杉山すぴ豊
アメキャラ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
“家族の物語”だと改めて強調! 『GotG:VOLUME 3』
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
大ヒット公開中/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©Marvel Studios 2023
この原稿を書く直前に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の完成披露試写会に行ってきました。もうすでにご覧になった方も多いと思いますが、彼らの冒険をずっと見続けてきたファンにとってちょっと寂しいけれど、最高のフィナーレだったのではないでしょうか?
笑える会話や爽快かつ壮大な宇宙アクションが満載。その一方でガン監督がつねづね言っていた「ガーディアンズ~」は家族の物語ということが本作でも改めて強調されました。そして強い絆で結ばれた家族がそれぞれの道へと旅立っていくわけです。それを見送ることが出来ました。(けれどまた彼らに会えそうな余地はちゃんと残してくれましたね)。
MCU版のキャスティングも進行中!? 「ファンタスティック・フォー」
スーパーヒーロー物に家族ドラマという要素を持ち込んだのが1961年にマーベル・コミックから発表されたファンタスティック・フォーです。宇宙線の力で超人となった4人がヒーロー・チームになるわけです。
一見普通のSF活劇ですがこの4人を家族として描き、彼らの日常のドラマがスパイスとなっています。夫婦げんかと宇宙の危機が同時に起こったりしますから。ピクサーの『Mr.インクレディブル』(2004)は明らかに彼らへのオマージュです。
今でこそ、ヒーローを人間味あふれる人物として描くというのは珍しいことではないですが、この手法を60年以上も前に実現したマーベル(つまりスタン・リー氏)は画期的です。このファンタスティック・フォーの成功を受けてマーベルの快進撃が始まります。
その後、スパイダーマンやアベンジャーズ、X-MENといったタイトルが生まれてくる。だからファンタスティック・フォーはいまに続くマーベルの礎を作ったヒーロー・ファミリーとしてリスペクトされているし、コミックの中でも重要なポジションにいます。
このファンタスティック・フォーは何度か映画化されていますが、実はマーベル・シネマティック・ユニバース/MCUが本格的にディズニーで始まる前に(マーベルがディズニー傘下になる前に)映画化権を20世紀フォックスに渡していたため、MCUとは別のマーベル映画として作られていました。
しかし20世紀フォックス自体がディズニーに買収され20世紀スタジオとなり、それと同時にこのキャラクターの映画化権自体もマーベルに戻ったたため、いまMCU版ファンタスティック・フォーに向けて準備が進んでいます。先にも書いたようにマーベル成功の鍵となった大事なヒーローたちなので、MCUとしても映画化に向けて慎重です。
やはり本作において気がかりなのはキャスティングですが、チームの中心人物で身体の伸び縮みが出来るMr.ファンタスティックことリード・リチャーズ役にアダム・ドライヴァー(!)の名があがっています。そしてその妻で透明バリアを操れるスー役にマーゴット・ロビーの名も。この原稿が出るころはキャスティングが決まっているかもしれませんが、とにかくこの4人を誰が演じるかが楽しみです。
なおちょっとややこしいんですが、ファンタスティック・フォーはすでにMCUに登場しています。昨年公開された『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)で別バースのMr.ファンタスティックがサプライズとして登場しました。
この時、彼を演じていたのが『クワイエット・プレイス』のジョン・クラシンスキー。クラシンスキーはファンの間でMr.ファンタスティックに相応しいと思われていたのです。だからこれはファン・サービスの一環であり、本格的に彼がMr.ファンタスティックを演じ続けるというわけではないようです。
テーマに共通点多数! 6月は期待の2作が登場!
さて6月はなんとスーパーヒーロー×若者×マルチバースという期待の2作が同日公開されます。アカデミー賞をとったアニメ映画の待望の続編『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』、そして本作をもってDCユニバースが変わるとされる、エズラ・ミラー出演の『ザ・フラッシュ』です。
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どちらも見せ場いっぱい、嬉しいキャラが沢山登場するエンタテインメントになりそうですが、両者に共通するのが「愛する家族を守るのか、世界=バースを守るのか」という究極な選択を迫られるところです。だからとてもエモーショナル。どっちのマルチバースにもぜひ飛び込んでください。