「電波少年」シリーズでは人気バラエティー番組を演出・出演。欽ちゃんのドキュメンタリー映画では監督も務めるなど、今なお幅広い活躍をしている、伝説の「Tプロデューサー(T部長)」こと土屋敏男さんが、幾多のTVドラマから映画を紐解くおすすめのお話などや予測不可能な未知なお話等、テレビと映画がこれからどうなっていくのか?を中心にさらに熱く、紹介していきます。今回も『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と新時代の代表作と大絶賛の「サンクチュアリ -聖域-」についてです。
カバー画像:Netflixシリーズ「サンクチュアリ ‒聖域‒」独占配信中

土屋 敏男
日本テレビ社長室R&Dラボ社外アドバイザー。ひまわりネットワーク(株)アドバイザー。WOWOW(株)新規事業アドバイザー。みんなのテレビの記憶(同)代表社員。Gontents(同)代表社員。1964TOKYO VR(社)代表理事。

まずは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。今年のアカデミー賞作品ですが、これはこのコラムの前回も書いたのだが発表前に映画館で観て「これが獲ったら大変なことだなあ」と言うのが感想だった。そうしたら主要8部門のうちの6部門を獲ってしまった。自分の評価とアカデミー賞の評価がここまで違うのは正直初めてだったので面食らっていた。

すると早くもU-NEXTで見ることが出来ると言うことを知って自宅で再視聴。そして分かったことは重要なシーンを寝て見逃していたのだった! 言い訳だがこの日は寝不足で午前の打ち合わせと次の予定がすっぽり空いていたので映画館に飛び込んだのだった。そしてあのパラレルワールドに飛ぶ最初のシーンで寝てしまったようなのだ。

もう一度見て後付けではないが「素晴らしい映画だ!」と。

大昔だったら“もう一度映画館に行く〟は名画座に回ってくることを待つしかなかった訳で多分数年掛かっていただろうし、昔であってもDVDが出るのを待って見直すとなれば1年くらい経って、最初の違和感は忘れてしまっていただろう。

と言う意味で今現在の映画を見る環境というのはテクノロジーとビジネスの進化という意味で改めて素晴らしいと感じたのでした。

そう言えばその直前にU-NEXTで見ていたのは黒澤明の『生きる』(1952)だった。これはリメイク版「生きる」を観て帰宅してすぐに観た。そういう意味では『参照』というのは本当に便利になって理解も深まるし映画を観る上でありがたい時代になった。

新しい時代の新しい映像作品「サンクチュアリ -聖域-」

僕のFacebook上のフィードで公開されてすぐに大絶賛の嵐になり「これは観なくては!」と見て。そしてどハマりをしました。そうしたら日本の作品では珍しく世界のNetflixランキング(非英語)で初登場10位。次週はランクアップして6位になった。3週目は現時点ではわからないが個人的に悲願の「日本映像コンテンツの世界制覇」の一歩になってくれないかと期待している。

とは言うもののNetflixの基本戦略が「ローカルToローカル」つまりまずは製作国でヒットすることが最優先で世界的ヒットはそのオマケみたいなものだろうからすぐには日本作品を世界的ヒットにという風には変わらないだろう。

しかし僕のような“日本の映像コンテンツは世界を席巻し得るレベルにある”と信じている者には韓国ドラマが「愛の不時着」「イカゲーム」で世界規模に進化していったように日本もそうなることを夢見たい。

「サンクチュアリ -聖域-」はまずトップシーンに圧倒的に魅せられる。カラ(※)の画に飛び込んでくる砂だらけの肉塊。そして再びカラになりまた飛び込んでくるのが人の体だとわかる。オフで飛び交う怒声。ここまで30秒見ただけでこの作品がこれまで見たことのないものであり才能豊かな監督であることがわかる。
※カラ(空)何もないところ

そして決して緩むことなく全8話一気に観てみたくなる。実際そう観てしまった人がたくさんいることは事実だし合計7時間強の映画作品と言っていいくらいの密度とクオリティである。

そう! これを連続ドラマと見るか映画と見るか? 多分どちらでもない映像作品の存在のあり方と言うべきだろう。

だいたいこれまでの日本の連続ドラマの作り方と全く違う。それは単純に予算だけの問題だけではなく主演をオーディションでほぼ無名の俳優を選ぶ、主演その他の出演者を1年以上専門のトレーナーをつけて力士の体型にする。

やはりこれまでの日本のドラマでは考えられないやり方であり、ハリウッドスタンダードなのだろう。世界市場に出す映像コンテンツの作り方を見せつけられた気がして日本の映像コンテンツ製作者としては正直ため息しか出ない。

世界基準の作り方で日本のクリエーターよ羽ばたけ

しかしそんな製作環境が目の前にある時代になったのだ。僕らの時代には考えられなかったことだ。ましてやNetflixだけでなくDisney+もAmazonもある。Universalも日本でオリジナルコンテンツを制作することを検討していると伝えられている。

やるしかない! と思って欲しい。日本国内で受ければいいと言っているNetflixの日本人プロデューサーの目を掻い潜って世界的ヒットを飛ばしてほしい。

そんな時僕が22年前2001年にやったこんな企画を参考にしてくれないだろうか? それは電波少年でやった「アメリカ人を笑わしに行こう」。ダウンタウンの松本人志とアメリカに何度も行きアメリカ人の笑いのリサーチをした。

そして松本が製作前に出した結論は「アメリカ人に僕が日本で目指している100点の笑いを見せてもわからない。だから65点の笑いを作る。しかし100%の力で」

こうして忍者のハウスキーパーのショートドラマ「SASUKE」は完成してニューヨークで試写会を行い大爆笑を巻き起こした。

チューニング”を世界に合わせて日本の映像クリエーターよ! 世界を制覇せよ‼

画像: 「サンクチュアリ ‒聖域‒」 Netflixシリーズ「サンクチュアリ ‒聖域‒」独占配信中

「サンクチュアリ ‒聖域‒」

Netflixシリーズ「サンクチュアリ ‒聖域‒」独占配信中

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