第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『怪物』(6月2日(金)全国ロードショー)が、脚本賞(坂元裕二)、独立部門「クィア・パルム」の2冠を獲得。脚本賞を受賞した坂元と、カンヌから帰国した是枝裕和監督が5月29日(月)に凱旋記者会見に出席し、物語の出発点などについて語った。

10年前のある出来事が物語の出発点に

『怪物』は、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝裕和監督、『花束みたいな恋をした』「大豆田とわ子と三人の元夫」などで圧倒的な人気を博す脚本家・坂元裕二、音楽を『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞®作曲賞を受賞し国内外を問わず第一線で活躍した坂本龍一、という豪華なコレボレーションが実現した話題作。

画像: 坂元裕二

坂元裕二

子ども、親、教師とそれぞれの視点が描かれる本作。その出発点について坂元は「私が以前経験したことなのですが、車の運転中、赤信号で停車していました。前にトラックが止まっていて、青になってもそのトラックがしばらく動かないものですから、クラクションを鳴らしました。ですが、それでもトラックは動かず、『どうしてだろう』と思っていると、ようやく動き出した後に横断歩道に車椅子の方がいらしたんです。そのトラックは車椅子の方が渡りきるのを待っていたのですが、私にはそれが見えなかったんですね。それ以来、自分がクラクションを鳴らしてしまったことを後悔し続けておりました。このように世の中には普段生活していて見えないことがある。私自身、自分が被害者だと思うことにとても敏感ですが、自分が加害者だと気づくことにはとても難しい。どうすれば、加害者が被害者に対してしていることを気付くことができるのだろうかと、この10年あまり考え続けてきて、描き方の一つとしてこの方法を選びました」とエピソードを交えて説明した。

画像: 10年前のある出来事が物語の出発点に

是枝監督はそんな坂元の脚本について「プロットをいただいた時から、一体何が起きているのか分からない、分からないのに読むのが止められない。映画の半分過ぎても多分わからない。こんな書き方があるんだなと。自分の中にはない、物語の語り方でしたし、読み進めていく内に読んでいた自分が作品によって批評されていく。坂元さんのお話しでいうクラクションを鳴らす側に否応なくなってしまう。良い意味でですが、ある種の居心地の悪さっていうんですかね、それが最後まで持続するということが面白かったです。エンターテイメントとしても。それが僕は一番チャレンジのし甲斐のある脚本だと思ったところの一つです」とその魅力について語った。

『怪物』
6月2日(金)全国ロードショー
©2023「怪物」製作委員会
配給:東宝 ギャガ

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