今年のミュージカル映画旋風の火付け役!『イン・ザ・ハイツ』
ピューリッツアー賞、グラミー賞、エミー賞、トニー賞など、ミュージカル界のみならずエンターテイメント業界にその名を轟かしているリン=マニュエル・ミランダ。彼の才能を決定づけた「イン・ザ・ハイツ」は長年、映像化が望まれていた傑作ミュージカルだ。
プエルトリコからの移民の息子であるミランダは、ニューヨーク、アッパー・マンハッタンのワシントン・ハイツで育つ。7歳のときに家族と観た「レ・ミゼラブル」でミュージカルに興味を持ち、大学のときに「イン・ザ・ハイツ」のドラフトを書き上げた。初演は2008年、ショウは大ヒットで閉幕する。そして、ブロードウェイ初演から10年以上の時を経て、待望のミュージカル映画となった。映画化にあたり、ミランダは原案だけでなく、制作、作詞・作曲を担当するなど全力を注いだ。
変わりゆくNYの一角にある″ワシントン・ハイツ“で暮らすウスナビ(アンソニー・ラモス)。「いつかは有名になってやる」という夢を抱えているが、直面するのはNYの厳しい現実。それでも夢をあきらめない全ての人たちの背中を押してくれる新時代のミュージカル。「音楽で夢に踏み出そう!」というメッセージがストレートに心に響く。
観逃がせない3つのポイント!
500人以上が群舞する場面も!圧巻のダンスシーン
ワシントン・ハイツの路上で繰り広げられる躍動感溢れるシーン。移民である住人たちが居場所を追われる危機にある中で発する「何度でも立ち上がる」という力強いメッセージと彼らの絆が伝わる。ミランダが今も住む「ワシントン・ハイツ」の住民もダンスシーンに参加。力強い魂の叫びにオープニングから一気に引き込まれる。
ラテンのリズムで刻まれる名曲の数々!
サルサやメレンゲ、R&Bやポップなど様々な音楽が彩る本作。ウスナビのコンビニで売った宝くじに9万6,000ドルの当たりくじがあったことが発覚し、住民は「もし、自分が手にしたら?」と色めき立つ。そこで流れる「96,000」は6分近くもある楽曲。まるでラップバトルのような掛け合いをする住民の姿にワクワク!
希望と夢が詰まったハートウォーミングな物語
移民である親世代とその子どもとでは夢も大きく異なる。ウスナビやヴァネッサのように町の外に憧れを抱く者もいれば、ニーナのように故郷に戻ることを望む者もいる。移民の街に暮らす若者が夢と現実の狭間で苦しみ、もがく。苦悩の形はそれぞれだけど、「みんなと一緒に立ち上がろう」と前向きになれる絆、一体感が温かい!
『イン・ザ・ハイツ』日本語吹替版
ウスナビ(アンソニー・ラモス)役 木村昴インタビュー
“特別気持ちが揺れ動くから歌のシーンになる”
ー映画『イン・ザ・ハイツ』の感想を教えてください。
「ずっと映画化を期待していたミュージカル作品だったので、映画になると聞いてすごくうれしくなりました。映画化だけでも“キター!”という感じなのに、まさか吹き替えで関わることになるなんて。しかも主人公の声を担当するとなったら、テンション上がりまくりです。ブロードウェイで女優として活動している妹に自慢しまくりました。兄妹揃ってミュージカル大好きなので」
ー木村さんがミュージカルに惹かれる理由とは?
