最新インタビューを通して編集部が特に注目するキーパーソンに光をあてる“今月の顔”。今回は俳優としてだけでなくクリエイターとしての評価も高いベン・アフレック。伝説のシューズ“エアジョーダン”誕生秘話を描く新作『AIR/エア』でも監督・出演を兼任し、その手腕に絶賛の声が集まっています。
カバー画像:Photo by MJ Kim/HFA2014/Getty Images
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ベン・アフレック
1972年8月15日、アメリカ・カリフォルニア州生まれ。友人のマット・デイモンと共同脚本・出演を務めた『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)でアカデミー賞脚本賞を受賞し、一躍脚光を浴びる。『アルマゲドン』(1998)『パール・ハーバー』(2001)などでトップ俳優として活躍する一方、監督・主演・製作を務めた『アルゴ』(2012)がアカデミー賞作品賞を受賞するなど映画作家としての才能も発揮。

”マイケル・ジョーダンの了解を得ることなくこの映画をつくることは考えていなかった”

第85回アカデミー賞作品賞を受賞した『アルゴ』など、俳優としてだけでなく監督としても国民的人気を得ているベン・アフレック。2016年の『夜に生きる』以来、彼がじつに7年ぶりにメガホンを取ったのが現在公開中の『AIR/エア』。バスケットボール界という枠を超え、文化そのものを一変させた伝説のナイキシューズ“エア ジョーダン”誕生までの知られざる実話を描く感動の物語である。

“エア ジョーダン”誕生のカギとなる人物、ナイキ社のソニー・ヴァッカロ役で主演を務めるのは、友人であるアフレックと数々の名作を世に送り出してきたマット・デイモン。また、アフレック自身もナイキ創業者フィル・ナイト役で出演。本作は彼ら二人が設立した新たな制作会社アーティスト・エクイティの第一弾作品でもある。

『AIR/エア』はこれまで監督として主にクライム・スリラーを手掛けてきたアフレックにとって新境地の作品となり、全米で「新時代の『ザ・エージェント』」「来年のオスカー候補一番乗り」と絶賛の嵐を呼んでいる。今回彼はなぜこの題材を選んだのか。そして“バスケットボールの神様”として知られるマイケル・ジョーダン本人からの“ある提案”とは。本作完成までの裏側を語ってもらった。

── “エア ジョーダン”誕生までの物語のどのような点に魅力を感じたのでしょうか?

弟(俳優のケイシー・アフレック)が“エア ジョーダン”を履いている写真を持っている。1985年の冬か1986年の春ごろの写真だと思う。アディダスをはじめとする当時人気のシューズがすべてナイキに入れ替わったときのことをかなりはっきりと覚えているよ。一夜にして、格好良くありたいなら持つべきシューズはナイキに変わったんだ。

でもその“エア ジョーダン”の起源にこんな裏話があったなんて、一切知らなかった。シューズがマイケル・ジョーダンを偉大な選手にしたわけではなく、彼の偉大さがこのシューズを社会現象にまで押し上げたことは、もちろんわかっているが、『AIR/エア』はスニーカー文化の誕生を描く。観客の多くは驚くと思うけれど、それこそがこの物語の魅力だと感じたよ。

──マイケル・ジョーダン本人の同意を得られなければ、この映画はつくらないと決めていたそうですね?

マイケルの了解を得ることなく、この映画をつくることは考えていなかった。マイケルが違うと感じることをひとつ残らず無くそうと『とくに何を大切にしたいか?』と彼に尋ねたんだ。彼はその質問に快く答えてくれ、重要視していることをいくつか教えてくれた。

中でも、ヴィオラ・デイヴィスが自分の母親役を演じることにはかなりこだわっていた。目標はできるだけ高く設定し、そこに到達することを期待するというのは、マイケル・ジョーダンらしいと思ったよ。ヴィオラは、現代における最もすばらしい女優のひとりだ。あれほどの才能の持ち主の演技を間近で見られるのは、それだけで本当に光栄なことだった。

そのため映画全体を通して、ヴィオラという偉大な俳優にふさわしい役をつくる努力をすることが、自分に課せられた使命だと思った。そしてマイケルはキャスティング・ディレクターとしても天才的であることがわかった。さすがだと思ったよ。

──この物語の主人公の一人であるべきマイケル・ジョーダン役の俳優が、本作ではほとんど画面に登場しないのがユニークですね。

マイケル・ジョーダンは超有名人なので、俳優が演じた場合、観客はどうしても違和感を覚えてしまうだろうと強く感じた。説得力をもってマイケル・ジョーダンを演じられる人はマイケル・ジョーダン以外にいないと僕は考えていた。だからこの物語をより面白く伝える方法として、マイケル・ジョーダンには本作の核となる精神の部分で存在してもらうことにした。

みんなの会話にのぼるけれど、会うことがないというのは、現代において有名人やスター選手とつながる経験とどこか似ている。ほとんどの人は、好きなスポーツ選手や有名人に会ったりすることなく一生を終えるものだよね。だから本作では、マイケルを映像や回想にのみ登場させることにした。彼が直接的に映画に登場することはない。彼の姿を直接見ることは、本作にふさわしくないかたちで彼にリアルさを与えてしまうと考えたんだ。

──マット・デイモンとはこれまで多くの共同作業を行ってきましたが、監督・主演俳優として組むのは意外なことに初めてです。

マットは非常に才能豊かだ。今回は初めて監督として、彼の俳優としての一面をさらに知ることができて嬉しかったよ。最も付き合いの長い友人と同じ職業に就き、一緒に仕事をすることができるなんてとても幸運だと思う。そういう意味で2倍の喜びを感じたよ。

──本作を見る観客にはどのようなことを感じてもらいたいですか?

この物語が観る人たちとつながり、心に響くことを願っている。有意義で、実りある映画体験になってくれると嬉しい。それこそが物語を語る上で僕が大切にしていることだよ。

『AIR /エア』
全国公開中

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“神様”といわれた世界最高のバスケットボール選手マイケル・ジョーダン。そのシグニチャーモデルで、スポーツ界の枠を超えて革命を巻き起こした伝説のナイキシューズ“エア ジョーダン”誕生の実話を映画化。当時は業界の“負け犬”だったナイキ社の一発逆転の賭けと取引を描く。監督は『アルゴ』のベン・アフレックで、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『最後の決闘裁判』などでタッグを組む盟友マット・デイモンが主演。

監督: ベン・アフレック
出演: マット・デイモン、ベン・アフレック、ジェイソン・ベイトマン、クリス・メッシーナ、マーロン・ウェイアンズ、クリス・タッカー、ヴィオラ・デイヴィス
配給: ワーナー・ブラザース映画

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