現在開催中の「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」(PFF)では、生誕100周年を迎えるイタリアの鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の特集上映を実施。この稀有な才能がもたらす、唯一無二の映画体験をぜひとも多くの若い人たちに体験してもらいたい。そこで今回は若手映画ライターのSYOさんがパゾリーニを初体験! パゾリーニ作品を通じてSYOさんが感じたこととは? PFFの荒木ディレクターとともに、その魅力を語りあってもらった。

“映画ってなにやってもいいんだよ、ということが伝わったら”

荒木 パゾリーニは映画つくりに関しては素人というところから始まっていますからね。特に映画の現場で訓練を受けたわけではないのに、デビュー作の『アッカトーネ』があのクオリティーですから。本当にすごい人ですよ。

荒木 『ソドムの市』はどうでした?

『ソドムの市』

SYO 最近だと『哭悲 THE SADNESS』という強烈な台湾映画があって。ここ数年で、久しぶりに途中で観るのをやめたくなるような映画だったのですが、観始めた最初はその感覚を少し思い出しました。でも、映画を観て感じたエグ味は『ソドムの市』の方が比べ物にならないくらい強くて(笑)。

それはきっと画がすごく美しくて、しかも引きの画で撮られている分、異常性に引いた目線――客観性を感じたから。「怖いものですよ」と見せ物にするのではなく、異常性を当たり前のように描いている。話は通じるけど理解は絶対にできないような、真の意味で怖い人たちに出会ってしまった……と震えました。

今回、僕が『ソドムの市』を観たいなと思ったのは、やっぱり体験として受け継がれていく作品だから、ということもありますよね。だからといって教授が学生たちにそれを薦めるのもすごいことだと思いますが(笑)、でもそういう力があると思うんです。「俺、『ソドムの市』観たんだぜ!」と言いたくなるような。それは本当に映画の力だと思いますね。

荒木 とにかくパゾリーニは、誰もやらないようなことをやろう、究極のことをやってやろうとしていたんですよね。そういうことを常に思っている作家がいるというだけで、60年代の映画の芳醇(ほうじゅん)さがあると思うんです。パゾリーニは作品を発表する度に、常に訴訟を起こされたり、上映中止を命じられたりしてきたわけですが、なにかをする度に反発が起きるってすごい才能だと思う。

SYO 一生懸命作っているのに、事件が起こってしまう……。

荒木 ある種の人たちにとって、彼がやることは恐怖を感じさせるんでしょうね。とにかくパゾリーニを通して、映画ってなにやってもいいんだよ、ということが伝わったらなと思っているんです。

スクリーンで、これだけの規模で上映される機会はもうないでしょう

SYO 今回、パゾリーニ作品を体験することができて良かったなと思います。ある種、一番強烈なものを最初に観たからこそ、他の作品を観たいなという気持ちになりましたし。今のままだと、自分の中で「強烈な映画を撮る人」のイメージが固まってしまいそうなので(笑)、他の作品も観たいなと思っています。

SYO 今回、短編プログラムを入れたら相当な数の映画を上映するんですよね。

荒木 これを一気に観たらすごいですよ。自分の人生の中でも得がたい体験になります。おそらくスクリーンで、これだけの規模で上映される機会はもうないでしょうしね。

――今回の特集で気になった作品はありますか?

SYO 今回、上映作品のチラシを拝見して。面白そうな作品が多いなと思ったのですが、『大きな鳥と小さな鳥』は観たいなと思いました。あらすじを読んだだけでもう面白そうだなと思ったというのもありますし、言葉を話すカラスってどんなだろう?というところも気になります。

荒木 お時間あるときに、ぜひ映画祭に遊びに来てください。

第44回ぴあフィルムフェスティバル2022 特別企画
「ようこそ、はじめてのパゾリーニ体験へ」

●上映劇場

【東京】
京橋・国立映画アーカイブ
9月11日(日)~22日(木)

渋谷・ユーロスペース
10月22日(土)~11月3日(木・祝)

【京都】
三条高倉・京都文化博物館
11月19日(土)~26日(土)

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