ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『灼熱の魂』よりバス襲撃の果てに待つ悲劇を収めた本編映像が公開

襲撃を乗り越えた主人公を待つ更なる悲劇･･････

本作は、『DUNE/デューン 砂の惑星』『ブレードランナー 2049』『メッセージ』などハリウッドで最も注目される監督のひとりとなったドゥニ・ヴィルヌーヴの出世作となったヒューマン・ミステリー。2011年に公開されるや世界を驚愕させ、第83回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート、カナダ版アカデミー賞であるジニー賞で作品賞・監督賞・主演女優賞など8部門独占を果たしたほか、30か国以上の映画祭で上映され高い評価を獲得した。

主人公ナワルは、ある日プールサイドで原因不明の放心状態に陥り、そのまま病院で帰らぬ人に。ナワルは子どもである双子の姉弟に、不可解な内容の遺言を残していた。姉弟は遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏むことになる。本作は、ナワルの呪われた人生の軌跡を描き出す回想と、子どもたちがそれを少しずつ紐解いていく現在を交錯させながら描いていく。

原作はレバノン出身の劇作家ワジティ・ムアワッドによる戯曲「Incendies」。民族や宗教間の紛争、社会と人間の不寛容がもたらす血塗られた歴史を背景に、その理不尽な暴力の渦中にのみ込まれていった女性ナワル・マルワンの魂の旅を、胸を引き裂かれるほどに鮮烈に紡いでいく。

今回公開となったのは、主人公女性が巻き込まれる言葉を失う襲撃事件の果てを捉えた、衝撃の本編映像。

若かりし頃のナワルは、あることが原因で生まれ育った村を追われ、愛する恋人との間に出来た子どもとも引き離されていた。再出発のために都会の大学で勉学に励んでいたある日、キリスト教徒とイスラム教徒の対立が激化し、ついに本格的な内戦が勃発。故郷の村も内戦に巻き込まれたことを知り、生き別れた息子を捜すため故郷に向かう。

この本編映像が描き出すのは、本作のメインビジュアルにも採用されている、ある襲撃事件の果てを捉えた余りにも衝撃的なシーン。ナワルはイスラム教徒を装い彼らのバスに乗り込むが、対立していたキリスト教系武装勢力によりバスは凄まじい一斉射撃を受ける。辛くも射撃から逃れたナワルが起き上がると、他に生き残ったのはひとりの女性とその幼い娘だけだった。声を殺して見つめ合うふたりの“母親”。バスにはガソリンが撒かれ、3人の命は風前の灯火だった。ナワルは外していた十字架を掲げ、「私はキリスト教徒よ！」と叫ぶ。そして、幼い少女だけでも助けようと無理矢理母親から引きはがす。涙をこらえて母親はナワルに娘を託すが･･････。

本編冒頭映像も公開中

静寂でありながらも強い印象を残すこのオープニングの孤児院の場面は、原作の戯曲にはない本作オリジナルのシーン。脚本も手掛けたヴィルヌーヴ監督が、原作者ムアワッド氏に映画化の交渉をするために真っ先に書いた場面だという。この映像で使用されている楽曲は、レディオヘッドが2001年に発表した「You And Whose Army?」。監督は、強い怒りと静けさが共存するこの楽曲を使用したいと当初から考えていたという。想像を絶する数奇な人生を生きたナワルの物語へと観る者をいざなうこの曲は、劇中の別の重要なシーンでも使用されているので、ぜひ映画館で確認してほしい。

『灼熱の魂』デジタル・リマスター版
8月12日 (金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他 全国順次公開

監督・脚本：ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演：ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー＝プーラン、マキシム・ゴーデットほか
原作：ワジディ・ムアワッド
挿入歌：レディオヘッド
配給：アルバトロス・フィルム
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