いながら、不利な司法システムの中で闘うブライアンを熱演。

共演には、不当な判決を受ける死刑囚ウォルターをオスカー俳優ジェイミー・フォックス、ブライアンと共に黒人死刑囚を助けるための法律事務所で働く女性エバをオスカー女優ブリー・ラーソンが演じる。そして監督は、世界中の映画祭で絶賛された『ショート・ターム』で注目を集めたデスティン・ダニエル・クレットンが務める。

日本では知る人ぞ知る存在である本作の主人公ブライアン・スティーブンソンとはいったいどんな人物なのか? 原作である「黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う」ブライアン・スティーブンソン著(亜紀書房刊)の翻訳を手掛けた翻訳家・宮﨑真紀氏に、そのバックグラウンドなどを解説してもらった。

◆ブライアン・スティーブンソンとは?

どういう人物か、それは「全米で最も注目される人権弁護士のひとり」だろう。1989年、アラバマ州モンゴメリーで、人種や性別、障害などを根拠に、不当に逮捕・収監された人々に法的支援を提供する非営利団体「イコール・ジャスティス・イニシアチブ(EJI)」を、友人のエバ・アンスリー(劇中でブリー・ラーソンが演じる)とともに何もないところから立ち上げた。以来、みずから事務局長を務め、数々の司法の不正と地道に闘い続けている。

1959年にデラウェア州南部の貧しい黒人集落で生まれたブライアンは、幼い頃から人種差別を身をもって経験し、16歳のときには祖父を未成年の窃盗犯に殺害されるという事件に直面した。黒人の老人の命の軽さ、理不尽な理由で犯罪に走る少年たちを目の当たりにしたことが、ブライアンを法曹の道に突き進ませた。ハーバード大学ロースクール時代、司法修習生として死刑囚の支援をおこない、それがのちのEJI設立につながった。

◆ブライアン、そしてEJIの活動

これまで、ブライアンが救った冤罪の死刑囚は100人以上にのぼる。黒人に対する差別的な死刑判決が多く、公選弁護人制度もほとんど機能していないアラバマ州において、司法の平等をめざすブライアンとEJIの存在がどれだけ大きいか、想像に難くない。

いまやブライアンやEJIの活動範囲は全米に広がり、冤罪の救済のみならず、刑務所内での虐待行為の禁止や、精神疾患や知的障害をもつ囚人たちの待遇改善など、精力的に活動をおこなっている。2018年には、モンゴメリーで、リンチ殺害された南部黒人たちの慰霊施設や、黒人差別の歴史を解説する博物館「レガシー・ミュージアム」も開設した。現在ニューヨーク大学ロースクールで法学教授も務めている。

◆ブライアンが伝えたいこと

『黒い司法 0%からの奇跡』から伝わってくるのは、何よりブライアンの不屈の精神だ。彼は、弱い立場の人を救うため不正をただし、最後までけっしてあきらめない。その背後にあるのが、「たとえ失敗したとしても、それがその人のすべてではない」という思いだ。弱者は傷を負いやすい。彼は自分も傷ついた存在であり、いつ鉄格子の向こう側に放り込まれていたとしても不思議ではないと自覚している。だから、誰もがほんの少しでいいから赦す心を持てば、世界はもっとよくなる──映画と著書の原題『Just mercy』には、そんな著者の気持ちがこめられているのではないでしょうか?

本作で主に描かれるのはブライアンがその活動の初期に手掛けた、作中ではジェイミー・フォックスが演じる死刑囚ウォルター(通称ジョニーD)の冤罪事件。この事件が1988年の、まだ30年ほど前のつい最近の事実だということに驚く感想が試写でも多く寄せられている。現在進行形で司法の闇と対峙するブライアン・スティーブンソンについてもっと深く知るためにも「黒い司法 0%からの奇跡」は必見の作品だ。

宮﨑 真紀(みやざき まき)
英米文学・スペイン語文学翻訳家。東京外国語大学外国語学部スペイン語学科卒。おもな訳書にブライアン・スティーヴンソン『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』(亜紀書房)、メアリー・ビアード『舌を抜かれる女たち』(晶文社)、ビクトル・デル・アルボル『終焉の日』(東京創元社)、マリア・V・スナイダー『イレーナ、永遠の地』(ハーパーコリンズ・ジャパン)など多数。

黒い司法 0%からの奇跡
2020年2月28日(金)ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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