約40年にわたってハリウッドを中心に映画記者活動を続けている筆者が、その期間にインタビューしたスターは星の数。現在の大スターも駆け出しのころから知り合いというわけです。ということで、普段はなかなか知ることのできないビッグスターの昔と今の素顔を語ってもらう興味津々のコーナーです。今回は、ニコラス・ケイジの仰天エピソードに注目です。(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

成田陽子

ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

日本人女性と結婚して、最近は特に“日本大好き人間”になったケイジ

2022年9月7日に生まれた娘のことを「今度生まれてくる赤ん坊は最初は“枝豆”みたいだったのだよ!」と超音波で見た時のイメージを日本のおつまみに例えてみたり、目下のご贔屓作家は「ムラカミ」(もちろん村上春樹のことでしょう)と日本大好き人間になったニコラス・ケイジ。もちろん5番目のワイフは日本人のリコさん。「今度こそ、永久に幸せに仲良く暮らして行きますよ」と鼻息が荒いのも頼もしい。

ちなみに4番目のワイフも日本人のエリカさんだったが、たった4日後に離婚という最短結婚記録を残してしまった。

画像: 1987年ころのニコラス・ケイジ Photo by Getty Images

1987年ころのニコラス・ケイジ

Photo by Getty Images

『PIG/ピッグ』(2021)と『マッシブ・タレント』(原題の意味は「巨大な才能の耐えられない重さ」)と題名も珍妙な最近のケイジの映画は自己虐待のトーンにあふれていて自分でも誇りを持てる出来栄えだと自慢している。

「一時期はまるでベルトコンベヤーに乗せられたみたいに大量の映画に出ていたが、あれは税務署に払うお金を稼ぐためだった。やっと済ませて、今は自分で納得のいく作品を選んでいる。特に僕は動物が大好きなので『PIG/ピッグ』には感情移入してしまって豚を飼おうとさえ思っている程なのだよ」

香ばしいきのこの一種、トリュフを探すのが得意な豚の飼い主の役を情感たっぷりに、ちょっと悲哀に満ちて熱演して映画の中で豚を探し回る場面などケイジ本人のように見えてしまう。

エキセントリックな個性ゆえか、数々の仰天エピソードも

彼に初めて会ったのは『月の輝く夜に』(1987)で、片腕が義手のパン屋の役を演じた時。イタリー系の家族ドラマで、何とシェールと恋に落ちるという筋書きだったが今ではカルト映画のレベルで人気が続いている。

画像1: 筆者とケイジ

筆者とケイジ

「僕の叔父貴はフランシス・フォード・コッポラで、親戚にはアーティストがうじゃうじゃ居るからコッポラという名前は使いたくなかった。マーベルコミックのスーパーヒーロー、ルーク・ケイジから名前を取ったんだ。叔父貴にくっついて『ゴッドファーザー』の撮影現場にもよく潜り込んでマーロン・ブランドたちの役作りを目の当たりにしていたんだよ」

独特の鼻にかかった低い声で子供時代の思い出を話してくれた。父親は大学教授でとても豊かな生活など叶わず、叔父さんのワイナリーに行っては「豪華な邸宅」に憧れていたと言う。それが後にバハマの島、ドイツと英国の城、ニューオーリンズの巨大な幽霊屋敷、などなどを買い漁り、一時は不動産が15軒、ランボルギーニなどの高級車が15台というメチャクチャな生活につながったのだろう。会計士などとの誤解で国税庁から検査が入ったり、ケイジの生活は波乱万丈、熱いドラマにあふれている。

役作りでも同様、『バーディ』(1984)の時、前歯を麻酔無しで2本抜いて肉体の痛みを実体験、この時は5週間包帯を顔に巻いて、人々を驚かせ、挙句の果てに顔中の皮膚が腐ってしまったとか。『バンパイア・キッス』(1989)の時は撮影のオンカメラで生きているゴキブリを食べたのも有名な話。(ゴキブリに悪かったと謝っている!)

『リービング・ラスベガス』(1995)のアル中のライター役でアカデミー主演賞受賞、ジェームズ・フランコを主演にしたジゴロの話『SONNY ソニー』(2002)では監督業にも挑戦。結婚歴も華やかで、最初は女優のパトリシア・アークエット、次はエルヴィス・プレスリーの娘、リサ・マリーなどなどが元ワイフである。

何しろエキセントリックなケイジで、ステーキを食べるときはレストランに自前のご自慢の彫りの柄が付いたナイフを持参すると言う。あくまで日本びいきのケイジは自分のオペラティックな演技を「西洋歌舞伎」と名付けているそうです。

画像2: 筆者とケイジ

筆者とケイジ

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