2022年6月24日から好評公開中の『ベイビー・ブローカー』。この公開を記念して、主演のソン・ガンホほか、カン・ドンウォン、イ・ジウン、イ・ジュヨンら主要キャストが揃って来日し、6月26日、都内の劇場で是枝裕和監督と共に舞台挨拶を行った。

ソン・ガンホ 「国を越えて、誰にとっても共感できる温かい物語」

ソン・ガンホは、『パラサイト 半地下の家族』でのプロモーション以来約2年ぶり、カン・ドンウォンは『ゴールデンスランバー』のプロモーション以来約3年ぶり、そしてイ・ジウンとイ・ジュヨンの2人は、映画のプロモーションとしての来日は今回が初めて。
この日は日本のメディアはもちろん、韓国からも多くのメディアが取材に訪れ、舞台挨拶には約500人の観客が来場。さらに映画館の前にも約200人ものファンが詰めかけるほどの人気ぶり。
それぞれのキャストが日本のファンに向けて日本語で挨拶したり、撮影で培われた仲の良さが伝わるトークも展開するなど、終始和気あいあいとしたイベントとなった。

画像: ソン・ガンホ

ソン・ガンホ

大きな拍手に迎えられた4人。まずソン・ガンホは「こんにちは、ソン・ガンホです」と日本語で挨拶し、「およそ2年ぶりにみなさんの前でこうしてご挨拶させていただき光栄です。尊敬する是枝監督の子の温かい物語をお届けできるのはうれしいです。この映画は日本と韓国に限った特別な話ではなく、私たちが生きている中で感じる様々なことを伝えている映画だと思います」と語った。

カン・ドンウォンも「こんにちは、お久しぶりです。カン・ドンウォンです。来ていただいてありがとうございます」と日本語でまず挨拶。「本当に久しぶりに日本にこられてうれしい。映画を楽しんでください」とファンにアピール。

イ・ジウンも日本語で「こんにちは、IUです」と挨拶し「昨日空港にたくさんのファンのみなさんが来てくださり歓迎していただきました。多くの人がもうこの映画をご覧になっていて『よかったよ』という言葉をかけていただけて、とても気分がいいです。この映画に関心を持っていただいて感謝します」と笑顔で語った。

イ・ジュヨンも3同じく日本語で「こんにちは。私はイ・ジュヨンです」と挨拶。
「みなさんにお会いできる機会を与えていただいて本当に嬉しいです。昨日は、監督と俳優のみなさんとおいしい日本料理も味わい、とても意義深い時間を過ごしています」と語った。

さらに是枝監督は「15年ほど前に釜山の映画祭で『韓国人の俳優で映画を撮るなら誰と仕事したいですか?』と聞かれてソン・ガンホさんと答えたんです、その後、エレベーターを待っていたら扉が開いてガンホさんがいたんですね。その偶然を何かの縁があるんだろうと思っていたら、こういう形で今度の作品に結実して、日本公開をこうしてキャストと迎えられたことを嬉しく思っています」と意外な縁を語ってくれた。

まずはカンヌでの男優賞受賞について感想を聞かれたガンホは「名前が発表されるまで、誰が何の賞を取るかわからないので、とても緊張していましたが、名前を呼ばれ壇上で監督と共演者に感謝しますと言ったことは覚えています」と振り返った。
またこのブローカー役をオファーされたときのことも「約6年前でしたが、釜山映画祭で初めて話を伺ったときは、是枝監督の作品は全て拝見するほどファンでしたし、監督の新作に出られるということでとてもワクワクしました。『どのような役でもやらせていただきたいです。光栄です』とお伝えしました」と明かした。
すると監督は「映画の中で、ガンホさんが初めて登場するシーンをまず思いつき、そこだけ書いたんです。その時は3~4枚の短いストーリーでした。ただその時点のプロットにソン・ガンホさんとカン・ドンウォンさんとペ・ドゥナさんの名前は書いていたんです」と明かした。

画像: カン・ドンウォン

カン・ドンウォン

カン・ドンウォンも「監督の作品は大好きで、いつかお会いして、仕事をご一緒できればと思っていましたが、実際にお会いしたら、現場でもすごく優しくて最高の監督で、本当に素晴しい経験になりました」と語る。最初の印象と違った部分は? と聞かれると「特に印象が変わった点はありません。いつも変わらず優しく、現場で楽しそうに撮影されていて、撮影が終わる頃はとても寂しかった記憶があります」と振り返った。
ちなみに、カン・ドンウォンは、韓国で誕生日(6月6日)を迎えた是枝監督が一人でいたのでお祝いしたそうで「良いことなのか悪いことなのか…(笑)? 監督がひとりで誕生日を過ごすようだと聞いて、お食事に誘いました」と明かすと、是枝監督は「実は今年も2年連続でドンウォンさんとソウルで誕生日を祝いました。よかったです(笑)」と照れ笑い。

