東京・ヒューマントラストシネマ渋谷にて2022年4 月29 日(金・祝)〜5 月12 日(木)の日程で開催される「シャンタル・アケルマン映画祭」(配給: マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム) のメインビジュアル、スケジュールが決定した。

トッド・ヘインズ、ガス・ヴァン・サント、ジョナス・メカスも愛し現代の映画作家に多大な影響を与えた傑作が、デジタルリマスター版で公開

1950 年にベルギーに生まれ、ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を観たことをきっかけに映画監督を志したシャンタル・アケルマン。25 歳の時に発表した、主婦の三日間の日常を淡々と描いた『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23 番地』で映画界に革命を起こし、ニューヨーク・タイムス紙には公開時「映画史上最も女性的な傑作」と高く評価された。女性たちの社会や日常での生き方を真摯に見つめた彼女の作品は今こそ観られるべき映画といえよう。
今回の映画祭では『ジャンヌ・ディエルマン~』ほか『私、あなた、彼、彼女』、『アンナの出会い』、『囚われの女』、『オルメイヤーの阿房宮』の5 作品がデジタルリマスター版で日本劇場初公開。完成したメインビジュアルではピンクを基調に、椅子に腰掛けたアケルマン監督自身の姿が大きくデザインされている。

【上映作品】

『私、あなた、彼、彼女』 Je Tu Il Elle 1974 年/ベルギー・フランス/モノクロ/86 分

画像1: © Chantal Akerman Foundation

© Chantal Akerman Foundation

アケルマン自身が演じる名もなき若い女がひとり、部屋で家具を動かし手紙を書き、裸で砂糖をむさぼる。部屋を出た彼女はトラック運転手と行動を共にし、訪れた家で女性と愛を交わす……。撮影時24 歳だったアケルマンによる“私”のポートレイト。

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23 番地』
Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce,1080 Bruxelles 1975 年/ベルギー/カラー/200 分

画像2: © Chantal Akerman Foundation

© Chantal Akerman Foundation

ジャンヌは思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしている。湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、 “平凡な”暮らしを続けているジャンヌだったが……。主婦のフラストレーションとディティールを汲み取った傑作。ジャンヌを演じるのは『去年マリエンバートで』(61)『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(72)のデルフィーヌ・セイリグ。

『アンナの出会い』 Les Rendez-vous d’Anna 1978 年/ベルギー・フランス・ドイツ/カラー/127 分

画像3: © Chantal Akerman Foundation

© Chantal Akerman Foundation

最新作のプロモーションのためにヨーロッパの都市を転々とする女流映画監督を描く、アケルマンの鋭い人間観察力が光る一本。常に孤独に彷徨い歩く主人公アンナの姿と、日常に溶け込みはしない断片的な空間と時間とを通して、アイデンティティや幸福の本質が絶妙な構成で描き出されている。

『囚われの女』 La Captive 2000 年/フランス/カラー/117 分

画像: © Corbis Sygma - Marthe Lemelle

© Corbis Sygma - Marthe Lemelle

マルセル・プルーストの「失われたときを求めて」の第五篇、「囚われの女」の大胆で自由な映像化。嫉妬に苛まれ、愛の苦悩に拘束される虜囚の境地をアケルマンは洗練された表現で描写する。ゴダールの『軽蔑』(63)ヒッチコックの『めまい』(58)をも想起させるこの傑作は公開年の「カイエ・デュ・シネマ」ベストテンで2 位に選ばれた。

『オルメイヤーの阿房宮』 La Folie Almayer 2011 年/ベルギー・フランス/カラー/127 分

画像4: © Chantal Akerman Foundation

© Chantal Akerman Foundation

『地獄の黙示録』(79)のもとになった「闇の奥」で知られるイギリスの作家ジョゼフ・コンラッドの処女小説を脚色。原作の持つ実存主義と家父長制という重苦しいテーマを孕みながらも、アジアの街並みを自在に歩き回る娘を横移動で捉えたカメラが素晴らしく、幻想的なまでに美しい。

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