「ただ普通に生きたい」切なる願いは届くのか・・・
本作は、沖縄のコザを舞台に、幼い息子を抱える17歳のアオイ(花瀬琴音)が社会の過酷な現実に直面する姿を描くヒューマンドラマ。6月9日(金)より3館で先行公開された沖縄では、話題が話題を呼び中高生からシニア層まで幅広い観客が来場、公開より17日で動員が1万人を越える大ヒットとなっている。
主人公アオイを演じるのは、昨年『すずめの戸締まり』への出演で話題を呼び、本作が映画初主演となる花瀬琴音。東京出身の彼女が、撮影の1ヶ月前から現地で生活し、“沖縄で生まれ育った若者”アオイを体現する。アオイの友人、海音には映画初出演となる石田夢実、夫のマサヤには『衝動』(21)の佐久間祥朗が起用され、花瀬と同様に撮影1ヶ月前から現地入り、沖縄・コザで実際に体感したリアリティ溢れる演技は先行公開された沖縄では絶賛の声が広がっている。
監督は、長編デビュー作『アイムクレイジー』(19)で、第22回富川国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた工藤将亮。長編3作目のオリジナル作品『遠いところ』は、4年に渡り沖縄で取材を重ね脚本を執筆、全編沖縄での撮影を敢行した。
日本公開に先立ち、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最高賞を競うコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに正式出品、約8分間のスタンディング・オベーションを受けた。さらに第23回東京フィルメックス[コンペティション部門 観客賞受賞]、第44回カイロ国際映画祭 [インターナショナル・パノラマ部門]、第53回インド国際映画祭(ゴア)[シネマ・オブ・ザ・ワールド部門]、ヨハネスブルグ映画祭など、海外映画祭で高く評価されている。
『17歳の瞳に映る世界』『裸足の季節』に続く衝撃作の本編映像が公開
国際的な映画賞や映画祭では、“社会的に過酷な立場に置かれた若き女性の姿”を描いた作品が高い評価を得ている。第88回米アカデミー賞®外国語映画賞でノミネートされた『裸足の季節』では、古い慣習と封建的な思想に囚われたトルコの小さな村を舞台に、自由を奪われた美しい5人の姉妹が奮闘する姿が世界で共感を呼んだ。第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いた『17歳の瞳に映る世界』は、予期せぬ妊娠をした少女が社会とどう向き合うのかを描いた。
第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で絶賛された映画『遠いところ』も、17歳の少女が過酷な現実に直面する姿を鮮烈にとらえて絶賛された。ティーンエイジャーでありながら既婚者で、幼い息子を抱えて生きるアオイを主人公に、理不尽で不寛容な現代社会の現実を突きつける問題作となっている。
『遠いところ』の撮影地である沖縄では、一人当たりの県民所得が全国で最下位。子ども(17歳以下)の相対的貧困率は28.9%であり、非正規労働者の割合や、ひとり親世帯(母子・父子世帯)の比率でも全国1位(2022年5月公表「沖縄子ども調査」)。さらに、若年層出産率でも全国1位となっているように、窮状は若年層に及んでいる。しかしながら、本作で取り上げたのは、もはや沖縄だけの問題ではない。今も尚続く、日本全国の社会問題について訴えかけた作品として世界から注目を浴びている。
今回解禁された映像は、仕事に行かなくなったにも関わらず、何かにつけて金をせびる夫のマサヤに呆れたアオイが帰り道に「ちゃんと働いて」と切実な願いを訴える場面だ。
夜のコザ、シャッターが閉まった商店街、2歳の健吾を抱きかかえるマサヤに、前を歩くアオイが「早く」と声をかける。2人の間には、微妙な緊張感が漂っている。あどけない息子を母のアオイが引き取って抱きかかえる。
「ただ普通に生きたい」と願うアオイの前にはどんな未来が待ち受けているのか。その先は、映画館でご覧いただきたい。
『遠いところ』
7月7日(金)より全国順次ロードショー(6月9日(金)より沖縄大ヒット先行公開中)
監督・脚本:工藤 将亮
キャスト:花瀬 琴音 石田夢実、佐久間祥朗、長谷川月起/松岡依都美
配給:ラビットハウス
©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