『スタンド・バイ・ミー』(1986)
田舎町の4人の少年たちの冒険、友情、成長を描く「夏休み映画の金字塔」
監督:ロブ・ライナー
出演:リヴァー・フェニックス、ウィル・ウィートン、コリー・フェルドマン
ベストセラー作家スティーヴン・キングの小説を原作に、少年たちのひと夏の冒険をノスタルジックに綴った「夏休み映画」の金字塔。
1950年代末、オレゴン州の小さな町。小学校を卒業し、最後の夏休みを迎えたゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人は、森の奥に少年の死体があると聞き、好奇心から探しに出かけるが……。
誰もが一度は夢見る仲間との冒険の旅を、ファンタジーではなく等身大の少年たちの物語として生き生きと映像化。豊かな自然の中、線路を辿って遥か彼方の土地を目指す4人に、かつての自分を重ね合わせずにはいられない。鉄橋の上で汽車に追われ、森の中でヒルに血を吸われる姿に、ハラハラドキドキ。焚火を囲んで野宿しながらの他愛のない会話も、コロナ禍中の現在ではより輝いて見える。
だが、そういった冒険は本作の魅力の半分に過ぎない。実は、数か月前に兄を事故で亡くしたゴーディを始め、少年たちはそれぞれ家族のことで悩み、苦しんでいる。旅の中で彼らはその苦しみを仲間に打ち明けることで、一歩前に踏み出すことができる。作品の深みを増すその成長のドラマこそが、「夏休み映画」の真髄と言える。
さらに、この旅が大人への入り口に立った少年たちにとって、かけがえのないひと時だったと分かるラストの切なさも、名作として語り継がれる理由だ。
『マイ・フレンド・フォーエバー』(1995)
孤独な少年がHIV患者である隣家の男の子と友情で結ばれ特効薬を探す旅へ
監督:ピーター・ホートン
出演:ブラッド・レンフロ、ジョセフ・マッゼロ、アナベラ・シオラ
“難病もの”でありながら、生き生きとした少年2人の友情が心に残る作品。シングルマザーの母親が多忙で孤独な日々を送るエリックは、隣に引っ越してきたHIV患者の少年デクスターと親しくなる。絆を深めた2人は、不治の病と言われたHIVの治療法を自分たちで見つけようとするが…。
特効薬発見のニュースを目にした彼らが、親に内緒で旅に出る場面はまるで冒険旅行。いかだでの川下りや岸辺でのキャンプなど、ワクワク気分でいっぱいだ。途中、やむを得ない事情で金を盗んで追われる一幕も、スリルを求める少年時代の気分を思い出させてくれる。
『冬冬(トントン)の夏休み』(1984)
幼い妹と自然に囲まれた祖父の家でひと夏を過ごす少年の姿に郷愁を誘われる
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ワン・チークァン、リー・ジュジェン、グー・ジュン、メイ・ファン
台北の小学校を卒業し、夏休みを迎えたトントンは、病気で入院中の母と別れ、幼い妹ティンティンと田舎にある祖父の家でひと夏を過ごすことになるが…。
川や田畑に囲まれた自然豊かな田舎の風景と、その中で木登りや川遊びに夢中になる子どもたちの姿は、まるで昭和の日本。川遊び中、邪魔者扱いされて腹を立てたティンティンが服を捨ててしまい、トントンたちが裸で帰宅する場面など、ほのぼのムードに溢れている。
おじさんの結婚を巡る騒動など、大人の世界を垣間見るトントンの姿に、背伸びしたくなる少年時代を思い出し、郷愁を覚える人も多いに違いない。
『おばあちゃんの家』(2002)
母親の仕事の都合でおばあちゃんの家に預けられたわがままっ子にやがて変化が
監督:イ・ジョンヒャン
出演:キム・ウルブン、ユ・スンホ、ミン・ギョンフン
都会育ちの少年サンウは、シングルマザーの母親の都合でたった1人、山奥のおばあちゃんの家で夏を過ごすことに。だが、何もない田舎暮らしに不満なサンウは、読み書きのできないおばあちゃんをバカにし、わがまま放題で…。
生意気だが、いざという時には甘えん坊のサンウをひたすら優しく見守り、世話を焼くおばあちゃんの姿には、誰もが自分のおばあちゃんを思い出すはず。
一言も喋らないおばあちゃん役に起用されたのは、なんと素人の女性。プロの俳優にはない素朴な佇まいが味わい深く、絆を深めたサンウと別れるラストは胸に熱いものがこみ上げてくる。
『悲しみに、こんにちは』(2017)
親を亡くした都会っ子の少女が田舎の叔父の家族の一員になるまでをとらえる
監督:カルラ・シモン
出演:ライラ・アルティガス、パウラ・ロブレス、ブルーナ・クッシ
親を病気で亡くし、田舎に暮らす叔父夫婦に引き取られた少女フリダ。孤独な彼女が自然豊かな土地で過ごす中、叔父の家族の一員となるまでのひと夏の体験を綴る。柔らかな日差しや爽やかな風が吹き抜ける木々、鳥のさえずりに囲まれた土地で、木登りや川遊びなどをして過ごすフリダと従妹アナの愛らしい姿に、思わず童心が蘇る。
鶏を捌く肉屋を物珍しそうに見つめ、レタスと間違えて畑からキャベツを取ってくるフリダの姿には、田舎に不慣れな都会っ子らしさも。手持ちカメラを主体にしたドキュメンタリー風の撮影で、臨場感もたっぷり。
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