17歳の黒人の高校生ルースの知られざる内面に迫り、人間の謎めいた本質とアメリカの現実をえぐるサスペンスフルなヒューマンドラマ『ルース・エドガー』(原題:LUCE)が、2020年5月15日(金)より全国公開。このたび予告編が解禁された。
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『ルース・エドガー』予告編

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画像: “完璧な優等生”は怪物か? 全米絶賛のサスペンスフル映画の予告公開

いったい人間の“価値”とは何によって決定されるのか

バージニア州アーリントンの高校生ルース・エドガーは文武両道に秀で、スピーチやユーモアのセンスにも長けた17歳の少年だ。アフリカの戦火の国で生まれた過酷なハンデを克服し、さまざまなルーツを持つ生徒たちの誰からも慕われている彼は、自由の国アメリカで希望を象徴する存在へと成長した。そんなルースがある課題のレポートをきっかけに、同じアフリカ系の女性教師ウィルソンと対立し、彼の順風満帆の日常が大きく揺らぎ出す。

ルースが危険な過激思想に染まっているのではというウィルソンの疑惑は、ルースの養父母である白人夫婦エイミーとピーターの胸にも疑念を生じさせていく。はたしてルースは何者なのか。本当に“完璧な優等生”なのか、それとも世間を欺く“恐ろしい怪物”なのだろうか……。

本作は深刻な矛盾をはらんだアメリカ社会の現状をリアルにえぐり出し、謎のベールに覆われた人間という存在の本質に鋭く切り込んだヒューマン・ドラマ。模範的な若者として学校や地域の誰からも愛され、称賛される少年の“知られざる真実”をめぐって展開するサスペンスフルなストーリーは、観る者の好奇心をかき立てるにとどまらず、私たちの内なる潜在意識を揺さぶり、先入観を根底から覆していく。

2019年のサンダンス映画祭でプレミア上映されるや批評家の絶賛を博し、全米の賞レースで20を超える賞のノミネートを達成。その年の最も優れた独立系作品を選定するインディペンデント・スピリット賞でも監督賞、主演男優賞、助演女優賞の主要3部門に名を連ねた。

予告の冒頭では、大勢の人々の前で演説するルースの姿が捉えられている。アフリカのエリトリア出身のルースは、アメリカに渡り、白人の養父母(ナオミ・ワッツ&ティム・ロス)に育てられ、“ルース・エドガー”という名前に改名した。優秀な高校生に成長したルースの生活は順風満帆だった。しかし、ルースのロッカーから違法で危険な花火が見つかったこと、提出したレポートに「意見の対立は銃で解決する」という表記があったことから、ルースと同じアフリカ系の女性教師ウィルソンに目を付けられることに。ルースがテロリストになり得る存在だというウィルソンの疑惑は、ルースの養父母にも疑念を生じさせていく。

日本版のポスタービジュアルでは、そんなルースが大勢の観客に向けて演説する後ろ姿が、本国ビジュアルに付け加えられている。顔の左半分は隠された意味深なルースの表情と壇上に立つルースの後ろ姿。どちらもルースの顔ははっきりとは提示されない。まさにルースという謎めいたキャラクターの表裏、二面性が伝わるビジュアルとなっている。

画像: いったい人間の“価値”とは何によって決定されるのか

『ルース・エドガー』の最もユニークな特徴は、全編出ずっぱりの主人公ルースが真意不明のミステリアスな存在であることだ。成績優秀なスポーツマンで、誰とでも分け隔てなく接するオープンな人柄の持ち主。アフリカ系の移民であり、白人の養父母の愛に育まれてトラウマを克服したルースは、若きバラク・オバマの再来とも称され、まさに現代のアメリカン・ドリームそのものだ。

しかしJ・C・リーの戯曲「Luce」の映画化である本作は、観る者に強烈な問題提起を突きつけてくる。ルースの“完璧な優等生”というイメージは、彼に期待する両親や校長らが一方的に押しつけたものではないのか。それとは真逆の“恐ろしい怪物”という見方も、極端に偏った思い込みなのではないか。

人種、容姿、性別、階級、学歴、思想、信仰……いったい人間の“価値”とは、何によって決定されるのか。アメリカという国の歴史や政治をも取り込み、その理想と現実をあぶり出した本作の懐の深さに、誰もが感嘆せずにいられないだろう。

主人公ルース役は、終末スリラー『イット・カムズ・アット・ナイト』における迫真の演技で注目されたケルヴィン・ハリソン・Jr.。同作品のトレイ・エドワード・シュルツ監督と再び組んだA24配給『WAVES/ウェイブス』でも主演を務め、今まさしくブレイク中の新星が、まだアイデンティティが確立されていない17歳の少年の葛藤を生々しく体現する。

ケルヴィン・ハリソン・Jr.を囲む主要キャストには、輝かしい受賞歴を誇る実力派が配された。プライベートに問題を抱えながら、ルースと激しく敵対する教師ウィルソンを演じるのは、『ドリーム』『シェイプ・オブ・ウォーター』のオクタヴィア・スペンサー。また、ナオミ・ワッツとティム・ロスが愛する息子への思いがけない疑念に動揺するリベラルな夫婦に扮し、観客の視点を担う役どころに説得力を与えている。

オバマ大統領の時代に上演されたJ・C・リーの戯曲に感銘を受け、監督・製作・共同脚本を務めたのは『クローバーフィールド・パラドックス』のジュリアス・オナー。

自らもナイジェリア出身のアフリカ系移民であり、物語の舞台となったバージニア州アーリントンで育った新鋭監督が、洗練されたシャープな語り口、繊細にして多面的な心理描写を披露。その絶え間なくスリリングで心揺さぶる映像世界は、観る者を白熱のクライマックス、深い余韻を残すエンディングへと誘い、私たちそれぞれの想像力によって変わる“真実”を浮かび上がらせるのだ。

ルース・エドガー
2020年5月15日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国公開
配給:キノフィルムズ/東京テアトル
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