世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第33回受賞者が、2022年9月15日(日本時間15日18時)、ベルリン、ローマ、ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京の各都市で一斉に発表された。

ヴィム・ヴェンダース、アイ・ウェイウェイなど5部門6名に決定

 今年の受賞者は以下の通り。
絵画部門に遠近法とグラフィックデザインを生かし、消失点のない幾何学的な抽象画を創作、写真、コラージュ、石膏などを使って絵画の概念を問い直し続けてきたジュリオ・パオリーニ。
彫刻部門には、彫刻、インスタレーション、写真、映像を通して、難民、人権など人間の置かれた極限状況を描写し、タブーを排した自由な創作活動を続けるアイ・ウェイウェイ。
建築部門には大胆な円形と透明性、アートとの親和性が特徴の『金沢21世紀美術館』など、斬新な建築デザインで新世代の牽引役を務めてきた建築家ユニット、SANAAの妹島和世、西沢立衛。
音楽部門には世界中で2000回を超える演奏会に出演し、緻密で完璧な演奏により、130人以上の指揮者と共演してきた現代最高峰のピアニスト、クリスチャン・ツィメルマン。
演劇・映像部門には『パリ、テキサス』でカンヌ国際映画祭パルム・ドール、『ベルリン・天使の詩』で同監督賞を受賞、数々のドキュメンタリー映画も制作し、小津安二郎監督の影響を受けた映画監督、ヴィム・ヴェンダースの各氏が選ばれた。
授賞式典は、2022年10月19日(水)に都内で行われる予定。

絵画部門 ジュリオ・パオリーニ(81歳)=イタリア Giulio Paolini

画像: Giulio Paolini © archivio Paola Ghirotti

Giulio Paolini
© archivio Paola Ghirotti

イタリア・ジェノヴァ生まれ。8歳の時、子供絵画コンクールで優勝し、専門学校で絵画写真技術を学ぶ。芸術活動「アルテ・ポーヴェラ」の主要作家とみなされるが、その範疇に収まり切らない独自の志向を持つ。最初の作品《幾何学的図面》(1960年)を基点として、遠近法とグラフィックデザインを生かし、消失点のない幾何学的で詩的な抽象画を創作。見る者と見られる物との関係を考察、写真、コラージュ、石膏などを使って絵画の概念を問い直し続けてきた。演劇やオペラのセットデザインも手掛ける。1987年と1997年に日本で展覧会。2020–21年に80歳記念回顧展、2022年に個展を開催。トリノ在住。

彫刻部門 アイ・ウェイウェイ 艾未未(65歳)=中国 Ai Weiwe

画像: Ai Weiwei Photo: Shu Tomioka

Ai Weiwei
Photo: Shu Tomioka

北京生まれで、父母は詩人。文化大革命後、前衛芸術集団の結成に加わるが、当局から活動を停止され、渡米して12年間、アートを学ぶ。2008年の北京五輪スタジアム『鳥の巣』を共同設計したが、「政府のプロパガンダに利用された」と途中で外れた。2009年の森美術館での大規模展覧会以降、世界で認知が広がる。欧州に移住後は彫刻、インスタレーション、写真、映像を通して、難民、人権など人間の極限状況を描写し、タブーを排した自由な創作活動を続ける。2020年に中国政府のコロナ禍対応のドキュメンタリーを発表、2021年に回顧録を出版。ポルトガル在住、英国に拠点、ドイツにスタジオを構える。

建築部門 妹島和世(65歳)+ 西沢立衛(56歳)=日本 Kazuyo Sejima+Ryue Nishizawa / SANAA

画像: Kazuyo Sejima Ryue Nishizawa

Kazuyo Sejima Ryue Nishizawa

 日本を代表する建築家ユニット(SANAA)。個別にも事務所を持つ。妹島は大学卒業後、伊東豊雄建築設計事務所で経験を積み、独立して『再春館製薬女子寮(』1991年)などで注目を集める。西沢は大学卒業後に妹島事務所に入り、共にSANAAを設立(1995年)。大胆な幾何学的フォルム(円形)と透明性、アートとの親和性が特徴の『金沢21世紀美術館(』2004年)が高く評価され、『ルーヴル・ランス(』2012年)など海外の美術館建築の出発点となる。2010年にプリツカー賞受賞。斬新な建築デザインで新世代の牽引役を務めてきた。豪シドニーで手がける州立美術館の増築が2022年12月に一般公開。

