本作で事件に巻き込まれてしまう少女を演じた原菜乃華のインタビューをお届けする。
2016年「週刊文春」ミステリーベスト10で第1位を獲得するなど高い評価を得た塩田武士のベストセラー小説「罪の声」が映画化。実際にあった昭和の未解決事件をモチーフに、過去の事件の真相を探る2人の男を描く。
主人公の新聞記者・阿久津英士を演じるのは、数々の話題作に出演し、幅広い役柄を演じる俳優、小栗旬。そして、もう1人の主人公・曽根俊也を俳優・音楽家・文筆家など様々なフィールドで活躍する星野源が演じる。
本作で、犯行テープに声を使用されたために事件に巻き込まれてしまう中学生の生島望を演じた原菜乃華が、撮影秘話や役作りについて、更にオススメの映画などを語ってくれた。
望の前向きさを大事にしながら演じていました
ーー事件の犯行テープに声を使用されたことで人生が変わってしまう中学生の望を演じるために、どのような準備をされましたか?
「本作のモチーフとなった35年前の事件をネットで調べたり、両親に当時の様子を聞いたりしてイメージを広げていきました。台本は望の視点で読んだのですが、どんなに苦しい状況下でも前向きにひたむきに生きる彼女の姿に涙が止まらなかったです。私自身も撮影に入るまでは友達や親しい人との連絡を絶って、一日中望の気持ちを考えながら過ごすようにしていたのですが、そうやって自分の中で積み上げていった望のイメージが、撮影の際に表情や仕草で自然と出せたらいいなと思いながら役作りしていきました」
ーー望を演じる際に気をつけたことはありますか?
「役作りの際にどんどん自分を追いつめながら望の心情を理解していったので、落ち込んだりもしたんですね。あまりにも彼女が苦しい状況に陥るので、どうしても暗い気持ちになってしまったというか。でも、(土井裕泰)監督が“この映画の中で望は希望の存在だから、前向きでいることは忘れないで欲しい”とおっしゃったので、撮影中はどんなに気持ちが沈んでも“映画字幕の翻訳家になる夢を絶対に叶えたい”という望の前向きさを大事にするようにしたんです。そこは凄く気をつけながら演じていました」
ーー現場で印象に残ったことがあれば教えて頂けますか。
「望が電話をかけるシーンがあるのですが、自分の中ではそこに向けてお芝居をしていたと言ってもいいほど重要な場面だったので、ドライ(カメラ無しのリハーサル)の時点で涙が止まらなくなってしまったんです。そしたら監督が“このまますぐ本番いきましょう”と言ってくださり、各部署のスタッフの方々もすぐに対応してくださいました。その時に改めて“なんて温かくて包容力のある現場なんだ”と感動してしまって。その時のことが凄く印象に残っています」
ーー完成した本作を観ていかがでしたか?
「小栗旬さんと星野源さんのお芝居を見て、阿久津と曽根が背負ってきたものがしっかりと伝わってきたので凄いなと思いました。鑑賞中に“この2人は今までどういう人生を歩んできたのか”という劇中で描かれてないバックボーンまで見えたというか。だからこそ本音を言うとちゃんとご一緒したかったなと(笑)。完成したものを見て余計にそう思いました」
ーー小栗さんは事務所の先輩であり、以前ドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」でご一緒されていましたね。
「はい。小栗さんは凄く後輩想いの方で、わたしのような若手俳優にも“最近調子どう?”と声をかけてくださるんです。お芝居に関しても親身に相談に乗ってくださるので、トップを走ってこられた方は違うなと、毎回お会いするたびに思います」
ーー星野さんとはドラマ「MIU404」でご一緒されましたがいかがでしたか?
