パトリック・ディキンソン監督からキャスティングのコメント
リリー・フランキーさんは、今を代表する素晴らしい俳優の一人です。彼が役柄にこめる繊細で人間らしい演技には、毎回驚かされますし、これこそが彼が特別な存在感を放つ理由だと思っています。今回「コットンテール」という愛の物語でリリーさんと一緒に作れる事をとても楽しみにしていると同時に、世界中の人々の心に触れる美しい映画にしていきたいと思っています。
錦戸亮さんは、演じる役の感情に観客を引き込む事が非常に上手な俳優さんです。「羊の木」での亮さんのお芝居で僕は、どんどん彼の役の感情に引き込まれ、忘れられない映画体験をさせて頂きました。才能豊かな亮さんの演技の幅広さと奥深さを「コットンテール」で皆さんにも体験して頂ける事を嬉しく思っています。
木村多江さんが日本アカデミー賞を受賞された『ぐるりのこ』でのお芝居を拝見して、本当に素晴らしいと感じました。多江さんは偽りのない真の感情を見事に表現していて、僕は何度も泣かされました。多江さんの、この“真に迫るもの”こそが、観客の心の奥深くまで響き、感動を与える理由だと思っています。多江さんと一緒に『コットンテール』という愛の物語で、彼女の才能を映像化できる事が楽しみです。
高梨臨さんのカンヌ国際映画祭に正式招待された『ライク・サムワン・イン・ラブ』でのお芝居は本当に秀逸でした。臨さんは役柄を、希望や恐怖心などを抱え持つ人間味あふれる存在として見事に演じ、私は、彼女に特別な才能を感じました。幸運にも臨さんがキャストに加わって下さった事で、『コットンテール』をご覧になった方々は、きっと彼女の細やかな感情あふれるお芝居で胸心を動かされる事だろうと思っています。
STORY
健三郎(リリー・フランキー)は、妻・明子(木村多江)を失うまで、しばらく一人息子のトシ(錦戸亮)とは疎遠になっていた。明子の葬式で久し振りに、トシとその妻さつき(高梨臨)、孫のエミに会う。喪主であるはずの健三郎は、酒に酔い、だらしない態度をとる。トシは、そんな父親に苛立ちつつも、気にかける。そして、明子の遺言状が開封され、そこには、明子が子供の頃に好きだった『ピーターラビット』発祥地であり夫婦で行きたいと思っていた、イギリスのウィンダミア湖に散骨して欲しいという内容だった。健三郎とトシ一家は、明子の願いを叶えるため、イギリス北部の湖水地方へ旅立つ。イギリスに来ても、何かに悩みながら大人げない態度をとり続ける健三郎にトシは、苛立つ。心を開き、向き合えない健三郎とトシは、旅の途中のロンドンで言い争いとなり、健三郎は何も言わずに一人で湖に向かってしまう。道に迷い、疲れ果て、途方に暮れていると、ある農場に住むジョン(キアラン・ハインズ)とその娘メアリー(ジェシー・バックリー)に出会う。優しい二人の世話になり、しだいに心がやすらいでいった健三郎は、意を決し、トシに連絡をする。そして迎えに来たトシに打ち明けたずっと言えなかった秘密とは……