“ヌーヴェル・ヴァーグの正統な後継者”
ロベール・ブレッソン、ジャン=リュック・ゴダール、ジャック・ドゥミ、フランワ・トリュフォーら映画史に燦然と輝くフランス映画の巨匠たちの助監督を務めたクロード・ミレール。1942年2月20日、パリに生まれたミレールは、多くの巨匠を輩出する名門映画学校IDHEC(フランス高等映画学院、現FEMIS)で映画を学ぶ。卒業後、マルセル・カルネ監督『マンハッタンの哀愁』(1965)の助監督として映画界入り。以降、ロベール・ブレッソン監督『バルタザールどこへ行く』(1966)、ジャン=リュック・ゴダール監督『ウィークエンド』(1967)、ジャック・ドゥミ監督『ロシュフォールの恋人たち』(1967)などの助監督を経て、『暗くなるまでこの恋を』(1969)から『アメリカの夜』(1973)までのフランソワ・トリュフォー作品の製作主任を務めた。
映画監督としては、34歳のときに『いちばん上手い歩きかた』(1976/原題:LE MEILEURE FACON DE MARCHER/日本未公開)で長編監督デビュー、セザール賞6部門(主演男優賞、監督賞、作品賞など)にノミネートされた。後に『アンダー・サスピション』としてリメイクされることになる尋問サスペンス『勾留』(1981/原題:GARDE À VUE/日本未公開)や、当時14歳のシャルロット・ゲンズブールを主演に『なまいきシャルロット』(1985)を撮り、シャルロットはデビュー作にして史上最年少でセザール賞の有望若手女優賞を受賞することとなる。その後、トリュフォーの遺稿シナリオをもとに撮影した『小さな泥棒』(1988)、ロマーヌ・ボーランジェを主演に迎えた『伴奏者』(1992)、フィリップ・グランベールによるベストセラー小説をセシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリックといった当時の若手実力派を揃えて映画化した『ある秘密』(2007)などがある。
“ヌーヴェル・ヴァーグの正統な後継者”と呼ばれるミレールは、巧みな演出術で、俳優たちの魅力を最大限に引き出した。とりわけ好んで撮ったのは、『なまいきシャルロット』に代表される、繊細でありながらエネルギッシュに生きる若者の心情を描いたドラマ、そして『勾留』に代表される、人間の心の奥に潜む闇の部分を描いたサスペンス。状況によって揺れ動く人間の心理を独自の作家性で描きながらも、観客との共感を常に意識し映画を作り上げてきた彼は、短編を含む20本の作品を世に残し、2012年に70歳で生涯を閉じた。
このたびの特集上映では、『なまいきシャルロット』ほか本邦劇場初公開となる作品を含む4本をHDリマスター版で上映。映画を誰よりも知り尽くし、それを手中にしたミレールの映画作家としての偉業を振り返る。
このたび解禁となったポスタービジュアルは、ミレール監督の代表作『なまいきシャルロット』の女優シャルロット・ゲンズブールが見せる魅力的な表情のカットを使用。デザインを担当したのは、『君の名前で僕を呼んで』『わたしは最悪。』などのアートワークを手がけた石井勇一。赤とブルーの組み合わせが鮮烈な印象を与え、普遍的な魅力を湛えている。
<生誕80周年記念 クロード・ミレール映画祭>
◆開催期間: 2022年9月23日(金・祝)~10月13日(木)
◆会場: 新宿シネマカリテ
◆上映予定作品: ※作品の詳細については8月下旬に発表。
『なまいきシャルロット』 原題:L’EFFRONTEE 1985年/フランス/96分
『勾留』 原題:GARDE À VUE 1981年/フランス/84分 ★日本劇場初公開
『伴奏者』 原題:L' ACCOMPAGNATRICE 1992年/フランス/107分
『ある秘密』 原題:UN SECRET 2007年/フランス/110分
◆主催・配給:ノーム
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