――本作で演じたギテという役について教えてください。
映画の中で、ギテがヒジュンに家庭環境について語るシーンがありますが、「君は家に帰ったらお母さんにご飯を作ってもらうんだろ? 僕はお母さんがいないからそういうことがないんだよ」と話すシーンがありました。ギテにとっては、家族というのは父親だけで、母親が不在という家庭でした。常に何か満たされないまま暮らしているわけです。母親がいないことによる影響というより、父親とのコミュニケーション不足だと思うんですね。二人で暮らしていても会話がなかったように思えます。もし、親子として父親と心を通わせる対話をしていたら、ギテも道を外すこともなかったのではと考えています。そして、他人に対しての考え方や友達に対する配慮も育まれたんじゃないかと思います。でも、根底ではもっと自分に関心を持って欲しいという心情が潜んでいるのだと思います。それをうまく表現できなかったばっかりに、悲劇的な結末を迎えたんではないかと思います。常に焦っていて不安なギテ演技を演じるのは、とても苦しかったと記憶しています。
――10年前に演じた役ですが、当時、実年齢より若い役を演じることで難しかったことはありますか?
高校生を演じていましたが、当時の私が27歳~28歳に差し掛かっていた頃でした。すっかり大人になっている私が制服を着たからといって、本当に10代になれるはずではないんですが、何とか10代に見えるようにと思っていましたね。観客たちが感情移入をしてくれるだろうかと不安を抱きながら演じていました。友人役の共演者たちもみんな成人した大人でした。なおかつ、初対面でした。高校で仲のいい設定で、なにより3人の学生のアンサンブルが大事です。僕たちで、本当に高校生の和気あいあいとした雰囲気が出せるだろうか? 表現できるだろうか? と随分、心配もしました。しかし、これを解決してくれたのが監督でした。監督はしょっちゅうみんなを集め、お喋りをしたり、時には一緒に泊まり込んだりしてくれました。ずっと行動を共にしていたんです。劇中での友人同士の口調でお互いに罵り合ったり、タメ口で話したり、まったく面白くない話なのにケラケラ笑ったり……。そういう時間を共有できたからこそ、自然な形で役になりきれ、高校生に見えていたのかなと思います。
ギテはタバコを吸うシーンが多かったのですが、あの頃は演技としてタバコを吸い始めました。撮影が終わったらタバコを止めるつもりでしたが、おかげで、今は、喫煙者と非喫煙者の間を行ったり来たりするようになりましたね(笑)。撮影中は、何本もタバコを吸っていたので、急に目が回って倒れて病院に運ばれた思い出もあります。
――本作は、日本ではなかなか観る機会がなく、映画ファンが待ち望んでいた映画です!
私という俳優を知っている方々や知らない方々にも、私自身を紹介するうえで、この作品は欠かすことのできない作品です。今回、WATCHAを通じて、作品が紹介されることを大変うれしく思います。新人時代のまだまっさらで純粋で情熱にあふれていた私が演じたこの映画をどのように観ていただけるか気になります。
――初心を思い出す作品なんですね!
この作品で、経験をしたことや、この作品を撮った監督との出会いが、今に至るまで大変大きな影響を与えてくれました。監督に出会ったことで、俳優としての態度、姿勢、心づもりを学ぶことができました。相手が言っていることを聞き取って、心から表現をしているかどうか常に自問を繰り返す作品でした。映画の世界というものは、実際は虚構なわけですが、私は表現というものをそういう風には考えておりません。自分が演じる人物が作品で生きているのか?と考えて演じることにしています。今も演技に対する情熱を忘れることなく、『BLEAK NIGHT 番人』で経験したことを続けています。今でもまだまだ足りないですが、更に努力を続けて、足りない部分を補っていきたいです。そんな気持ちを思い出させてくれる作品で、自分にとってはとても大事な作品なんです。
――WATCHAで10年前の作品が配信されることについてどう思われますか?
とても驚いています。韓国で人気のWACHAが日本で配信されていると。実は僕は韓国のWATCHAで日本の作品を見ているんです。先日も「アンナチュラル」を観ていました。こういった作品があればいいなと思っていました。ぜひ、韓国でもリメイクされたら……と思っています。日本にもどんどん、韓国の作品が紹介されると願っています。
――まだまだ日本では未発表の優れた作品が韓国にはいっぱいあると思います。個人的におすすめしたい韓国作品があれば教えてください。
もしかしたら、ご存じかもしれませんが、「シグナル」でご一緒したキム・ウォンソクさんが監督のドラマで、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」という作品がオススメです。ほか、「ストーブリーグ」というナムグン・ミンさんが主演のドラマは、放送される日のその時間帯に、僕はテレビの前で待機していたドラマです(笑)。まだ観てらっしゃらない方がいたら、これもぜひオススメしたい作品です。
――日本のファンにメッセージをお願いします。
みなさんに、韓国のコンテンツを末永く愛して欲しいです。私も日本の映画やドラマから大変大きな影響を受けております。ぜひ日本の作品にも出てみたいと思っています。是枝裕和監督、本当に大好きです! いつでも呼んでくださったら、いつでも日本に参ります(笑)!
イ・ジェフン
1984年7月4日生まれ、韓国・ソウル特別市出身。2007年、短編映画『夜は彼らだけの時間』でデビュー。主な出演作に『高地戦』『建築学概論』、ドラマ「シグナル」「明日、キミと」等。
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『BLEAK NIGHT 番人』
監督:ユン・ソンヒョン
出演:イ・ジェフン、ソ・ジュニョン、パク・ジョンミン
【STORY】
少年が一人死んだ。 普段息子に無関心だった父親は突然の喪失に非常に混乱し、一歩遅れた罪悪感と無力さに息子・ギテの死を追いかけ始める。机の引き出しで大事に保管されていた写真には、息子の友達であるドンユンとヒジュンが写っていた。学校を訪ねると、一人は転校し、一人は葬儀場に来なかったという――。
映画好きのための配信サービス『WATCHA』って?
WATCHAは、新作やオリジナルだけでなはない、『ラ・ラ・ランド』『最強のふたり』などの映画好きが何度も繰り返して観たくなる名作や、韓国でYouTube累計再生1億6,000万回超えを記録したNo.1リアリティショー『カッチャサナイ』や韓国で大ヒットしたハイパーリアリティあるあるドラマ『中小企業物語』など他ではなかなか観られない作品を配信。
まずはアプリをダウンロードし、「1ヶ月無料体験を始める」をクリックして、必要情報を入力。料金プランは月額869円(税込)の「ベーシックプラン」と月額1320円(税込)の「プレミアムプラン」の二種類。どちらも1ヶ月無料体験ができ、いつでも簡単に解約が可能。無料トライアル中の解約なら月額料金の発生はナシ!