「電波少年」シリーズでは人気バラエティー番組を演出・出演。欽ちゃんのドキュメンタリー映画では監督も務めるなど、今なお幅広い活躍をしている、伝説の「Tプロデューサー(T部長)」こと土屋敏男さんが、幾多のTVドラマから映画を紐解くおすすめのお話などや予測不可能な未知なお話等、テレビと映画がこれからどうなっていくのか? を中心にさらに熱く、紹介していきます。今回は人気ドラマ「THIS IS US/ディス・イズ・アス」について、必見です。
カバー画像:「THIS IS US /ディス・イズ・アス」シーズン1〜5 ディズニープラスのスターで配信中 © 2022 20th Television.

土屋 敏男
(日本テレビ放送網株式会社 社長室R&Dラボ シニアクリエイター)

静岡県静岡市生まれ。一橋大学社会学部卒。「元気が出るテレビ」「ウッチャンナンチャンのウリナリ!」「とんねるずの生ダラ!」などバラエティ番組を演出。「電波少年」シリーズではTプロデューサー・T部長として出演。現「電波少年W」企画・演出・出演。

アメリカの人気ドラマ「THIS IS US/ディス・イズ・アス」にハマった

実は日本のテレビをほとんど見ない。Netflix、ディズニープラス、Amazon Prime Video、U- NEXT、Hulu、AppleTV+ と契約していて映画やドキュメンタリー、シリーズドラマをほぼ毎晩の様に見ている。

今年初めからハマったのは「THIS IS US/ディス・イズ・アス」。何となく面白そうかなとあまり期待もせずにシーズン1の#1を見た。そしてその初回のラストの見事さにどハマりした。これは見続けようと決め改めてこれはどのくらい話数があるのかそこで確認して驚いた!

画像: 「THIS IS US/ディス・イズ・アス」シーズン1〜5 ディズニープラスのスターで配信中 © 2022 20th Television.

「THIS IS US/ディス・イズ・アス」シーズン1〜5 ディズニープラスのスターで配信中 

© 2022 20th Television.

「THIS IS US/ディス・イズ・アス」
これはあなたの物語―全米で記録的大ヒットを続ける人気のヒューマンドラマ。誕生日が同じ36歳の男女3人の恋愛や家族、仕事を現在・過去・未来を交差させて描く。第69回エミー賞では2部門を受賞した話題作。

NBC放送の有名人気ドラマでシーズン1〜5まであってシーズン4までそれぞれ18話。シーズン5だけ16話。つまり18×4+16=88話! それぞれ約42分あるから3,696分=約62時間!!!!

正直「そんなに!」とビビりましたが第1回があまりに面白かったのでゆるゆると見始めた。夕食後1本か2本。だから週に平均して5本くらい。88本を見終わるまで18週。約4ヶ月ほぼ毎晩のように見続け先日最新作シーズン5の#16までついに見終わった。

ちなみにこの「THIS IS US」のUSは私たちという意味とアメリカ自身のことという意味があるらしくアメリカが持つ問題とそのDNAが見事にストーリーの中に組み込まれている。アメリカではちょうど今シーズン6を放送中で5月末に最終回を迎えたらしい。そしてこれが〝ファイナルシーズン〞と銘打たれているらしいのだ。

最終シーズン! 早く見たいなあ!

とはここまで88本見ているのだから当然そうは思うのだが一方で感じたことのない「ロス怖れ」という感情も持っていることに気がついた。

日本で人気の連続ドラマが終わるとよく言われる「〇〇ロス」の重いやつに罹ってしまったのだ。だから最終シーズンを見たら「THIS IS US ロス」が間違いなく自分に起こることも予想される。だから最終シーズンを見たくない気持ちがあるのだ。

ハマったドラマシリーズがあると次見るシリーズが決められない

そしてこの「THIS IS US」にどハマりした後にもう一つの現象が自分に起きた。

次が選べない!

自分の中で「ハードルが上がり」この「THIS IS US」クラスのハマり方を求めてしまう。どのドラマを見ても物足りない気がする。いや本当は「THIS IS US」88話見続けてその長い時間による特別な思い入れが生まれてしまっているから新しく見るドラマがどれも物足りないのだろう。

しかしこの現象は僕だけではないようなのだ。SVODで何かすごくハマったコンテンツがあると次が選べない現象は確かにあるようだ。面白いものに出会うと次が選べなくなる現象を何と名付ければいいのか?

これを今までの地上波テレビドラマで起きていた「〇〇ロス」と比較すると面白いことに気がつく。例えばフジテレビの「月9」だと「ロンバケ」にハマって終わると「ロンバケロス」になるだろうがその次のドラマをフジテレビが始めれば文句を言いながらも次のものを見る。

NHKの朝ドラ。一つ前の「カムカムエブリバディ」がかなり人気で終わった時は「カムカムロス」と言われていたが「ちむどんどん」が始まって文句を言いながらもかなりの人が見続けている。これはNHKという局と朝8時「朝ドラ」というところに依存しているから否応なく「〇〇ロス」は時間が流れていくことで薄れるようにできている。

しかし「THIS IS US」はアメリカでは連ドラだが日本ではAmazon Prime Video かディズニープラスで見る。だからプラットフォームに対する習慣も放送時間の習慣もない。コンテンツそのものに対する依存、思い入れなので誰も次を提供してくれない。次は自分で探すしかない。だからこの「THIS IS US」の本質的な面白さを理解したリコメンドが必要なのにプラットフォームはしてくれない。

プラットフォームをまたがった高度な検索能力を持ったAIエンジンが必要だ。

配信プラットフォームはこのシリーズを全部見たことが履歴で残っているから「『THIS IS US』を見た方へ」というリコメンドで数作品提示してくるのだがどれもピンとこない。他で契約しているNetflix、ディズニープラス、U-NEXT、Hulu、にはきっとあるはずだ!と思ってしまう。

それを探したい! リコメンドして欲しい! しかし視聴履歴はないからこれに由来するリコメンドはされない。見たい傾向、要素ははっきりしているはずなのにプラットフォームをまたがる履歴がないので探しようもリコメンドもされないという現象が起きている。

これからも各プラットフォームは新作を次々と作り続ける。でもユーザーに対しての最適解は益々得られにくくなっていくという現象が起きる。ひょっとして「THIS IS US」にハマった人が次にハマるものは1980年代にスウェーデンで作られた連続ドラマかもしれないのだ。

ある人のコンテンツを摂取する情報を分析して古今東西の全てのコンテンツを網羅して正確にリコメンドしてくれるAIエンジンを搭載したウェブサービス。これがマジでこれから必要になる。誰か作ってくれないか? と書いておいたらGAFAのどっかが作ってくれないかな?

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