今日の悲しみを未来の幸福へと変える術があることを教えてくれる物語
本作は、長編初監督作『善き人のためのソナタ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督が、現代美術界の巨匠であり、ときにオークションで数十億円の価格がつくアーティスト、ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに祖国ドイツの“歴史の闇”と“芸術の光”に迫った最新作。
物語の舞台はナチ政権下のドイツ。少年クルトは芸術を愛する叔母(ザスキア・ローゼンダール)の影響から、絵画に親しむ日々を送っていた。ところが、もともと繊細な感情の持ち主だった叔母は突如日常の精神のバランスを崩し、強制入院の果て、国家によって行われていた精神を患う患者への“安楽死政策”によって命を奪われてしまう。
それから数年後、ついに終戦を迎え、成長したクルト(トム・シリング)は東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会った、亡き叔母の面影を持つ女性・エリー(パウラ・ベーア)と恋におちる。だが、その出逢いには、悲劇的な宿命が秘められていることを、二人は知る由もなかった。婦人科の名医で元ナチ高官である彼女の父親(セバスチャン・コッホ)こそが叔母を死へと追い込んだ張本人だったのだ…。
このたび解禁された本ポスタービジュアルは「目をそらさない。その信念が、真実を描き出す」というキャッチコピーとともに自分が信じる<絵画の可能性>から目を逸らさず、そして挑戦し続けるクルトが、その強い意志を体現するかのように、真剣な眼差しと共に、真っ白なカンバスへとまっすぐに正面から向き合うもの。
なくなってからも自分を静かに導き続ける叔母や、美術学校で出会った善き理解者の妻・エリーの笑顔、そして、自身の運命も狂わすことになるエリーの父の姿も切り取られ、それぞれの複雑な人生や、そこに生きる彼らの人生の瞬間を映し出したものとなっている。
クルトの苦悩と葛藤は、信じるものに向き合い、命をもかけることで、希望と喜びへと昇華していく。今日の悲しみを、未来の幸福へと変える術があることを、美しい絵画と共に見せてくれる感動の物語だ。
ある画家の数奇な運命
2020年秋・TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ・木下グループ
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