「僕たちの仕事は正しい対位旋律を見つけること」
ガーリー・カルチャーの体現者であり、『ヴァージン・スーサイズ』『マリー・アントワネット』など映画監督としても目覚ましい活躍を続けるソフィア・コッポラ監督。
その新作『オン・ザ・ロック』は、監督と『プリングリング』以来となる気鋭の製作・配給会社「A24」、そして『ロスト・イン・トランスレーション』のタッグが贈る都会派コメディドラマだ。
ニューヨークに暮らす若い母親は、ある日、結婚生活に疑いを持つようになり、稀代のプレイボーイである自分の父親と一緒に夫を尾行することになる。光り輝く街中で冒険を繰り広げる父娘は、街路を行ったり来たりする内にその距離を近づけていく―。
ソフィアとは3度目のタッグとなるビル・マーレイが稀代のプレイボーイの父親を演じ、重鎮クインシー・ジョーンズを父に持つラシダ・ジョーンズがその娘に扮する。
夫に浮気の疑いを抱いて尾行した友人のエピソードや、実父フランシス・フォード・コッポラとのエピソードを盛り込みながら、ソフィア自身の故郷であるニューヨークを舞台に、創作への不安や結婚の複雑さ、世代による考えの違いをコメディタッチで描き出す。
本作の音楽を担当したのは、ソフィアの夫であるトーマス・マーズがフロントマンを務めるフランスのインディーロックバンド、フェニックス(Phoenix)。グラミー賞も受賞したことがある世界的人気を誇る実力派バンドで、エレクトロニクスとポップスを絶妙な配合で融合させることで定評がある。
トーマス・マーズは「ソフィアはこの作品の冒頭でチェット・ベイカーの‘I Fall in Love Too Easily’を使いたいと最初から分かっていた。そのおかげでそれを基盤にサウンドトラックを組み立てて行けたからやり易かったよ。僕たちの仕事は正しい対位旋律を見つけること。作業の初期段階からいくつかキーとなるシーンの映像を見せてもらえたのもラッキーだったね。パリにある僕たちのスタジオの大きなスクリーンに映像を映して、照明を落として何時間か即興で演奏してみたりしたよ」と制作の舞台裏を明かす。
それらの楽曲がエレクトリックで厳選されたサウンドトラックに組み込まれて行った。「ソフィアの映画では既存の楽曲が大事な役目を果たしていて、それらの楽曲はいつも注意深く厳選されて彼女が思い描く通りのムードを生み出す役目を果たしているんだ。この映画では特に、オリジナルの曲を作るのと同じくらい、ソフィアがそういう既存の楽曲を見つける作業も一生懸命手伝ったよ」
バンドは、8月に本作のサウンドトラックのために書いた3年ぶりの新曲「Identical」のミュージックビデオを公開している。この曲のミュージックビデオは、ソフィアの兄ロマン・コッポラが監督し、曲とビデオは、昨年亡くなったバンドの友人でありコラボレーターのフィリップ・ゼダール(カシアス)に捧げられているという。
ハリウッドのクラシック映画の雰囲気にソフィアのメランコリーな世界観を融合させたほろ苦くも切ない都会派コメディドラマに仕上がった『オン・ザ・ロック』。自身のホームタウンNYで撮影し、ビル・マーレイと再びタッグを組み、そして音楽は夫に依頼するなど、ソフィアのこれまでの作品以上にパーソナルな内容に仕上がった本作に注目だ。
オン・ザ・ロック
2020年10月2日(金)より全国ロードショー
2020年10月23日(金)よりApple TV+にて配信
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
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