ロックンロールの象徴ともいわれるジョーン・ジェットの半生
本作は、70 年代末に日本でも大ヒットした女性 5 人組バンド、ザ・ランナウェイズの中心メンバーであり、解散後は<ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ>としてソロ活動を続け、「アイ・ラヴ・ロックンロール」がビルボードチャート 7 週連続 1 位を獲得。2015年にはロックの殿堂入りを果たした、女性ギタリストでありロックンロールの象徴ともいわれるジョーン・ジェットの半生を描いたドキュメンタリー映画。
ジョーン・ジェットがギターを手にした幼少期から現代まで、約半世紀にわたるロック人生を 95 分間で描き切る。
ロサンゼルスの変態プロデューサー、キム・フォウリーに発掘されたザ・ランナウェイズの全盛期、ビートルズ並みの熱狂で迎えられた来日公演、そして日本でのメディアによる取材がきっかけとなった解散の顛末など、ザ・ランナウェイズの歴史も描きつつ、完全なる男社会だった米国音楽業界で<ギターはいらない>と言われ、あくまで性的興味を引くための道具としてしか自身の存在を見ない世界の中で、女性であるがゆえに経験してきた苦労と、ソロ活動以降のバンドメンバーであり盟友のケニー・ラグーナ(THEBLACKHEARTS)とのレーベル運営など、厳しい音楽業界のなかで<純粋にロックンロールを演奏し続ける>ことでもがいてきたジョーン・ジェットの姿が炙り出されていく。
オハイオ州出身のバンド、ギッツの女性ボーカル、ミア・サパタが 93 年に強姦され殺害された事件においては、ジョーン・ジェットが残されたメンバーとアルバムをリリース、印税を全額捜査の資金に寄付し、11 年後の 2004 年に犯人逮捕にこぎつけたエピソードも綴られている。
さらに映画方面では、契約上の義務を果たすべく生まれた苦い思い出『ジョーン・ジェットの爆裂ムービー』(84)やブルース・スプリングスティーンが演じるはずだった役をジョーン・ジェットが演じたハリウッド映画『愛と栄光への日々/ライト・オブ・デイ』(86)もフィーチャーされ、マイケル・J・フォックスもインタビューに答えている。また、『ランナウェイズ』(11)でジョーン・ジェットを演じたクリステン・スチュワートも出演。
出演には本人のほか、サンディ・ウェストとシェリー・カーリー(ザ・ランナウェイズ)、イギ―・ポップ、ドン・ボールズ(ジャームス)、ビリー・ジョー・アームストロング(グリーン・デイ)、アダム・ホロヴィッツ(ビースティ・ボーイズ)、キャスリーン・ハンナ(ビキニ・キル)、イアン・マッケイ(フガジ)、ピート・タウンゼンド(ザ・フー)、マイリー・サイラス、アリソン・モシャ―ト(ザ・キルズ)、マイケル・J・フォックス、クリステン・スチュワート等、錚々たる面々が揃った。
パンクロック界からの出演が多いのはジョーン・ジェットがアメリカン・パンク、アメリカン・ハードコアの歴史上最重要作ともいえるジャームスの名盤『(GI)』のプロデューサーであるがゆえだろう。全米 No.1ヒットの実績を持ちつつもメインストリームとは無縁の世界に存在する多くのパンクロッカーたちをも魅了するのがジョーン・ジェットだ。
なお、LA パンク界のボス、マイク・ネス(ソーシャル・ディストーション)も出演、音楽ドキュメンタリーにマイク・ネスが出演するのは非常に珍しい。
半世紀にわたって逆境と戦い、自身の純粋な目的を成し遂げるべく生きてきた一人のミュージシャンの生き様を追った『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』は、どんな状況に陥っても自分が賛同できない世界に迎合せずに突き進むことの重要性と美しさを提示する。このように世の中と対峙して生きる人々は多くいるが、ジョーン・ジェットの<ロックを演奏したい><ギターを弾きたい>という純粋さと直向きさは、観る者の心に大事な何かを残してくれるに違いない。
ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション
シネマート新宿にて2020年10/30(金)より2週間限定上映
シネマート心斎橋にて2020年11/6(金)より 1 週間上映、ほか順次公開
配給:ビーズインターナショナル
© 2018 Bad Reputation LLC