カバー画像:©Pennebaker Hegedus Films / Jane Balfour Service
ジャン=リュック・ゴダールとは?
1930年パリ生まれ。長編監督デビュー作『勝手にしやがれ』(1960)で仏映画の新しい波(ヌーベルバーグ)の旗手となる。ハリウッド的な物語に縛られた商業映画の枠に収まりきらず、従来の映画文法から大きく逸脱した意欲作を連発。一時非商業用映画を製作するが、1980年代は商業映画に復帰。ただしテレビシリーズ製作や、ビデオ撮影など次々実験的な新しいジャンル開拓にも進み続けた。
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幻のアメリカ作品が日本初公開
『1PM-ワン・アメリカン・ムービー』
1968年の秋。ゴダールは渡米していた。それは『1AM』(ワン・アメリカン・ムービー)というドキュメンタリー製作企画で、アメリカの反体制的な政治と文化に目を向けるため、ダイレクト・シネマの旗手たちリチャード・リーコックとD・A・ペネベイカーと共同作業を始めたが、編集段階で頓挫してしまった。
『1PM』(1971)はゴダールが放棄したフッテージをリーコックとペネベイカーが繋ぎ合わせて作った幻の作品で、ブラックパンサー党のエルドリッジ・クリーヴァーやロックバンド“ジェファーソン・エアプレイン”といった当時のカルチャーを象徴する人物たちも登場する。
そして今回、『1PM』と同時に2つの作品が参考上映される。一つはゴダールが1967年に監督した『中国女』で、毛沢東主義をはじめとする新左翼の思潮について勉強会をする若者たちの生態を描き、翌1968年の五月革命を予見したと言われる問題作。ゴダールの二番目の夫人となるアンヌ・ヴィアゼムスキーらが出演。
もう一つの『ニューヨークの中国女』(1968)は、『中国女』の配給権を取得したリーコックとペネベイカーが、米国に滞在したゴダールがニューヨーク大学の学生たちと『中国女』をめぐって議論を交わす姿を記録した41分のモノクロ短編ドキュメント。(いずれも配給はアダンソニア、ブロードウェイ)
『1PM-ワン・アメリカン・ムービー』
『中国女』
『ニューヨークの中国女』
4月22日(土)より新宿ケイズシネマほか全国順次公開
全9作をスクリーンで
「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」
映画史においても重要な存在だったゴダール。彼の死を悼んでその膨大なフィルモグラフィから最も充実していた1960年代と1980年代を中心に、なかなかスクリーンでは観ることのできない全9作をセレクトして贈る映画祭が開催決定。
1960年代の作品では、まず対立する二つの組織の間で翻弄される男女のスパイを描く『小さな兵隊』(1960)はじめ、寓話的な反戦・反帝国主義風刺劇『カラビニエ』(1963)、二人の若者と一人のナイーブな娘が織りなす三角関係を描く『はなればなれに』(1964)、遺産相続のため妻の実家に向かうプチブル夫婦を主人公にした喜劇『ウイークエンド』(1967)の4作を。
また1980年代作品では商業用映画に復帰したゴダールの長編第2作『パッション』(1982)はじめ、銀行を襲撃する美女と彼女に恋した警備員を中心に様々な人間模様が展開する『カルメンという名の女』(1983)、聖母マリアをスイスの女子学生マリーに変換して宗教的問題を巻き起こした『ゴダールのマリア』(1985)、様々な職種の人々が織りなす犯罪群像劇『ゴダールの探偵』(1985)、ジェラール・ドパルデュー主演で創造主と肉体をモチーフに作り上げた『ゴダールの決別』(1993)の5作をラインナップ。(配給はマーメイドフィルム、コピアポア・フィルム)
追悼ジャン=リュック・ゴダール映画祭
4月28日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ有楽町ほか全国順次開催