死後36年を経て語られる、未完の問題作『叶えられた祈り』執筆の裏側
『ティファニーで朝食を』(58)、『冷血』(66)など多くの傑作小説を残した20世紀アメリカ文学界を代表する作家トルーマン・カポーティ。本作は、彼の知人や関係者たちの証言をもとに、流行作家であり、戦後アメリカを代表するセレブリティのアイコン的存在でもあった“恐るべき子ども(アンファン・テリブル)”の栄光から転落までを追い、その素顔に迫る文芸ドキュメンタリー。
ニューヨーク文壇の寵児として、また、ゲイのセレブリティのアイコンとして社交界を席巻したトルーマン・カポーティ。『冷血』の大成功を経て長年出版が待ち望まれた新作『叶えられた祈り』は、ニューヨークの上流階級(ハイソサエティ)の実態を描いた最高傑作となるはずだった。
しかし第一章が発表されるや否や、そのスキャンダラスな内容によって激しい論争を巻き起こす。社交界から追放され、多くの友人を失ったカポーティは、アルコールと薬物中毒に苦しみ、作品の完成を待たずしてこの世を去ることとなる。
なぜ彼は、多くの人を傷つけるような本を執筆したのだろうか? 死後36年を経て、彼の波乱に満ちた人生を濃密に網羅し、「未完の絶筆」とされている問題作『叶えられた祈り』をめぐるミステリーに迫る珠玉の文芸ドキュメンタリーがここに完成した。
ジャーナリストのジョージ・プリンプトンによるカポーティの評伝『トルーマン・カポーティ』(97)を基にした本作は、オバマ政権時のホワイトハウスでソーシャル・セクレタリーを務めた異色の経歴を持つイーブス・バーノーの監督デビュー作。
作家ノーマン・メイラーや女優ローレン・バコールなど、当時の貴重な取材テープに加え、カポーティの養女ケイト・ハリントン、作家のジェイ・マキナニーやファッション・ジャーナリストのアンドレ・レオン・タリーなど、バーノー監督が独自のルートで入手した新たなインタビューから、謎に包まれたカポーティの素顔が見えてくる。
初公開された日本版ポスターは、ファッション・アート写真界を代表する名匠リチャード・アヴェドンが撮影したカポーティの写真が使用され、「私はアル中である。私はヤク中である。私はホモセクシュアルである。私は天才である。」というカポーティの言葉が添えられている。バッグを腕にかけ、左に煙草、右にマッチを手にしたカポーティは、スーツの上にセーターを重ねる大胆なスタイリングで、世界を挑発しているかのようだ。
“誰もが一度は会いたいと願うが、一度会えば二度とは会いたくない”男と呼ばれ、「指折りの人たらし」 「掛け値なしの奇人」 「ゲスな男」 「ドラッグ漬け」 「砂糖漬けのタランチュラ」などと評された天才作家の謎に包まれた生涯とは…。
カポーティの死後36年を経て、未公開の音声アーカイヴ、時代を共にしたセレブリティたち、友人知人や敵対した人物たちの貴重なインタビューや秘蔵映像から、その人生を解き明かしていく。
トルーマン・カポーティ 真実のテープ
2020年11月6日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
配給:ミモザフィルムズ
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