「「MIU404」の現場でご挨拶したときに、星野さんが“また一緒の作品に出られるね”と言ってくださったので凄く嬉しかったです。穏やかで柔らかい雰囲気を持った方で、星野さんが現場にいるだけで場が和んでいました」
ーー話は変わりますが、望は映画の翻訳家になることを夢見ていて、雑誌SCREENを愛読していますよね。劇中に昭和時代のSCREENが何度も登場して非常に嬉しかったのですが、当時のSCREENをご覧になってみていかがでしたか?
「女優さんのお洋服や髪型がレトロでオシャレで可愛くて、“なんて素敵な雑誌なんだ!”と思いました。表紙のSCREENの文字がカタカナの“スクリーン”なのもいいですよね。雑誌の中身をじっくり読む時間はなかったのですが、もし現代でも当時のSCREENが売っていたらインテリアとして部屋に飾りたいぐらい可愛くて好きです!」
ーーその気持ち凄くわかります! ちなみに洋画で好きな作品はありますか?
「最近観た中では『ゴーン・ガール』が面白かったです。奥さんと旦那さん、どっちが悪いのか全く予想できなくてすっかり騙されました(笑)。それから『リミット』も面白かったです。棺の中に閉じ込められた主人公が途中で外に出たり回想シーンが入るのかと思いきやそうじゃないという予想外の展開でしたね。それなのに全く飽きさせないですし、ライアン・レイノルズのお芝居にも引き込まれました。観ている間は自分も棺に入っているかのような圧迫感を感じて息苦しく思いながらも楽しめました(笑)」
ーー観る作品はどうやってセレクトしていますか?
「ネットで“オススメ 映画”で検索して、面白そうなものをNetflixやアマゾンプライムのマイリストに入れて、時間があれば片っ端から観るようにしています。配信系を観るようになってから鑑賞本数が増えました」
ーー海外ドラマもご覧になったりしますか?
「韓国ドラマの「梨泰院クラス」を観ました。登場人物にイソちゃんという女の子がいるんですけど、めちゃくちゃ可愛いので髪型を真似しようかなと思ったぐらい好きなキャラです。ドラマ自体凄くオススメなので観て頂きたいです」
ーー最後の質問になりますが、今後チャレンジしてみたい役はありますか?
「『ゴーン・ガール』でロザムンド・パイクが演じていた奥さんのような癖のあるキツい女性の役を演じてみたいです。私は小さい頃から“怒ってるの?”と周りに聞かれることが結構あって、“普通にしてるのになんでだろう…”と落ち込んでいたんですね。でも、最近はそれも個性だと思えるようになって、なんならそれを生かして2面性のある役を演じたらハマるかもしれないなと思い始めて(笑)。いつかそういう役を演じられるようにこれからも頑張っていきたいです」
スタイリスト:津野真吾(inpiger)
ヘアメイク:野中真紀子
(インタビュアー・文/奥村百恵)
<STORY>
35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件は、誘拐や身代金要求、そして毒物混入など数々の犯罪を繰り返す凶悪さと同時に、警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に忽然と姿を消した謎の犯人グループによる、日本の犯罪史上類を見ない劇場型犯罪だった。
事件の深淵に潜む真実を追う新聞記者の阿久津(小栗旬)と、脅迫テープに声を使用され、知らないうちに事件に関わってしまった俊也(星野源)を含む3人の子供たち。
「正義」とは何か? 「罪」とは何か? 昭和・平成が幕を閉じ新時代が始まろうとしている今、35年の時を経て、それぞれの人生が激しく交錯し、衝撃の真相が明らかになる——。
『罪の声』
10月30日 (金) 全国東宝系にて公開
原作:塩田武士『罪の声』(講談社文庫)
監督:土井裕泰
脚本:野木亜紀子
キャスト:小栗 旬 星野 源
松重 豊 古館寛治/宇野祥平 篠原ゆき子
原菜乃華 阿部亮平/尾上寛之 川口 覚
阿部純子/市川実日子 火野正平
宇崎竜童 梶芽衣子
配給:東宝
©2020 映画「罪の声」製作委員会