赤ちゃんを赤ちゃんポストに預ける母親という役を務めたイ・ジウンは「これまでドラマに出演したことはありましたが、長編映画は初めてで、チャレンジでした。私が演じたソヨンは、様々な設定があってキャラクターを説明する修飾語がいっぱいある人物なんです。この設定を立体的に表現できるようにと監督と何度も話し合いました」と苦労を語った。
彼らを追う刑事を演じたイ・ジュヨンは「私も是枝監督の大ファンで、先輩の俳優のみなさん、普段から気になっていた俳優さんとお仕事することができたので、現場で多くのことを学び、感じるという姿勢で臨んで素晴らしい経験を積めたと思います。私にとって長く忘れられない思い出になる作品だなと思います」と噛みしめた。

監督は、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナの3人は以前から面識があり、プロットの時点であて書きをしたことを明かしたが、イ・ジウンとイ・ジュヨンの2人は「コロナ禍で家で韓国ドラマにハマっていたとき、そこで見て本当に印象に残った2人にお声がけしました」と説明。
「僕はにわかファンなのに昔からのファンのみなさんには申し訳ないです。夢が叶って、理想的な、思いどおりのキャスティングが実現して、僕が一番幸せな現場でした」とほほ笑んだ。

イ・ジウンはこの言葉に「実は、監督が私のことを知る前に、一度、韓国で監督を見かけたことがあったんですよ。その時、私は監督のファンでしたが、監督は私のことを知らない状況だったので、挨拶出来ずに通り過ぎました(笑)。それから1年以上経って、監督の作品に参加できて、私の音楽も知ってくれているということは、すごく不思議な気分です」とかつてのニアミスを明かした。

画像: イ・ジウン(IU)

イ・ジウン(IU)

イ・ジュヨンは「私は大学にいて、まだ映画のことを学んでいた頃に、監督の作品を見に行くような普通の学生でした。数年たって、監督が私の出演した作品を見て、私という女優を知っているということ自体、不思議な経験でありすごく幸せです」と自分の経緯を思い起こした。

今回の来日にあわせて多くのファンが空港で彼らを出迎えたが、ソン・ガンホは「成田空港に降りた時、イ・ジウンさんは日本でも人気があり、多くのファンが来るだろうと話に聞いていましたが、実際に100人を超えるファンが集まったそうです。でもカン・ドンウォンさんを見るために集まったのは3人だったそうです。ちなみに、私は5人来てくださっていました(笑)。とても気分が良い1日になりました!」とマウントを取り、ドンウォンが苦笑する場面も。
ドンウォンは「ファンの皆さん、がんばってください」と笑っていたが、さらにガンホは「一つ彼の言い訳を披露すると、彼はパリからの便で来たので、みんな知らなかったのかもしれないということです」とさらに笑わせた。
これを見た監督は「現場でもこんな感じでした。僕はこの雰囲気が大好きなんです」と笑顔を見せた。

最後の挨拶でキャストを代表してソン・ガンホは「この映画は、日本の監督と韓国のキャストが一緒に作ったということより、日本人であっても、韓国人であっても、私たちが生きている社会の中の私たちの姿、私たちの隣人の姿、また人生の価値が描かれた作品です。国を越えて、誰にとっても共感できる温かい物語です。みなさんにもその思いを受け取って、共感していただける、そんな意味ある時間として記憶されてほしいと願っています。ありがとうございました」とまとめて、会場から拍手が送られた。

最後の締めに是枝監督は「6年前に書いたプロットは実はすごくシンプルな話でしたが、映画を撮るために韓国に渡って、赤ちゃんポストの周辺の人たちへの取材を重ねたのが、とても良かったなと思っています。取材をすればするほど、この物語が人間の命をどう考えるべきか? それを登場人物たちが悩む話だなと――ちょっとずつ、最初に思い描いた話から変わっていきました。撮影を始めてからも変わっていくというプロセスを経て、今日、みなさんに観ていただく作品になってます。僕の映画はいつもそうかもしれませんが、明快な答えが最後に待っているというより、登場人物たちと同じように見た方たちも旅を続けながら、一人の赤ちゃんの運命を一緒に考えていただけたら嬉しいです」とアピールした。

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