『フェモクラシー 不屈の女たち』緑の党の6人の女性役員、右端がニッケルス議員、その左隣りがショッペ議員 ©Majestic/picture_alliance-Sven Simon
最新のドイツ映画から厳選した映画をお届けする「ドイツ映画祭 HORIZONTE」では、ドイツの今を体感できる作品を紹介。今年も「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2023」の開催が決定した。

オープニングは旧西ドイツ議会の女性蔑視に立ち向かう女性議員先駆者の軌跡『フェモクラシー』

オープニングを飾る『フェモクラシー 不屈の女たち』は、旧西ドイツ議会の女性蔑視に立ち向かう女性議員先駆者の軌跡を追った作品。他にも、それぞれの世界で圧力に屈せず闘う女性を描いた作品や女性監督による作品が集まっている。そこで「道を拓く女たち」を、今年の映画祭のメインテーマに掲げている。

とりわけ、差別やセクハラと闘う女性たちを描いた作品からは、世界共通の課題が浮き彫りになる。移民社会における問題を取り上げた作品では、多様化してゆく社会での共生について考えさせられる。また、東西ドイツの分断と統合も複数の作品に登場し、歴史に翻弄された当時の人々の姿や、今日に至ってさまざまな格差として人々の生活に付随する問題として描かれている。このように、日本人にとっても身近で切実なテーマが生き生きと描かれていて必見だ。

画像: 緑の党のクリスタ・ニッケルス議員が当時のコール首相に広島で作られた折り紙のストールを渡し、核軍拡 競争への反対を表明した。© Majestic/Deutscher Bundestag/Presse-Service Steponaitis

緑の党のクリスタ・ニッケルス議員が当時のコール首相に広島で作られた折り紙のストールを渡し、核軍拡
競争への反対を表明した。© Majestic/Deutscher Bundestag/Presse-Service Steponaitis

今年のラインナップは、2021年・2022年ベルリン国際映画祭での受賞作ほか、日本未公開作品を中心に5本の劇映画と2本のドキュメンタリー映画を厳選。
来日ゲスト(あるいはオンライン)によるトークやディスカッションも実施し、ドイツ映画界が誇る気鋭の監督や俳優に、それぞれの作品の見どころ、そして作品に込めた思いを深く語ってもらう。

【主な上映作品】
オープニングを飾るのは、旧西ドイツ連邦議会の女性議員のパイオニアたちの歩みを戦後から現在まで追うドキュメンタリー『フェモクラシー 不屈の女たち』。セクハラと先入観に耐えながら、勇猛に忍耐強く前を向く女性たちの姿が頼もしく、勇気を与えてくれる。
『NICO』はレイシストに襲われた介護職の女性ニコ(イラン系ドイツ人)が、恐怖を乗り越え立ち直る姿をパワフルに描く作品。監督、プロデューサー兼主演は、ともに20代女性。
『バッハマン先生の教室』は、12か国の子どもたちが在籍するドイツ田舎町で学校のクラスを1年間にわたり追ったドキュメンタリー。母語もメンタリティーも多様な生徒たちと、バッハマン先生が音楽やジャグリングで遊びながら授業をする。第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品。

画像: ケルナー監督の求めに応じて集まった元女性議員たち© Majestic / AnnetteEtges

ケルナー監督の求めに応じて集まった元女性議員たち© Majestic / AnnetteEtges

「柔らかくしなやかに、だが全力で成果を勝ち取る」
『フェモクラシー 不屈の女たち』でインタビューに応える、リタ・ジュースムート(元連邦議会議員で連邦青少年・家族・保健大臣も務めた)の言葉だ。今年のドイツ映画祭Horizonte 2023のオープニング作品『フェモクラシ― 不屈の女たち』は、第二次世界大戦末期からメルケル首相時代までの旧西ドイツの政治における女性パイオニアたちを描く。彼女たちは、男性議員や世間から激しい攻撃を受けながらも、政治と社会の中で居場所を掴み取っていった。登場する女性たちは明るくウィットに富んでおり、彼女たちのそんな魅力が未知の領域へ進出する際の最強の武器であったことが見てとれる。

今年の映画祭Horizonte 2023では、そのような女性たちにフォーカスする。つまり、「与えられた」状況を疑わずに受け入れるのではなく、複雑化し急激に変化する現実に鋭く反応し、その中で方向性を見出す女性たちである。彼女たちは、人間関係にダイナミックな変化を起こすのみならず、自分自身も変わりながら、変革の一部を成し変化を共に生きるのだ。時には自分の枠を突き破る変革を経験する。

今年の映画祭のテーマは、ドイツ映画界の変化も映し出している。プログラム7作品中4本と女性監督作品が大半を占める。ここで改めてリタ・ジュースムートの引用を思い出したい。「柔らかくしなやかに、だが全力で成果を勝ち取る」のだ。ドイツ映画の立ち位置を示す7本の作品が、若々しく新鮮な(そして女性たちの)声を届けるだろう。

● ドイツ映画祭 HORIZONTE 2023 
HORIZONTE 2023- FESTIVAL DES DEUTSCHEN FILMS
4月20日(木)~23日(日)
会場:ユーロライブ(渋谷) 渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F
主催:ゲーテ・インスティトゥート東京、共催:German Films
協力:ドイツ連邦共和国大使館、ユーロスペース

<メルケル元首相コメント>
女性政治家たちは 激しい対立を乗り越えねばなりませんでした。
一見 穏やかな西ドイツでは逆風が吹き荒んでいたのです。
粘り強さと勇敢さで立ち向かった彼女らは、今日も 政治のみならずあらゆる人生の分野において女性たちの鑑となっています。
政治的違いを超えて彼女らが 共有したことは、圧力に負けず、政治的責任を負い、口封じに抗い 意見を述べたことです。それは全く尊敬に値することです。平等な立場でそのように扱われることは、男性との協力において実現されうるものです。ですから この映画は、女性だけでなく多くの男性にも観て欲しいと思います。

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