人気アメコミ系映画ライター・杉山すぴ豊さんが、アメコミ・ホラー・SFなど多様なジャンル映画の情報を"深い知識と深い愛"をもってお届けする本連載。今回は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』について日本語吹替版の裏話や、リピートして確認したいトリビア、劇中の名シーンについての想いをお届けします!
カバー画像:『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』大ヒット公開中 配給:ソニー・ピクチャーズ
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※本記事には映画の重大なネタバレが含まれています。
ご鑑賞になってからお読みください。

杉山すぴ豊

アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。

実は杉山すぴ豊、日本語吹替版監修しています!

画像: 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 大ヒット公開中 配給:ソニー・ピクチャーズ ©2021 CTMG. © & ™ 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
大ヒット公開中 配給:ソニー・ピクチャーズ

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の日本語吹替版ご覧になった方は、最後に提示される日本語版スタッフの中に、監修として“杉山すぴ豊”の名があるのを気づいていただけたでしょうか? そう、実は本作の吹替版の監修をさせていただきました。といっても僕がセリフを全部訳したとかそういうことではなくて、一度翻訳の方があげた台本をコミックの言い回し等からみてこの言い方がいいかどうかアドバイスするみたいなことです。

ただそもそも素晴らしい翻訳台本だったし、また担当されている方は歴代スパイダーマンやマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品を手掛けたベテランなので僕の出番はそんなにはなかったですが。

とはいえこの作品に関われてすごく光栄で自分の性格からしてもっと自慢したかったんですが(笑)、今回、本当に情報管理が厳しくて、事前に内容を喋るのはもちろん厳禁。さらに「内容を知っている」ということも公開されるまで一切言ってはならなかった。それぐらい秘密、言い換えればお楽しみが外に漏れないよう製作者たちは神経をとがらせていたのです。それだけの驚きと素晴らしさが詰まった作品でした。

気付けましたか!? 前号未公開のトリビア紹介!

というわけで『ノー・ウェイ・ホーム』の興奮、感動が止まらない、という方も多いと思います。まだ劇場では公開されているでしょうから、もう話してもいい、リピーターのためのトリビアをいくつかご紹介しましょう。

トム・ホランド版のスパイダーマンは劇中に登場する車のナンバープレートに隠しメッセージがあることが多い。例えば前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の時はニック・フューリーの運転する車のナンバープレートが“MTU83779”でした。これは1979年7月に発売されたMarvel Team-Up 83号に由来し、この号はニック・フューリーとスパイダーマンが共演するお話なんです。今回の『ノー・ウェイ・ホーム』ではドック・オクの登場シーンの車のナンバープレートが“63ASM-3”ですが、これは63年のTheAmazing Spider-Man 3号がドック・オク初登場号だからです。

また1228というナンバープレートも出てきますが、これはスパイダーマンの生みの親である故スタン・リー氏の誕生日が12月28日であり、彼へのオマージュでもあるのです。

また劇中登場する雑誌スタンドに並べられているPEOPLE誌の表紙が『スパイダーマン:ホームカミング』のヒロイン、リズの顔になっています。要はピーターがスパイダーマンとバレたことでPEOPLE誌がリズに関係者インタビューをした、という設定なんでしょうね。

MJが働いているドーナッツ屋さんPeter Pan Donut & Pastry ShopはNYに実在するお店です。ただ映画の撮影はジョージア州アトランタ(MCU作品は大抵ここで撮られています)だったので、店舗をリアルに再現して撮影したようです。お店といえばドクター・ストレンジの住所はMCUにおいて177A Bleecker Streetになっています。この住所はもちろんフィクションですが、実際にある233 Bleecker Streetという住所にはJOE’S PIZZAというピザ屋さんがあります。ここはサム・ライミ監督の『スパイダーマン2』(2004)でピーター・パーカーがバイトしていたお店。そうこのピザ屋さんも本当にあるのです。コロナが収まって、NYとかにも行けるようになったらこういう聖地めぐりしたいですね。

癒しと救いになった涙が止まらないあの場面

最後にこれはトリビアではないですが、海外のあるファンの方が言っていて僕も大きく頷いた話。3人のスパイダーマン=ピーターが集うシーンでアンドリュー・ガーフィールド版ピーターは“ピーター3”と呼ばれます。これは『ノー・ウェイ・ホーム』が見方を変えれば、作られることのなかったアンドリュー出演の『アメイジング・スパイダーマン3』だったからではないのか、と。

本作におけるMJ救出シーンは、『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)以来ピーターと共にファンがずっと抱えてきた哀しみへの最大の救い、癒しです。僕もあの場面を監修時に観た時、涙が止まらなくなってしまって仕事にはならなかったんです。

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