今はフラットに映画と向き合っています!
――品川監督の作品で、女性が主人公というのは初ですが、今回のEMILY(HONEBONE)さんの起用理由を教えてください。
「歌の上手い女優さんがいないかなと、プロデューサーたちに聞いて探していたんです。そんな時に、テレビの『家、ついて行ってイイですか?』(テレ東)を観て、歌がうまい!って見つけました。喋りも面白い子で、興味が湧いてHONEBONEをYouTubeで探して観たんです。それが本当にかっこよくて。歌っているEMILYの表情が豊かで、まるで歌いながらお芝居している感じだなと思いました。自分のTwitterで『HONEBONEかっこいい!』って、つぶやいたら、EMILY本人が「何でもいいんで仕事ください!」って反応してくれたんです。『じゃあ、女優興味ある?』って怪しいDMを僕から送りました(笑)。それから、HONEBONEの曲を全部聴いて、ブログも読んで、一週間くらいで脚本を書きあげました。彼女たちの『もっと売れたい』というグツグツした感情や、やり場のない怒りとかすごくて。そんなポジティブな部分とネガティブな部分があることが面白くて、あてがきで書ました」
――それにしても、1週間で脚本を仕上げるのは早くないですか?
「今までの中でも早い方だと思います。だいたい一ヵ月くらいで脚本を書くのですが、特に今回は早かったですね。撮影自体も、東京で2日の下川4日間……とか(苦笑)」
――結構なスケジュールですね!
「死ぬかと思った(笑)。ホテルに滞在している時間が2~3時間くらい。撮って帰って気絶して、気が付いたらまた撮影現場という感じでしたね」
――長編映画自体がしばらくぶりですよね?
「自分では、そんなにスパンを空けている自覚がないのですが。確かに今回の撮影が、前作の公開からは空いていますね。僕の中では、体感は3年ぐらいです(笑)」
――コロナ禍でエンタメが元気のない時代に、タイトなスケジュールで新しい作品を手掛ける姿勢は、映画ファンたちも嬉しいと思います。再び映画を撮りたいと思ったきっかけは?
「ずっとそういう新作のお話は頂いていて。映画って企画から辿り着くまで時間がかかるものが多いんですよ。公開するまで、ましては今のご時世、いつ公開できるのかも分からない。去年の初頭に公開しようと思った作品が、これだけ延びて、それでもまだ映画館が厳しい状況でいます。だから、3年間何もやらなかったわけではなく、ずっと企画を頂いて進めていたのがあったり、企画がなくなってしまったものがあったりという感じです。今、改めて質問され、そんなに時間が経っていたんだなと気づきました。でも、この2年って、特に早くなかったですか?」
――早かったし記憶がないです(笑)。
「それこそこの1年は特に、編集された感じがしますよね(笑)?」
――品川さんが監督をやってみたいと思ったきっかけは何でしょう?
「それは、本当に、10代の頃に漠然と思う、『バンドやりたい』とか『お笑いやりたい』とか『映画監督になりたい』とか言ってたものの一つでしたね。でも、実際は何も動かないみたいな(笑)。知らない間に23歳になっていたんです。僕は16歳で高校を中退しているんですよ。だから、16歳でフリーターとして世の中に出て、あれやりたいこれやりたいって思っているうちに、知らない間に23歳になっていました。ちょうどその年齢の頃に、東京NSCが出来て、芸人として売れたら映画を撮りたいなと考えていました」
――芸人さんと監督でどう区別しています?
「最近はあまりなくなりましたね。以前は、バラエティなどで、『ちょっと、監督~(笑)』っていじられたりもしたんですが、最近はそれすれもなくなってきて少し寂しいです(笑)。僕が監督をすることが、ありがたいことに、割と当たり前になってきたので、ドラマなども含めてしょっちゅう撮らせていただいているんですが、それこそニュースにならない(苦笑)! だから、今はフラットに映画と向き合っています」
――監督としての今後の野望ってありますか?
「将来的にはスプラッターホラーをやりたいですね(笑)」
――品川さんのスプラッター、ちょっと観てみたいです!
「どろっどろの血ドバドバのR指定のスプラッターホラー(笑)。本作のヒロインのEMILYってスプラッターに合いますよね(笑)。アメリカの血が入っているんで「キャー!」っていう絶叫顔がハマると思います。『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』や『テキサス・チェーンソー』や『死霊のはらわた』みたいな、ジャパニーズホラーというよりアメリカの山小屋ホラー的な(笑)。和製ホラーではできなかった、何かができそうな気がします」
――ちなみに、品川さんの好きな監督は?
「好きな監督はタランティーノ、ザック・スナイダー、ガイ・リッチーですね。でも、もっといっぱいいます!」
――今、いちばん好きな映画はありますか?
「『マンダロリアン』にハマりすぎました(笑)。『スター・ウォーズ』シリーズの中でも、『マンダロリアン』が面白過ぎたため、また、『スター・ウォーズ』シリーズを1から見直したりしていますね。『クローン・ウォーズ』というアニメを観ているんですが、全部のシリーズを観終えてから、もう一回『マンダロリアン』を観たいなって(笑)。
――何巡もするんですね(笑)。
「黒澤明さんの作品や白黒映画の時代劇の作品を踏襲していて。『スター・ウォーズ』自体も『隠し砦の三悪人』とか言われていましたが、『マンダロリアン』にはそれが顕著に表れているように思います。‟これそのまま『子連れ狼』じゃん!”とか、‟『七人の侍』じゃん”とか、作品への影響が分かりやすいんです。でも、向こうのマカロニウエスタン風にも撮っていたりして、それがまたかっこいいんですよ! ストーリーもよいですし、めちゃくちゃかっこよくてハマってます!」
品川ヒロシ
1972年4月26日生まれ、東京都出身。95年に相方・庄司智春と結成したお笑いコンビ・品川庄司のボケ担当。お笑い芸人として第一線で活躍する一方で、09年には自身の自伝的小説を原作とした『ドロップ』で長編映画監督デビューを果たし、大ヒットを収める。また11年には原作・監督・脚本作品第2弾として『漫才ギャング』が公開し、高い評価を受ける。主な監督作品には『サンブンノイチ』(14)、『Z アイランド』(15)、「異世界居酒屋『のぶ』」(20/WOWOW)、『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~ 「戦湯~SENTO~」』(21)など。また、21年に舞台「池袋ウエストゲートパーク」の演出を手がけるなど、活動の場を広げ続けている。
リスタート
7/16(金)公開
<STORY>
北海道下川町で育った未央(EMILY)は、シンガーソングライターを目指して上京。夢見た形ではないものの地下アイドルとして懸命に活動していた。しかし、意図せず起きた有名アーティストとのスキャンダルにより、世間からバッシングを受けた未央は、夢に破れ傷つき故郷に帰ってきた。
監督・脚本:品川ヒロシ 配給:吉本興業
出演:EMILY(HONEBONE)、SWAY(DOBERMAN INFINITY/劇団EXILE)他
©吉本興業