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杉山すぴ豊
アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
本来あり得ない設定が…!
ここ最近、最も話題になったアメコミ映画はスパイダーマンかもしれません。2021年12月17日公開予定の、トム・ホランド出演のスパイダーマン3作目。タイトルは現時点で未発表ですが『スパイダーマン:ホームカミング』『ファー・フロム・ホーム』ときたので『ホームなんちゃら』になると思われます。(以下『ホーム3』と表記)
なぜバズったかというと『ホーム3』にジェイミー・フォックスがヴィランであるエレクトロ役で出演すると発表されたからです。実はジェイミー・フォックスは2014年のアンドリュー・ガーフィールド出演の『アメイジング・スパイダーマン2』に同キャラで出演していますが、ガーフィールド版とトムホ版は“別物”であり、従ってジェイミー・フォックス/エレクトロが『ホーム3』に出るということは本来あり得ないハズ。
けれど “ある設定”を持ち込めば可能になります。その設定とは? これを説明する前に、もう一度スパイダーマン映画の複雑な事情をご説明しましょう。
エレクトロが出演する背景とは?
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)がディズニーで本格的に始まる前に、マーベルはスパイダーマンのコミックに登場する主要キャラの映画化権をソニー・ピクチャーズに渡しています。ソニーは2002年からトビー・マグワイア×サム・ライミ監督の『スパイダーマン』3部作、2012年からアンドリュー・ガーフィールド×マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』2部作を作ります。
しかしファンの間でコミック同様アベンジャーズとスパイダーマンが共演しているところを観たい!との声があがりガーフィールド版を打ち切りトムホ版のスパイダーマン・シリーズをスタート。このスパイダーマンはソニーとディズニーが連携して“ソニーの映画でありながらMCUの一つ”という極めて異例のシリーズとなりました。
一方ソニーはスパイダーマン・コミックに登場する主要キャラの映画化権も持っていますから、それを行使してトム・ハーディーで「ヴェノム 」(2021年続編も公開)ジャレッド・レト出演の「モービウス」(2021年公開)を作ります。これらはMCUと差別化されSPUMC(SonyPictures Universe of Marvel Characters)と呼ばれています。これだけでも十分ややこしいのですが、さらに混乱させる出来事が起こります(笑)。
まず『ファー・フロム・ホーム』の最後にJ・K・シモンズ演じるジョナ・ジェイムソンというジャーナリストが登場しますが、J・K・シモンズ版ジェイムソンはマグワイア版『スパイダーマン』の重要キャラ。さらに「モービウス」の予告に『ホームカミング』でマイケル・キートンが演じたヴァルチャーが姿をみせます。そして今回のジェイミー・フォックスのエレクトロの復活。つまりマッガイア版、ガーフィールド版、トムホ版=MCU、SPUMCに分散されていた“スパイダーマンの要素”がすべてごっちゃになったのです。
スパイダーマンの世界は“スパイダーバース”の概念ですべての要素が共存できる
ここで考えられるのが“スパイダーバース”です。この概念は、この宇宙には可能性の数だけ世界があり、それらはパラレル・ワールド的に存在しているというもの。
この発想はマルチバースと呼ばれ、そしてその世界ごとにスパイダーマンがいるのでスパイダーバースです。アカデミー賞をとった『スパイダーマン:スパイダーバース 』はまさにこれをテーマにしています。
従ってこれらがスパイダーバースの関係にあるとすれば、すべての要素が共存できるわけです。それを裏付けるかのように『ホーム3』にはドクター・ストレンジも登場。彼の次回作はまさに『ドクター・ストレンジ イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』(しかも監督は偶然にもサム・ライミ!)。ですからドクター・ストレンジがスパイダーバースをもたらすのか?
ここまできたらトビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールド、トム・ホランドの3人がスクリーンで揃うところを観たいですが、個人的にはキルスティン・ダンストのメリー・ジェーンにもう一度会いたい(笑)。