“核時代最後のスパイ”は私たちの隣に住んでいるような80代の老女だった
世界がミレニアムに浮かれていた2000 年、英国では驚愕のニュースが国内を駆け抜けた。ロシアのKGB に核開発の機密を漏洩していた“核時代最後のスパイ”が、MI5 の手によって暴かれたと報道されたのだ。
だが、人々に衝撃を与えたのは、その事実よりも容疑をかけられた“その人物”だった。まさに私たちの隣に住んでいるような80代の老女だったのだ。
この数奇な実話をもとに、英国の作家ジェニー・ルーニーが書き上げ、ベストセラーとなった小説の映画化が実現。ジョーンは祖国を裏切ったのか、KGB に利用されたのか、レオへの愛のためなのか、それとも──スリリングな謎解きに息をのみ、クライマックスのジョーンのスピーチに、今を生きる私たちに深くつながる物語であることに気づかされる衝撃作が完成した。
主演を務めるのは、アカデミー賞に7 度ノミネートされ、『恋におちたシェイクスピア』で受賞した、英国映画・演劇界の至宝、ジュディ・デンチ。
このたび解禁されたインタビュー映像は、デンチが自身が演じたジョーンについて説明するところから始まる。「ジョーンはとても普通の女性よ。ごく普通の家に住んでいるの。でも高齢者になってから1940 年代にソ連のスパイだったと判明するのよ」
イギリス郊外で穏やかな一人暮らしを送っていたジョーンは、2000 年5 月、突然訪ねてきたMI5 に連行されてしまう。信じられないほどの過去を隠し続けて静かに生活を送っていたが、そこまでジョーンが秘密を守ったことについて「ジョーンはとても上手に秘密を守ってた。彼女なりの信条を持って行動していたし、ずっと隠し通してきたの」と優しく温かな表情の下に、ドラマティックな半生を、実の息子にも隠していたジョーンを彷彿とさせる表情で語る。
(実際に存在した)ケンブリッジ・スパイの存在を知った時は?という問いには、「(ガイ・)バージェスと(ドナルド・)マクリーンをよく覚えてるわ。王室の絵画鑑定士だった(アントニー・)ブラントもね。ごく普通に見えた彼らに裏の顔があったことが突然暴露されたの。権威ある仕事に就いている人もいたのに、まさかその裏でスパイ活動をしていたなんて。衝撃的だったわ」と思いを馳せる。
ソ連のKGB に核開発の機密を漏洩していた“核時代最後のスパイ”ジョーン。仲間や家族を裏切ってまで、何を守ろうとしたのか、そして、ジョーンを突き動かしたものとはいったいなんだったのか?
本作で描かれた「ジョーンの動機について」聞かれたデンチは、「映画の中では 彼女は広島の原爆投下を知り、行動を起こすの。私自身も広島のことはよく覚えてる。そのあとすぐに長崎が続いたのよね、ショックを受けたから彼女の気持ちも分かる。彼女は不公平を是正すべきだと信じてた。“一方に情報が偏るべきではない”とね」と語る。
「巨大なテーマを扱った小さな映画」と監督のトレヴァー・ナンが表現する『ジョーンの秘密』。ジョーンをスパイ行為へと駆り立てたものは広島と長崎への原爆投下に恐怖を感じ、二度とこんなことが起きないようにしなければという気持ちだった……。
すべての国が同じ機密情報を持っていれば、世界はより安全な場所になると考えたジョーンのとった行動は果たして正しかったのか? 本作の日本公開日は、広島、長崎に原爆投下されて75 年目となる8月7日(金)。新たな視点からこの問題に向き合うきっかけとなるかもしれない。
ジョーンの秘密
2020年8月7日(金)TOHO シネマズ シャンテ他ロードショー
配給:キノフィルムズ
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