<ルーマニアへ>
『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』
第71回ベルリン国際映画祭<金熊賞>を受賞したルーマニアの鬼才・ラドゥ・ジューデ監督の日本劇場初公開の注目の最新作。ルーマニア・ブカレストの有名校の教師であるエミは、夫とのプライベートセックスビデオが意図せずパソコンよりネットに流出。生徒や保護者の目に触れることとなり、保護者会のための事情説明に校長宅に向かう。
エミはブカレストの街をまるで漂流するかのようにショッピングモール、薬局、本屋、と歩みを止めずに進んでいく。彼女の抱える不安や苛立ちは世界が同時に経験したパンデミックの閉塞感そのもののよう。行き交う人々のみならず、街全体に漂う猥雑で、汚れ、怒りを孕んだ空気が徐々に膨れ上がっていく・・・。
ひとりの女性に降りかかった不運をいいことに他人が群がり明るみに出る人間の性、繰り返される愚行の歴史、留まることのないこの鬱憤を、ラドゥ・ジューデ監督は痛烈で皮肉めいたメッセージとともに軽やかに提示してみせる。タブーを打ち破る大論争コメディとなっている。
『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』
4月23日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー
配給:JAIHO
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<ロシア、旧ソビエト連邦へ>『インフル病みのペトロフ家』
妄想か現実か、現代ロシアの病か、コロナ禍の世界の予言なのか? ロシア演劇界の鬼才にして映画監督としても世界が注目するキリル・セレブレニコフ。(『LETOーレトー』)が強烈なブラックユーモアでロシア文学界でセンセーションを巻き起こしたベストセラー小説を映画化。2004年、ソ連崩壊後のロシア。
大都市エカテリンブルグでインフルエンザが流行する中、ペトロフは高熱にうなされ、妄想と現実の間をさまよっていた。やがて彼の妄想は、まだ国がソビエトだった頃の幼少期の記憶へと回帰していく。妄想と現実の狭間を彷徨う原作の世界観そのままに、2017年に国からの演劇予算横領の疑いで自宅軟禁状態となった監督自身が、軟禁という不条理な状況下で脚本を書き、闇に隠れて撮影したという。驚くべき長回しショット、めくるめく場面転換、ロシア社会への痛烈な風刺がないまぜになった一作。
『インフル病みのペトロフ家』
4月23日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開
配給:ムヴィオラ
<ウクライナへ>『ひまわり』
イタリアが誇る世界的巨匠ヴィットリオ・デ・シーカによる、涙あふれる悲しい愛の名作。2020年に50周年を記念しHDリストア版として復活し、ロシアのウクライナ侵攻を受けて2022年の今全国各地での緊急上映が行われている。
第二次世界大戦下、陽気なアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)と結婚したナポリ女のジョバンナ(ソフィア・ローレン)は、夫を戦争に行かせないために狂言芝居までするが、アントニオは地獄のソ連戦線に送られてしまう。終戦後も戻らない夫を探すために、ジョバンナはソ連に向かい夫の足跡を追う。しかし、広大なひまわり畑の果てに待っていたのは、美しいロシア娘と結婚し、子供に恵まれた幸せなアントニオの姿だった・・・・・・。
ウクライナの国家であるひまわり。本作で強い印象を残す広大なひまわり畑は、ウクライナの首都キエフから南へ500キロほど行ったへルソン州で撮影された。東西冷戦当時にヨーロッパの国がソ連で映画撮影をすることは珍しく、積極的に映画撮影に協力した政治的背景も興味深い。
『ひまわり 50周年HDレストア版』
全国各地で上映中
*詳しくはこちら
配給:アンプラグド