カバー画像:Photo by John Lamparski/FilmMagic
杉山すぴ豊
アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
主演は『イン・ザ・ハイツ』のレスリー・グレイスと発表
DC映画に新たなヒーロー登場です。DCとHBO Maxが映画『バットガール』に向けて動き出しました。この作品については監督は『バッドボーイズ フォー・ライフ』(2020)のアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーのコンビ、脚本は『バンブルビー』(2018)『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020)のクリスティーナ・ハドソンと発表されていましたが、ついに主役のバットガールをレスリー・グレイスが演じると発表されました。レスリー・グレイスは話題のミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』のメインの一人ニーナを演じています。
バットガールはその名の通り、バットマン系のキャラ。バットマンの盟友ゴードン警部の娘バーバラ・ゴードンがバットスーツに身を包み悪と戦うというものです。60年代のTVドラマ・シリーズ(いわゆるアダム・ウエストの『バットマン』)のシーズン3から登場しています。
シュワルツェネガーがヴィランのMr.フリーズ、ジョージ・クルーニーがバットマンを演じた『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲!』(1997)ではアリシア・シルヴァーストーンがコミックとは少し設定を変えたバットガール役で登場しました。非常にアイコニックな女性ヒーローキャラの一人であり、何年も前から映画化の話がありました。『アベンジャーズ』のジョス・ウェドンが監督するとの噂もありました。しかし一時期プロジェクトはとん挫。しばらくアナウンスはなかったのですが、ここにきて一気に動いた感じです。
リリースは恐らく2023年ですが、基本この映画は他のDC映画と違い、DCとワーナー、『シャザム!』(2019)のようなDCとニュー・ライン・シネマではなく、配信サービスであるHBO Maxが主体となった映画です。従ってアメリカでは配信メインでリリースされる映画になります。
DCの戦略としてバットマンやスーパーマン、ザ・スーサイド・スクワッド級のメジャーヒーローはワーナー(ないしニュー・ライン・シネマ)の劇場公開作、チャレンジャブルな作品はHBO Maxの配信映画というパターンをとるようです。もっともアメリカ以外では劇場公開される可能性はあります。
ゴードン警部はどうなる?多様性を意識した配役
ここで注目したいのはレスリー・グレイスはラテン系。先ほど書いたようにバットガールはゴードン警部の娘なのです。ゴードン警部は『ダークナイト』3部作ではゲイリー・オールドマン、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)『ジャスティス・リーグ』(2017)ではJ.K.シモンズ、そしてTVドラマ・シリーズ『ゴッサム』ではベン・マッケンジーと白人俳優が演じてきました。
しかし来年劇場公開の『ザ・バットマン』ではジェフリー・ライトがゴードンを演じ、つまり黒人俳優が演じるゴードン警部となります。バットガールがラテン系ならゴードン警部がラテン系の俳優である可能性もありますね。
ただJ.K.シモンズが『バットガール』のゴードン警部で出演交渉中という話も出てきており、そうなると、今度のバットガールはゴードン警部の養女、ないしゴードンとラテン系の女性の間に生まれた娘という設定かもしれない。なによりもこの『バットガール』は『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)『ジャスティス・リーグ』(2017)と世界観がつながっているということなのでしょう。
『コブラ会』ミゲル役の彼もDC映画の主人公に?
さらに興味深いのはHBO Maxが作るもうひとつのDC映画『ブルービートル(原題)』。ティーンエージャーの青年ハイメ・レイエスがエイリアンが作った甲虫型のデバイスの力で青いアーマーを着て活躍するというもの。このハイメ・レイエス役にドラマ『コブラ会』のミゲル役でブレイクしたショロ・マリデュエナが抜擢されたらしいのです。彼もラテン系。
さらにさらに来年公開の、エズラ・ミラー出演の映画『ザ・フラッシュ(原題)』(こちらはDC×ワーナーの劇場公開映画、つまり大作)にスーパーガールが登場しますが、このスーパーガールを演じるサッシャ・カーレもラテン系。DCもダイバーシティ(多様性)を意識しており、そうした流れにのったキャスティングなのでしょうね。
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