圧巻!!世界的なアーティストによるブレンダン・フレイザーの内面が滲む
この度解禁されたアートポスターは、既成概念を打ち破るコラボレーションを発表し続ける台湾出身のアメリカ人アーティスト、ジェームズ・ジーン氏(James Jean)によるもの。ダーレン・アロノフスキー監督とは『マザー!』(17)に続き2度目のコラボレーションとなった『ザ・ホエール』のポスターでは、ブレンダン・フレイザー演じるチャーリーの顔が全面に配され、得も言われぬ表情に「僕は信じたかった」というコピーが添えられインパクトを与えている。
様々な形式や美術史上の手法を実験的に用いて想像力に富む多様なアプローチで生み出すジーン氏の展覧会はニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン他世界各国で巡回され、過去にはプラダのコレクションとのコラボレーション、2021年には韓国の複合文化空間HYBEミュージアムで「BTS X JAMES JEAN」として、世界的人気を誇るアイドルグループBTSのメンバー7人を描き、彼らのキャラクターをデザインした作品を発表。映画界では「ハリウッドが愛した作家」とも呼ばれ、ギレルモ・デル・トロ監督最新作『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』をはじめ、最近ではA24作品『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でのコラボレーションポスターが記憶に新しい。
自身のインスタグラムで発表しているジーン氏のコメントは以下の通り。
昨年『ザ・ホエール』を観て、ダーレン・アロノフスキーからポスター制作の依頼を受けた時、私はすぐに画家のルシアン・フロイドが描いたリー・バウリー(パフォーマンス・アーティスト)の肖像画や、キキ・スミス(アーティスト)の自画像“My Blue Lake”を思い浮かべました。
後者は、キキ・スミスが自分の胴体の表面を特別なカメラで撮影し、皮膚の立体地図のようにもみえるイメージを作り出したものです。
ブレンダン・フレイザーが演じるチャーリーを描く間、私はフロイドに倣おうとしました。モデルであるバウリーに対して親しみを込める一方で、情け容赦のない―彼の観察眼です。
映画の中で、チャーリーの苦悩の深さは彼の肥大した体で表現されています、そこにすべての感情を押し込めるように。
皮膚は外部と内部の単なる薄い境界線で、彼の苦悩は画面いっぱいに余白をも超えて広がる。そして彼の人間性や楽観性が顔の凹凸において破壊します。しわくちゃの紙の繊細な質感がその肖像に組み込まれ、それはチャーリーが長い間大切にし、ぎりぎりの彼を支え握りしめていた、娘エリーのエッセイを思わせます。 ――James Jean
ダーレンは今回のジーン氏のポスターについて、「僕とジェームズは古くからの友人。今までもコラボレーションしていますが、アーティストとして彼は超多忙なので『公開前に映画を観ないか』という誘い方で、ある意味、罠を仕掛けました(笑)。すると彼は『ああ、この映画のために絵を描かなくちゃ』って言ってくれたんです」と語っている。
様々な手法を用いながら、個人的な体験、内面にフォーカスしながら唯一無二の世界観を描き出すジーン氏によって描かれた紙の質感などの細部に至るまで深くストーリーと結びつけられたビジュアルは、カメラで捉えられた姿よりも奥深く、主人公の心の深淵を描き、観る者の想像を掻き立ててくれるのかもしれない。恋人を亡くしたショックに打ちひしがれ、現実逃避をするように過食を繰り返してきたチャーリーの人生最期の願いとはなんだったのか―。ブレンダン・フレイザーの“生涯最高の演技”と称されるほどの熱演、魂の叫びからますます目が離せない。
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