「ミュージカルはセリフの途中で急に歌い出すところが苦手という方もいますが、僕はセリフでは収まらない、言葉を話すだけでは伝えきれない溢れ出た感情や気持ちをメロディーの力を借りて表現するというパフォーマンスだと思っています。観ていて楽しいし、やっているときも楽しいと感じていました。特別気持ちが揺れ動くから歌のシーンになる。
流れる音楽と役者のパフォーマンスで全身に物語を浴びている感覚になって、最高に興奮します。父親がオペラ歌手、母親はバロック音楽のソプラニストなので、ステージに立つ両親を見て育ちました。オペラは難しいし、当時も今も完全に理解できていないけれど、なんかかっこいい、楽しそうだなと感じました。
いろいろな音楽に関わる中で僕がやりたいと思い、目指したのはミュージカルの世界。歌、ダンス、芝居、のいいところをギュッと凝縮しているミュージカル、絶対楽しいに決まってる! ってね(笑)」
ーアンソニー・ラモス演じるウスナビをどう思いましたか?
「声も似ていると思ったし、性格なんて僕そのものです。めちゃくちゃ奥手で、自分のために頑張れないのに、仲間のためには燃えるタイプ。助けを求められたら“よし、任せろ”って言っちゃうし、頼まれたら断れない。“これ、僕じゃん!”と思うシーンがたくさんありました。今回、映画の吹き替えしかやってないのですが、ミュージカルも、映画のオリジナル版にも出たような気分ですし、なんならワシントン・ハイツの住人ですと言っちゃいそうなくらい近い存在になっています」
ー今回、セリフは吹き替えで、音楽はオリジナルのままです。
「僕はそれが一番いいと思っています。その国の言語で作られたミュージカルだから、そのままのほうがかっこいいものが感じ取れる気がします。違う言語に置き換えることで、譜割が変わったりすることがあります。僕はなるべくオリジナルで聴きたいタイプなので、音楽の吹き替えがないのは、なんかいいなと思いました」
ーラップの間にセリフが入り、アンソニーと木村さんの声が入り混じって、どちらが喋ってどちらが歌っているのか区別つかない部分がありました。
「マジですか。めちゃくちゃうれしいです。冒頭でラップの合間にセリフ、かと思えば喋りながらラップというシーンがあって。そこで歌とセリフの声が違ってしまうと、観ている人にとっては違和感でしかないと思いました。全く一緒の声にするつもりはなかったけれど、この映画の場合はアンソニーの声に近づけたいという気持ちでした」
ー声のプロである木村さんから見た、アンソニーの声の魅力とは?
「ハスキーボイスで、すごくセクシー。ボソッとしゃべるとセクシー度が増してかっこよくなります。なのに、すごく近しい存在に感じる声でもあります。地域密着型ボイスというのかな(笑)。声優なのにこんなことをいうのは変だけど、いい声すぎる人っているじゃないですか。周りにあまりいないから、リアルに感じないというのかな。アンソニーの声は近所のお兄ちゃん感のある声で、ウスナビのイメージにピッタリだと思いました。滲む優しさがあり、嫌味がなく、伝わる声。僕が目指したい声です」
ー印象に残ったシーン、見どころをお願いします!
「大停電のシーンです。ニューヨークの大停電は歴史的な出来事ですが、実はこの3日間にヒップホップカルチャーも大きく発展を遂げています。音楽としてはもちろん、カルチャーとしてのヒップホップの歴史を知ると、ひと味違う楽しみ方ができます。自分の目指す夢や故郷について、いろいろと感じてもらえたらいいなと思います」
PROFILE
木村 昴 Subarau Kimura
1990年6月29日生まれ、ドイツ出身。2005年に『ドラえもん』剛田武(ジャイアン)役で声優デビュー。主な出演作に『ヒプノシスマイク』(山田一郎役)、『呪術廻戦』(東堂葵役)など。『トムとジェリー』(テレンス役)など洋画吹替えに多数参加しているほか、ゲームやナレーションでも活躍。また、『おはスタ』メインMCのほか、ラッパーや劇団座長など幅広い分野で精力的に活動中。
photo/久保田司 make/門口明加 styling/高山良昭
『イン・ザ・ハイツ』商品情報
『イン・ザ・ハイツ』
デジタル配信中
12月3日(金)ブルーレイ&DVDリリース
ブルーレイ&DVDセット(2枚組) ¥4,980(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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