世界でも有数の岩壁や氷壁、数々の断崖絶壁を、命綱もつけず、たった独りで登る無謀なフリーソロという登山スタイルを貫いたマーク・アンドレ・ルクレールは、SNS社会に背を向けながらも、不可能とされていた数々の世界の山脈の難所に挑み、次々と新たな記録を打ち立てていく。だが、そんな偉業を成し遂げながらも、名声を求めない彼の性格から世間的な知名度はほぼ皆無――。
本作は、思わず目もくらむ、崩れ落ちそうな岩と氷の断崖絶壁をものともせず、命綱をつけずにたった独りで頂点を目指すアルピニストの姿が収められている。普段、なかなか見ることのできないような雄大な自然を背景に、体力と精神力の極限に挑むマーク。そんな彼の驚くべきフリーソロというクライミング・スタイルに、思わず手に汗握る作品だ。
スポーツクライミングが五輪種目となり、近年のクライマーへの注目度は上昇の一途をたどっている。SNSで積極的に発信したり、企業とのスポンサー契約を結ぶなど、現代のクライマーたちの活動、チャレンジは世間の注目を集めている。そんな中、本作で描かれるマークはそういった流行には目もくれず、SNSでのアピールにも無関心。まさに当時の彼は“知る人ぞ知る”存在だった。
しかし本物は本物を知る。そんな世界的には完全に無名だったマークに、絶大なるリスペクトを表明したのが、第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を獲得した『フリーソロ』で知られる世界的クライマー、アレックス・オノルドだった。アレックス自身も命綱なし、安全装置もなし、難易度の高い岩壁を、自分の手と足だけで登る危険なクライミングスタイルで、ヨセミテ国立公園エル・キャピタンでのフリークライミングを成功させたほか、パタゴニアのフィッツ・ロイの完全縦走を行うなど、数々の偉業を成し遂げ、天才の名を欲しいままにしてきた人物。常に死の危険と隣り合わせとなる状況では、少しの妥協、ミスが命取りに。世間一般から見ればなんとも命知らずで、無謀なチャレンジだと言われてしまいそうだが、それでも自分のスタイルを貫き、数々のビッグウォールを攻略してきたアレックス。そんな彼をして「彼はクレイジー」と言わしめたマークとはいったいどんな人物なのか――?
誰も攻略していない難易度の高い絶壁を、誰に注目されることなく、“ただ自分が登りたい”というだけのモチベーションで登り続けたマークの純粋さ、求道的な姿勢には、本物を知る男だからこそ、深く共鳴するものがあったのだといえる。
本編中では、アレックス・オノルドはマーク・アンドレ・ルクレールに対して以下のように述べている。「彼は貪欲なクライマーだが、名声には興味がないんだ。誰も知らない崖も登る。僕はジムで練習したし、スポーツとして登っている。しかし、彼はスピリチュアルなレベルというか、山の冒険をただ純粋に楽しんでいるんだ。その点は、心から尊敬している。そんなマークだからこそ、イカれた挑戦をし続けることができるんだ」
規格外の冒険家マーク・アンドレ・ルクレールとは? そして名もなきアルピニストはなぜ伝説となったのか――。この夏、私たちは知られざる天才クライマー、マーク・アンドレ・ルクレールの新たな伝説を目撃する。
『アルピニスト』
7/8(金) TOHOシネマズ シャンテ 他全国公開
配給:パルコ ユニバーサル映画
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