これまで韓国映画に登場してきた刑事とは違う“文学的で清潔で市民に親切な刑事役”に情熱を持って挑んだ
ーーパク・ヘイルさんは脚本が出来上がっていない段階で役を引き受けたそうですね。
「パク・チャヌク監督の作品に出演できると知って、とても嬉しかったんです。こんな機会が与えられるなんて幸運ですし、声をかけていただいたからにはベストを尽くさなければいけないと思いました。それで監督とお会いしたら、脚本を渡されるのではなく、30分ぐらいかけてストーリーを話してくださったんです。内容を聞いて思ったのが、“パク・チャヌクという芸術家の宇宙に飛び込むことは、俳優として大きな挑戦になる”ということでした」
ーー容疑者に惹かれていくチャン・ヘジュン刑事という役をどう思いましたか?
「本来なら若手俳優にとって刑事役は登竜門のはずなんですが、僕の場合はポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』で演じた容疑者のイメージが強過ぎたのか、『別れる決心』のお話がくるまで一度も刑事を演じたことがなかったんです。とはいえ、今回はよくある暴力的な刑事ではなく、穏やかで清潔感があって、慎重に捜査を進めていくとても珍しい刑事の設定だったので、新鮮に感じましたね」
ーー清廉な刑事であるにも関わらず、容疑者に惹かれるヘジュンを演じるのは非常に難しかったかと思いますが、どのようにこの役と向き合い、どんなところを一番大事にお芝居されたのでしょうか?
「まず最初に思ったのが、今回初めて刑事役を演じることによって、『殺人の追憶』の容疑者のイメージから離れられるだろうということでした。ただ、先ほどもお話ししたように、これまで韓国映画に登場してきた刑事とは違っていたので、どうやったらヘジュンのような“文学的で清潔で市民に親切な刑事”を演じることができるのか、ものすごく考えましたね。とにかく情熱を持って撮影に挑むことを大事にしていました」
ーー本作を鑑賞して、“純粋な大人のラブストーリーを描いている”と感じたのですが、パクさんは容疑者のソレと刑事であるヘジュンの関係性をどう思いましたか?
「もしも実際に刑事と容疑者が恋愛へと発展することがあったとしたら、それはとても珍しいケースだと思います。ただ、本作のソレとヘジュンは本心を隠しながら、お互いの気持ちを表現している関係性なので、不思議とリアリティを感じるんですよね。それ故に観客のみなさんは“パク・チャヌク監督流の愛=つかもうとしてもつかめない霧のようなおぼろげな存在”を感じようと、何度もこの作品を鑑賞されるのではないかと思います」
ーー個人的には命をかけて愛せる人に出会えたソレを羨ましく思いましたし、パクさんとタン・ウェイさんの演技が素晴らしいからこそ、“現実にもこういうことが起きるのではないか”と感じました。
「命がけの愛を貫くには大きな責任が伴いますし、揺るぎない決断力が必要になりますよね。そこまでするのは現実的に考えて難しいので、私たちは本作のような映画を観ることでそういった願望を叶え、満足できるのではないでしょうか。ただ、あなたにひとつアドバイスをしてもいいですか? ソレとヘジュンを羨ましがらずに、あなた自身が深い愛に出会えたほうがいいと思います(笑)」
ーーその通りですね(笑)。
「いつか叶えられるように願っています」
ーーありがとうございます。では最後に、パク・チャヌク監督の現場を通して感じたこと教えていただけますか。
「パク・チャヌク監督は、ほとんどの作品で暴力的だったりアイロニカルだったりするストーリーを語りながら、伝えたいメッセージを逆説的に表現してこられました。そういった作品と比べると、『別れる決心』は“刺激的な映画”という印象は受けないかもしれません。恋愛の感情面にしても直接的な描写はないですしね。ですが、人間の感情の奥深さに関しては、これまでの作品以上に丁寧に描かれた作品になっていると感じます。だからこそ、タン・ウェイさんと私は、ソレとヘジュンがそれぞれどういう環境で生きてきたのか、そしてその環境で生きてきた人物の感情をどのように表現するのかを監督と細かく意見を交わしながら撮影していました。そのように過ごした現場はこれからも私の中で大切な記憶として残っていくと思います。ソレとヘジュンがどうなっていくのか、劇場で見届けていただけたら嬉しいです」
<STORY>
岩山の頂から転落した男の事件を追う刑事ヘジュンは、被害者の妻ソレを容疑者として監視する中で、次第に彼女に特別な感情を抱き始める。捜査を続けていく中で少しずつ距離を縮めていくふたり。やがて事件解決の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった……。
『別れる決心』
2月17日 TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ
提供:ハピネットファントム・スタジオ、WOWOW
配給: ハピネットファントム・スタジオ
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