カバー画像:Photo by Albert L. Ortega/Getty Images
※フェーズ5以降の作品タイトルは原題です。
杉山すぴ豊
アメキャラ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
【注目】コミコンで新たに発表されたMCU主要情報まとめ
- 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』をもってMCUフェーズ4が終了
- 『アベンジャーズ』シリーズの最新作2作がどちらも2025年に公開
- MCUフェーズ5~6の作品の公開・配信時期が一挙発表
- MCUフェーズ4~6の総称は“マルチバース・サーガ”(フェーズ1〜3は「インフィニティ・サーガ」)
一番のハイライトは〝フェーズ6〞について発表されたこと
3年ぶりリアル開催のサンディエゴ・コミコンに参加しました。最大の目的の一つがそこの大会場ホールHで行われたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のパネル/プレゼンテーション! その内容については日本のメディアでも報じられていますが、ここではそれらが発表された時のファンの熱狂ぶりを交えながら、そこから読み取れる今後のMCUについて僕なりに分析してみたいと思います。
今回のMCUのパネル、やはり一番のハイライトはマーベル・スタジオの社長でプロデューサーであるケヴィン・ファイギの口からフェーズ6について発表されたことでしょう。フェーズ6については3本の映画しかまだラインナップされていませんが、その幕開けを『ファンタスティック・フォー』、さらにアベンジャーズ映画が2本(『アベンジャーズ:カーン・ダイナスティ』『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』)ここに来るということでファンのボルテージは最高潮になりました。特にアベンジャーズ映画は当面作られないと言われていただけに、まさか2本。しかも両者の公開時期の近さを考えると事実上2部作ではないかと思います。
特にファンが騒いだのは2本目のタイトルがシークレット・ウォーズだったことです。じつはシークレット・ウォーズというタイトルのコミックは2つあって1984年版と2015年版です。両方ともに共通するのがマーベルのヒーローとヴィランたちがバトルワールドというところに集められ、大バトルするというものです。
スパイダーマンが後にヴェノムとなる黒いシンビオートと出会ったのは1984年版での出来事でした。おそらく今回映画になるのは2015年版の物語をベースにしていると思われます。というのも大雑把にいうとマルチバース同士間の戦いでバトルワールドが生まれ、そこでヒーローたちが戦うという話です。『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で語られたマルチバース同士の衝突を意味する〝インカージョン〞とか、「ロキ」で〝在り続ける者〞が予言していたマルチバース間の戦い、という設定と見事につながってきますよね。
『アントマン』新作に登場する征服者カーンが重要ヴィラン
さらにフェーズ4、5、6をケヴィン・ファイギは〝マルチバース・サーガ〞としてくくると発言しており、その集大成として『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』は相応しいでしょう。となるとフェーズ5はこの戦いに参加できるヒーローやヴィランたちを紹介していくステージになると思われます。
特にフェーズ5のキックオフとなる映画『アントマン・アンド・ザ・ワスプ:クワントゥマニア』では征服者カーン(〝在り続ける者〞の変異体)という重要ヴィランが出てきます。『アベンジャーズ:カーン・ダイナスティ』のタイトルにも盛り込まれているぐらいですからこのキャラはキー。ファンもそれをわかってるからカーン役のジョナサン・メジャースが登壇した時の拍手はすごいものがありました。
ここでポイントなのは、そもそもアベンジャーズがいまどうなっているか? 要は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で事実上解散しているのでは? となるとフェーズ6までにアベンジャーズの再建をしなければなりません。フェーズ5の終盤がサム・ウィルソンが新キャプテンとなる『キャプテン・アメリカ:ニュー・ワールド・オーダー』、そして大トリがマーベル版スーサイド・スクワッドともいうべき『サンダーボルツ』である理由はそこにあります。
つまり〝サンダーボルツ〞では世界は救えない。アベンジャーズ待望論が巻き起こり、サムが新たなアベンジャーズを作るという流れではないでしょうか? ワクワクしてきますね。
『ブラックパンサー』新作は映画の内容とリアルが重なる
なお筆者は7月24日(日)の17:00からの本パネルに参加するため23日(土)午前零時から列に並び41時間待ったわけで、それにふさわしいパネルでした。ところで会場のファンがもう一つ大騒ぎしたのは、フェーズ5で〝「デアデビル:ボーン・アゲイン」が18エピソード〞とアナウンスされた時なんです。お披露目になった「シー・ハルク:ザ・アトーニー」の予告でもデアデビルがチラっと映った時歓声があがりました。チャーリー・コックスのデアデビルのMCU本格参加は、ファンにとって本当に嬉しいことなのです。
とにかくもりあがりまくりのMCUプレゼンでしたが、心に染みるパートもありました。フェーズ6の発表の後、ファイギが「未来の話をしましたが過去といまの話をしましょう」と切り出しました。すると客席にアフリカの民族衣装を着たアーチストが歌いながら入ってくる。心に染みる歌声。ステージにも民族音楽団が。そう!『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』です。
音楽が終わった後、監督・脚本のライアン・クーグラーが登壇。故チャドウィック・ボーズマン氏との思い出、そして彼への感謝を述べました。その後前作のキャストに加え、本作でフィーチャーされるアイアンハート役のドミニク・ソーン、ネイモア役のテノッチ・ウエルタも登場。映画はブラックパンサーことティ・チャラを失ったワカンダを残された人々が建て直そうとする話。この映画の内容とチャドウィック・ボーズマン氏亡き後残された者たちで映画を作ろうとするリアルが重なるんです。
予告編が終わった時にライアン・クーグラーとキャストたちは抱き合って泣いていました。会場のファンも泣いていました。僕ももらい泣き。予告編はあまりの反響に2回流れました。そう、このパネルは残された者がチャドウィック・ボーズマン氏に捧げるステージでもあったのです。