ジョン・カサヴェテスは「インディペンデント映画の父」と称され、ジャン=リュック・ゴダールやマーティン・スコセッシ、ヴィム・ヴェンダース、ジム・ジャームッシュといった世界の巨匠たちから敬愛された唯一無二の映画監督。
ハリウッドの商業主義に対抗し、公私ともに最良のパートナーである女優ジーナ・ローランズや信頼できる仲間たちと「自分の撮りたいものを撮る」という信念のもと、自身の俳優活動で得た収入を注ぎ込んで映画を製作し、インディペンテント映画の可能性を知らしめた。
さらに、 マンブルコア界のミューズと言われ 、 現在公開中 の 『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』 を監督したグレタ・ガーウィグや ヤン・イクチュン、濱口竜介など目覚ましい活躍をする世界中の若手監督たちにも絶大なる影響を与えている。
今回の日本最終上映では1989 年に 59 歳で逝去したカサヴェテスが世に残した監督作品 11 本の中から代表作 5 本を一挙に上映。
マンハッタンで暮らす若者たちのありのままの姿をシナリオなしの即興演出で作り上げ、 世界を驚かせた監督デビュー作『アメリカの影』、中流アメリカ人夫婦の破綻した関係が崩壊へと至るまでの 36 時間を描き、 ヴェネツィア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞した『フェイシズ』、壊れかけた家庭を繋ぎとめようとする夫婦愛を描き、 アカデミー賞主演女優賞、監督賞にノミネートしたカサヴェテスの代表作の一つである『こわれゆく女』、フィルム・ノワールの雰囲気が漂う異色のサスペンス『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』、そして、有名女優の舞台前の極限の緊張を描き、ジーナ・ローランズがベルリン国際映画祭主演女優賞を受賞した『オープニング・ナイト』の珠玉の名作をラインナップ。
2012年の特集上映では、 5 週間のロングラン上映で週を重ねるごとに口コミが広がり、 映画ファンだけでなく 10 代~ 20 代のファッションやカルチャー好きな若い女性やカ ップルなどもこぞって来場。最終日では満席・立ち見の上映となった。
また今は閉館してしまった吉祥寺バウスシアターでのアンコール上映や俳優の村上淳や渡辺真起子などをゲストに呼んだイベントも急きょ開催。そして脚本家で俳優の宮藤官九郎が連載中の週刊文春にて『こわれゆく女』を紹介し話題となった。
普遍的な「愛」をテーマに、人間の内面に潜む「孤独」や「狂気」をすくいあげ、人間の真の姿を追求し続けたカサヴェテス。 実験的な演出によって生み出される俳優たちのありのままの姿は、台詞に出さずともその心の痛みが聞こえるほどに生々しく、観る者の感情を大きく揺さぶる。
「他の人がおかしいと思うような人に心を寄せていた」と生前語った通り、 カサヴェテス の 作品に通じるのは、社会のはみ出し者のような不器用な人々を、あ たたかく、そして深く見つめる眼差しだ。孤高の映画作家のスピリットは、今なお鮮烈な衝撃をもって受け入れられるだろう。
本特集で上映する5作品は日本国内での上映権が終了するため、スクリーンでの上映は今回が最後のチャンスとなる。上映劇場とスケジュールは以下の通り。
【上映劇場とスケジュール】
アップリンク渋谷:8 月 14 日(金)~8 月 27 日(木)
アップリンク吉祥寺:8 月 28 日(金)~ 9 月 13 日 (日)
アップリンク京都:8 月 28 日(金)~ 9 月 13 日(日)
「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ」日本最終上映
2020年8/14(金)よりアップリンク渋谷、8/28(金)よりアップリンク吉祥寺・アップリンク京都にて開催
配給:ザジフィルムズ
©1974 Faces International Films,Inc.
©1977 Faces Distribution Corporation