アナザーラウンド』の主演を務めたマッツ・ミケルセンの母国デンマークは、賞レースを賑わせる作品や監督を多数輩出してきた知る人ぞ知る映画大国です。マッツと縁深い監督たちを紹介しつつ、デンマークの映画界をのぞいてみましょう。(文・清水久美子/デジタル編集・スクリーン編集部)

世界的俳優マッツが今も出演し続けるデンマーク映画とは?

“北欧の至宝”と呼ばれる名俳優マッツ・ミケルセン。ヴァイオレンスものから感動ドラマ、SF超大作、さらにコメディーまで、どんなジャンルの作品でも役になり切るマッツは、世界的な俳優になってからも出身国デンマークの映画に出演し続けている。

あまり知られていないかもしれないが、デンマークは映画大国で、1910年代にはすでに世界最大の映画製作国の一つだった。ただ、デンマーク映画の存在が世に広く知られるようになるには、そこから長い年月がかかった。1988年、ビレ・アウグスト監督の『ペレ』がカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。アウグスト監督は1992年にも『愛の風景』で同賞に輝いた。

画像: 『ペレ』はパルム・ドールとアカデミー外国語映画賞(現:アカデミー国際長編映画賞)を受賞

『ペレ』はパルム・ドールとアカデミー外国語映画賞(現:アカデミー国際長編映画賞)を受賞

そして2000年、ラース・フォン・トリアー監督も『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でパルム・ドールを受賞。デンマーク映画は一気に世界の注目を集めることとなった。

画像: 近年のデンマーク映画界の中心人物ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

近年のデンマーク映画界の中心人物ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

1995年にトリアーはトマス・ヴィンターベア(『セレブレーション』)、ソーレン・クラフ=ヤコブセン(『ミフネ』)、クリスチャン・レヴリング(『キング・イズ・アライヴ』)の3人の監督と“ドグマ95”を設立。

画像: ヨーロッパ映画賞を受賞したドグマ95創設メンバー。左からクリスチャン・レヴリング、ソーレン・クラフ=ヤコブセン、ラース・フォン・トリアー、トマス・ヴィンターベア

ヨーロッパ映画賞を受賞したドグマ95創設メンバー。左からクリスチャン・レヴリング、ソーレン・クラフ=ヤコブセン、ラース・フォン・トリアー、トマス・ヴィンターベア

これは「全てロケ撮影」「カメラは必ず手持ち」などの10個のルールに従って映画を製作する、技術的なミニマリズムを追及したデンマーク発祥の映画運動で、映画市場に波紋を投げかけた。デンマーク映画は芸術性が高い作品が多いが、もちろん難解な映画ばかりではない。気軽に楽しめる作品も多いので、マッツが出演した同郷監督の映画をぜひチェックしてほしい。

TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のニコライ・コスター=ワルドーとピルー・アスベックもデンマーク出身の人気俳優。ニコライはサスペンス・ドラマ映画『真夜中のゆりかご』に主演。北欧ミステリー小説の映画化『特捜部Q』シリーズの2作目『キジ殺し』にはピルーが出演しているので必見だ。

画像: 国際的に活躍するニコライ・コスター=ワルドー主演『真夜中のゆりかご』

国際的に活躍するニコライ・コスター=ワルドー主演『真夜中のゆりかご』

画像: デンマーク映画界の精鋭が集結した『特捜部Q』シリーズ。4作目の『カルテ番号64』は歴代デンマーク映画史上1位の興収記録を樹立した

デンマーク映画界の精鋭が集結した『特捜部Q』シリーズ。4作目の『カルテ番号64』は歴代デンマーク映画史上1位の興収記録を樹立した

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