2021年話題を呼んだ二つの愛の物語が早くもソフト化。愛するが故の究極の選択、そして狂おしく官能的な愛。愛のかたちも様々であることを実感できるはずです。この冬はじっくりと愛に浸ってみませんか。（文・杉谷伸子／編集・SCREEN編集部）
愛が魅せる眩い煌めき
『スーパーノヴァ』
星がその一生を終えるときに起こす、眩しい光を放つ大爆発「スーパーノヴァ」。その現象をタイトルにした二大紳士俳優共演作が見つめるのは、20年来のパートナーであるピアニストのサムと作家のタスカーの深い愛。長年人生を共にしてきた二人だが、ゆっくりと記憶と能力を失っていくタスカーの病が、共に歩むはずだった未来を消し去ろうとしているのだ。
愛するサムの重荷になりたくないタスカー。不安を抱えながらもタスカーと一緒にいることを決意しているサム。おたがいのことを思い合うからこそ、まったく異なるそれぞれの想いが、思い出の湖水地方をめぐりながらキャンピングカーでタスカーの演奏会の地へと向かう旅を通して浮かびあがる。
寡黙さの中に愛が滲むサムを演じるのは、『英国王のスピーチ』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたコリン・ファース。ウィットに富んだ言葉で愛と人生の真実を突くタスカーには、『ラブリーボーン』で同賞助演男優賞候補となったスタンリー・トゥッチ。英国と米国を代表する名優が、これが監督２作目となる新鋭ハリー・マックイーンのもと、愛し合うカップルの究極の愛の選択で魂を揺さぶる。
見どころポイント
20年来の親友が愛と絆を体現
スタンリー・トゥッチとコリン・ファース自身も20年来の親友。先に出演が決まったトゥッチが、ファースに脚本を送ったことから実現した共演が、サムとタスカーが共に歩んできた長い時間の中で築かれた絆や空気感を体現。見つめあう眼差しだけで感情の機微を伝える名優二人の芝居にさらなるリアリティをもたらしている。
コリン・ファースが奏でる「愛の挨拶」
サムが演奏会で奏でるエルガーの「愛の挨拶」を弾いているのは、コリン・ファース自身。子ども時代に自宅のピアノを弾いていたというコリンが、吹き替えは避けたいという監督の希望を受け、毎日レッスンを受けた成果を披露している。ゆっくりとしたテンポでの演奏が、タスカーへのサムの想いをさらに深く響かせる。
二人の愛を深める湖水地方の美しさ
本作のもう一人の主人公といえるのが、イギリスで最も美しいと言われる湖水地方の風景。紅葉の広がる丘。その風景を映しだす鏡のように澄みきった湖面。朝霧に包まれた幻想的な風景。サムとタスカーの思い出の地である湖水地方の景色が美しければ美しいほど、人生の岐路に立った大人のカップルの愛の深さと悲しみが際立つ。
発売中
『スーパーノヴァ』
ブルーレイ：5,280円（税込）DVD：4,290円（税込）
映像特典：インタビュー：ハリー・マックイーン監督、
コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ／予告集
発売元：カルチュア・パブリッシャーズ
販売元：ハピネット・メディアマーケティング
© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.
身も心も滾る想いのままに
『シンプルな情熱』
パリの大学で文学を教えるエレーヌは、あるパーティーでロシア大使館勤務の年下の男性アレクサンドルに出会い、たちまち恋に落ちる。自宅やホテルで逢瀬を重ねるたびに、彼との抱擁がもたらす陶酔にのめり込んでいくが、妻もあり、気まぐれなアレクサンドルからの電話をひたすら待ちわびるだけ。だが、その苦しい時間もまた彼への想いを募らせる。
原作は、フランス現代文学を代表する作家アニー・エルノーが、自身と年下の既婚男性との愛と性を赤裸々に綴った同名ベストセラー小説。恋に落ちた大人の女性の心理を見つめた原作は、発表当時、フランスはもちろん日本でも多くの女性たちの共感を呼び、圧倒的な支持を受けた。
30年の歳月を経て、そのベストセラー小説の舞台を現代のパリに置き換え、新たな息吹を吹き込んだのは、自身も原作ファンだったというダニエル・アービッド。原作では〈私〉〈彼〉と記されていた恋人たちにエレーヌとアレクサンドルという名前を与え、フランス映画界の注目女優レティシア・ドッシュと「野獣」の異名をとる天才ダンサーのセルゲイ・ポルーニンという豪華な顔合わせで狂おしい愛と官能を濃密に描き出している。
見どころポイント
「野獣」セルゲイ・ポルーニンの肉体美
全身にタトゥーを纏う異端の天才ダンサー、セルゲイ・ポルーニン。ミステリアスな眼差しと危険な香りがアレクサンドルと重なって、まさにハマり役だ。ベッドシーンで惜しげもなく披露する鍛え上げられた裸体は、欲望と官能のオブジェと呼びたいほどの美しさ。肉体の圧倒的な力で、エレーヌのみならず観客も虜にする。
仏映画界期待の星が愛と官能を体現
レティシア・ドッシュは、『若い女』でリュミエール賞有望女優賞を受賞したフランス映画界期待の星。原作とは異なり、小学生の息子がいるシングルマザーに置き換えられたエレーヌを演じて、簡単に愛と官能に溺れるわけにいかない身ながらも欲望に抗えない女の陶酔と苦悩をリアルに体現して、実力を見せつける。
大人な恋を彩るパリの街並み
どこにいてもアレクサンドルのことしか考えられないエレーヌの心模様を映し出すのがパリの街。友人と『二十四時間の情事』を観にいく映画館クリスティーヌ・シネマ・クラブをはじめ、実在のスポットが数かず登場。なかでも、ラストシーンに登場するナポレオン・ホテルには、パリを訪れたときには足を運んでみたくなるはず。
発売中
『シンプルな情熱』
DVD：4,290円（税込）
映像特典：予告編／セルゲイ・ポルーニン特別予告編／
セルゲイ・ポルーニン特別インタビュー映像
発売元：セテラ・インターナショナル
販売元：ハピネット・メディアマーケティング
©2019L.FP.Les Films Pelléas-Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma-Versus production