音楽部門 クリスチャン・ツィメルマン(65歳)=ポーランド/スイス Krystian Zimerman

画像: Krystian Zimerman

Krystian Zimerman

 ポーランド生まれで、スイス在住。5歳からピアノを学び、1975年の第9回ショパン国際ピアノコンクールに18歳で優勝し、翌年にドイツ・グラモフォンの専属としてアルバムをリリース。以降、世界中で2000回を超える演奏会に出演し、130人以上の指揮者と共演してきた。専用のピアノを世界各地に運び、自分で組み立て、調律を行うほか、ホールの音響に気を配る厳格な姿勢で知られる。ベートーヴェン生誕250周年の2020年、サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団とベートーヴェンピアノ協奏曲全曲を30年ぶりに録音。日本での公演は1978年から250回を超える。2003年から東京都内にも自宅を持つ。

演劇・映像部門 ヴィム・ヴェンダース(77歳)=ドイツ Wim Wenders

画像: Wim Wenders Photo: Beata Siewicz

Wim Wenders
Photo: Beata Siewicz

 ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。高校卒業後、パリのスタジオで学び、帰国後、ミュンヘンテレビ・映画大学在学中に映画監督の活動を開始。ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督の一人。ロード・ムービーで知られ、『パリ、テキサス』(1984年)でカンヌ国際映画祭パルム・ドール『、ベルリン・天使の詩(』1987年)で同監督賞。小津安二郎監督の影響を受けた。世界文化賞受賞者のピナ・バウシュ(演劇・映像)、セバスチャン・サルガド(絵画)のドキュメンタリー映画を手掛ける。安藤忠雄氏らの設計による東京・渋谷の公共トイレを舞台にした最新作(主演・役所広司)が2023年に公開予定。ベルリン在住。

2022年 第25回「若手芸術家奨励制度」対象団体

画像: Raimund Trenkler, Chairman of Kronberg Academy Foundation Kronberg Academy© Andreas Malkmus

Raimund Trenkler, Chairman of Kronberg
Academy Foundation
Kronberg Academy© Andreas Malkmus

「音楽は世界言語であり、世界中の音楽仲間は芸術の純粋さを人類のために役立てよう」とのチェリスト、パブロ・カザルスの遺志を継ぎ、新進気鋭のヴァイオリニスト、ヴィオリスト、チェリスト、ピアニストの育成(3–4年間)のため、1993年に設立、2004年に財団法人化。世界文化賞受賞者のギドン・クレーメル、ダニエル・バレンボイムなどが指導するほか、コンサートも開催。卒業生はチェリスト宮田大を含む64人。2022年9月に一流の音響と最新の設備を備えたコンサートホール「カザルス・フォーラム」(550人収容)がオープン、クラシック音楽界の指導的役割を目指す。初の日本ツアーを2023年6月に行う予定。

「世界文化賞」国際顧問にヒラリー・ロダム・クリントン元米国務長官

 アメリカの元国務長官、ヒラリー・ロダム・クリントン氏が2022年9月より「高松宮殿下記念世界文化賞」(公益財団法人 日本美術協会主催)の国際顧問に就任した。
 アメリカの国際顧問は、2018年から元駐日大使のキャロライン・ケネディ氏が務めていたが、ケネディ氏は駐豪大使の指名に先立って、2021年に退任。クリントン氏はその後任の国際顧問として、アメリカ推薦委員会を主宰し、受賞候補者の推薦を行う。
 クリントン氏は、デイヴィッド・ロックフェラー、その子息のデイヴィッド・ロックフェラー・ジュニア、ウィリアム・ルアーズ、ケネディ各氏に次いで、5人目のアメリカの国際顧問。

This article is a sponsored article by
''.