成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。
デビュー当時から圧倒的な美形ぶりが注目され、早々にスターダムに
ジュード・ロウを初めて見たのは『オスカー・ワイルド』(1997)でアイルランドの詩人・戯曲家、オスカー・ワイルドが一目惚れする貴族の子息、「ボジー」を演じた時。文字通り、「水も滴る美男子」ぶりがスクリーンからこぼれ落ちそうなほどだった。
そして実際に当人に会ったのは『ガタカ』(1997)の時。超ド級美男子の彼が車椅子生活を送る青年を演じると、美しさの効果が上がるという点を計算しての配役だった。今でもこの映画を見る度に階段を這い登るジュードの妖しい迫力に圧倒される。
インタビューの時、もちろん「ヘイ、ジュード!」と呼びかけたら、その挨拶には慣れきっているはずだろうが、嬉しそうに笑顔で応えてくれた。
「JUDE THE OBSCURE(日陰者ジュード)」というトーマス・ハーディの小説と、ザ・ビートルズの歌(「ヘイ・ジュード」)の両方から名付けられたそうだが「日陰者」というあだ名をつけられたのが何ともおかしい。
正統派美男がごまんといる英国映画界でもずば抜けての眉目秀麗故に早々とスターになり、次第にルックスに頼らない演技力も高く評価されて、今では舞台、映画、TVシリーズの全部門で大活躍。
新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)については、
「ダンブルドアはおそらく少年時代から魔術の才能がピカイチだったからリーダーシップにあふれているものの、どこかで自分の生き方に疑問を持っていて、罪の意識も感じている。だからこそ人々に敬われているのだと思う。その上、いたずらっ子の性格も覗けるし、ユーモアのセンスもたっぷりだろう。
『ハリー・ポッター』シリーズでダンブルドアを演じたリチャード・ハリスとマイケル・ガンボンの裾にぶら下がって、先達に恥ずかしくないように役作りに努力している。映画作り自体が魔術の世界だから観客達が眼を見張るような作品にしたいものね」と言っている。
コロナ禍で家にいた時は人生を振り返る至極貴重な時間を過ごすことができた
ジュードはまず全世界の俳優内ではピカイチのハンサムながら、彼の強みは「生まれつきだから、見かけは別にどうでも良い」という態度で、全く意識していないところだろう。カメラを向けても、照明だとか、アングルだとか、メークなどに全くこだわらず、あっけらかんとしている。
「コロナ禍のために、つい最近生まれた赤ん坊を含めて6人の子供たちとの濃い時間が持てたし、家の中の整理をしたり、古いドアを直したり、かつてない程の愛情を庭の手入れに注いでいる。藤棚をすっきり刈り込んだし、盆栽も生き返ったし。この時期、僕はね、人生を振り返って深呼吸をするという至極貴重な時間を過ごすことが出来た。
6人もの子供を持つなんて夢にも思ってなかったが、実は僕の両親はふたりとも孤児で非常に寂しい思いをして育っているから、僕はその穴を埋めるためにもロウ一族の子孫繁盛に努力をしているというわけ。それに、小さい赤ん坊がそばにいると僕自身も若返るという恩恵もあるしね。
役を選ぶ基準? 同じような役は繰り返さない、少しばかり恐くなるような、脅異を感じるような役を選ぶことにしている。非合理で一笑に付してしまうような状況下で逃げ惑う人間というような役に魅力を感じるね。
それからね、演技って、70パーセントは、相手の話を聴いている時に実力が判明するという事。自分で叫び狂っている時は演技というより、単なる反応だと思うんだ」
50歳になっても変わらないボーイッシュな表情で淡々と語るジュードだった。
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