「TikTok(ティックトック)」が、第75回カンヌ国際映画祭のオフィシャルパートナーとしてグローバルで開催した「#TikTokShortFilm コンペティション」のグランプリに、東京を拠点に活動する長野県出身の本木真武太さんの作品「木って切っていいの?」が選出。44の国と地域から多くのクリエイターが参加したコンペティションを勝ち抜き、5月20日(金)に行われたカンヌ国際映画祭の表彰式に参加した。今回スクリーンオンラインでは本木さんにインタビューを実施。作品誕生の背景や、映画監督を目指すきっかけ、今後のチャレンジについてなどたっぷりと話をうかがった。

“映画監督をめざしたきっかけは『アルマゲドン』”

―まずは受賞おめでとうございます。受賞されていかがですか?

嬉しいという言葉につきます。受賞までの間には、生計を立てられずに映画監督を諦めるという選択肢もありました。ですが、たくさんの方々、特に家族に支えられたことで諦めずにここまで来れたので、感慨深さと光栄な気持ち両方でいっぱいです。

―カンヌ国際映画祭の現場はいかがでした?

画像: 後列中央が本木真武太さん 提供:TikTok Japan

後列中央が本木真武太さん 提供:TikTok Japan

大きな映画祭の舞台でレッドカーペットを歩くことは夢でしたし、映画監督を志した10歳の頃からカンヌを歩くことに憧れていたので、その機会をこんなに早くいただけたことが嬉しかったです。実際のカンヌの街は、朝方の4時くらいまで賑わっていて、眠れないぐらい騒がしかったですね(笑)。レッドカーペットがある劇場は招待客しか入れない場所だったので、そこを歩けるだけでも嬉しかったですが、「#TikTokShortFilmコンペティション」のグランプリとしてVIPな扱いをしていただけたことにも感動しました。

―幼い頃から映画監督を目指されていたとのことですが、きっかけになった作品や監督はありますか。

きっかけは、カナダに住んでいた際に映画館で観た『アルマゲドン』ですね。当時は10歳で英語も分からなかったのですが涙を流すほど衝撃を受けて「こういう映画を作りたい」と思ったんです。大人になった今でも変わらずに同じ気持ちを持ち続けています。

プラットフォームを意識し、あえてツッコミどころを散りばめた

―今回の作品、テーマがとてもユニークです。「桶職人」を題材にしたきっかけは何だったのでしょうか。

実は動画で桶職人を演じているのが友人なんです。彼のおじいちゃんが本物の桶職人だったんです。大きな木桶や風呂桶を作る職人さんで、実際に作った物を見せてもらった際にとても感動しました。熱膨張などを計算した職人技や、技術が昔から受け継がれていることに魅了されて、「これは絶対動画にしたい」と思いました。日本人ですらあまり知らないことですし、海外の人々はより興味を持ってくれるのではないかと思ったんです。

ですが、友人のおじいちゃんが亡くなってしまったんです。すごく残念でしたが、そこから友人が桶づくりを始めたんです。彼が立派な桶を作れる段階になった時に、彼で作品を撮れると思ったんです。当時、苦労話とともに木の仕入れ先や環境問題についても話を聞いていたので、ただ工程を追うだけでなくメッセージも込めた作品にできたらいいなと考えていたところ、良いタイミングで今回のコンペティションを知りました。「このタイミングしかない!」と。

世界的なTikTokクリエイターであるカビーに桶をプレゼント 提供:TikTok Japan

―以前から考えていたところで、今回のコンペティションの開催があったんですね。作品で気になったのですが、監督が演じている通行人が「木って切っていいの?」と環境問題への疑問を投げかけますが、彼はレジ袋をぶら下げていますよね。

そうなんです。「つっこまれる要素」は意図的に入れています。今回30秒から3分という尺の規定があり、環境問題にどうやってアプローチしていくかがチャレンジでした。説明的になるとテンポの良い動画に慣れ親しんでいるTikTokユーザーに合わないので、シンプルにしながらも伝えたい部分は伝えたいなと。TikTokはコメント欄でユーザー同士の交流があるのも素敵だと思っていたので、動画を観た人が意見交流して、環境のことにもっと深く興味を持ってもらえたらと思ったんです。レジ袋もそうですし、木串を使ったみたらし団子を食べていたりとか、ボンドではなくお米から作った糊を使ってもらったりと、ちょっとずつ「つっこまれる要素」を散りばめて、最低限のセリフで伝えたいことを喋らす構成の脚本にしているんです。

―あえて色々と散りばめていたんですね。環境問題にはもともと関心をお持ちでしたか。

長野県の下諏訪町という森や川や湖がある小さな町で生まれ育ちまして、山菜やキノコを採ったり、川でニジマスを捕まえたり、キャンプしたりして、小さな頃から命の尊さや自然の素晴らしさを肌で感じながら育ちました。当時は環境問題を意識していたわけではありませんが、そうした幼少期の経験が「美しい」と感じるもののベースになったんです。自分が好きなものって「守ろう」という気持ちになりますよね。「またこの海で釣りができたらいいな」とか。「守ろう」というところから環境問題を意識するようになっていきましたね。

長編映画へのチャレンジにも期待!

―今後のお話についても聞かせて下さい。先ほど『アルマゲドン』の話がありましたが、長編映画にもチャレンジされたいですか?

挑戦したい気持ちは物凄くありますね!ハリウッド映画を観て映画監督を志すようになったので、世界中の人に自分の作品を観てもらいたいです。今回レッドカーペットを歩いた際にも、長編映画を撮ってまたここを歩きたいなとも思いました。世界に向けた長編作品を作りたいですね。

他の受賞者とともに記念撮影 ©pierremouton

縦型動画や縦型映画はまだ歴史の浅い分野ですが、大きな可能性や未来が詰まっているプラットフォームだと思っています。自分としては縦型映画や縦型動画のパイオニアと思ってもらいたい気持ちもありますね。歴史あるカンヌ国際映画祭がTikTokとパートナーシップを結んだことは、素敵だなと思っています。先駆者たちが築いてきたものへの尊敬があった上で、新しいことにどんどんチャレンジしていくという。

今回自分が作った作品も、先人の知恵を使って現代に合う物を作っていく内容です。どんどん変わっていく時代に合わせて映画業界を盛り上げていけるような中心人物の一人になれたらと思いますね。また、僕のように無名でも諦めずに続けていくことで、必ず結果が出ることや、見ている人は見てくれているから視野を広く持つこと、頑張って一緒に業界を盛り上げこうというメッセージを若い人たちや同年代の仲間たちに伝えていけたらと思います。

―心強いです。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

©︎LANG PICTURES

PROFILE
本木真武太(もときまぶた)

東京を拠点に活動する長野県出身の映画監督・ビデオグラファー。合同会社LANG PICTURES代表。

This article is a sponsored article by
''.