パリの街並み、地中海の陽光、きらめく砂浜、ロマンスに夢中の少女とうつろいゆく青春を謳歌しようとする男たち…。輝く季節を軽やかに大胆に切り取るジャック・ロジエの才能に、ヌーヴェル・ヴァーグの象徴であるゴダールは絶賛し、トリュフォーは嫉妬したという逸話をもつ。その全貌を捉えようにも作品に触れる機会が限られていたロジエ作品だが、近年フランスではギヨーム・ブラック監督など熱狂的に支持する若手監督も現れている。
今回の特集上映では、ジャック・ロジエ監督の長篇劇映画全5作品のうちデジタル・レストア(4K・2K)された4作品を、そして短篇2作品を上映。長篇『トルテュ島の遭難者たち』と『フィフィ・マルタンガル』は劇場初公開となる。(配給:エタンチェ、ユーロスペース)
特集上映『みんなのジャック・ロジエ』作品詳細
【長篇作品】
■『アデュー・フィリピーヌ』
1962 年/フランス=イタリア合作/フランス語/モノクロ/110 分/1.66 :1/原題:Adieu Philippine/日本語字幕:寺尾次郎
出演:ジャン=クロード・エミニ、イヴリーヌ・セリ、ステファニア・サバティーニ
©Jacques Rozier
1960 年パリ。アルジェリア戦争のなか兵役を数か月後に控えた青年ミシェルは、勤務先のテレビ局でリリアーヌとジュリエットという仲の良い二人の娘と知り合う。二人は次第にミシェルに惹かれていくが、彼はどちらとも上手くやろうとする。そんな中、仕事でミスをしたミシェルは、兵役前にヴァカンスを楽しもうとテレビ局を辞め、二人に告げぬままコルシカ島へ旅立つ。
■『トルテュ島の遭難者たち』★劇場初公開★
1976 年/フランス/フランス語/カラー/146 分/1.66 :1/原題:Les Naufragés de l'île de la Tortue/日本語字幕:高部義之
出演:ピエール・リシャール、ジャック・ヴィルレ、モーリス・リッシュ、ジャン=フランソワ・バルメ、カロリーヌ・カルティエ、アラン・サルド、パトリック・シェネ、ピエール・バルー、ナナ・ヴァスコンセロス
©Jacques Rozier
パリの旅行代理店に勤めるボナヴァンチュールと同僚の「太っちょノノ」は、ロビンソン・クルーソの冒険を追体験させる無人島ヴァカンスツアーを企画する。早速、彼らはツアーの候補地に向かうが、空港で「太っちょノノ」が逃げ出し、代わりに弟の「プティ・ノノ」がボナヴァンチュールに同行することになる。現地に到着した二人は、最初のツアー客と冒険をはじめるが、誰も二人の言うことを聞かず、挙句の果てボナヴァンチュールは無人島で遭難してしまう……
■『メーヌ・オセアン』
1985 年/フランス/フランス語、ポルトガル語、スペイン語、英語/カラー/136 分/1.66 :1/原題:Maine Océan/日本語字幕:寺尾次郎
出演:ベルナール・メネズ、ルイス・レゴ、イヴ・アフォンソ、リディア・フェルド、ロザ=マリア・ゴメス、ペドロ・アルメンダリス・Jr
©Jacques Rozier
ブラジル人ダンサーのデジャニラは、パリ発の特別列車「メーヌ・オセアン号」に飛び乗るが、検札係に罰金を命じられる。フランス語が分からない彼女だが、たまたま通りがかった弁護士の女性に助けられ、二人は仲良くなる。翌日、弁護士に誘われ漁師の裁判に立ち会ったデジャニラは、その漁師が住む大西洋の島で週末を過ごすことにするが、そこに検札係もやって来て……
■『フィフィ・マルタンガル』★劇場初公開★
2001 年/フランス/フランス語/カラー/120 分/1.85 :1/原題:Fifi Martingale/日本語字幕:高部義之
出演:ジャン・ルフェーブル、イヴ・アフォンソ、リディア・フェルド、マイク・マーシャル、ルイス・レゴ、フランソワ・シャト、ジャック・プティジャン、ロジェ・トラップ、ジャック・フランソワ、アレクサンドラ・スチュワルト、ジャン=ポール・ボネール
©Jacques Rozier
ブールヴァール劇『イースターエッグ』はパリで大ヒット中。この低俗な自作が権威あるモリエール賞を受賞したと知った劇作家は、これを何かの陰謀だと思い込み、上演中の戯曲を改変して「敵」に報復しよう企む。
【短篇作品】
■『バルドー/ゴダール』
1963 年/フランス/10 分/モノクロ/1:1.37/原題:Le Parti des choses : Bardot / Godard/日本語字幕:寺尾次郎
©Jacques Rozier
■『パパラッツィ』
1963 年/フランス/20 分/モノクロ/1:1.37/原題:Paparazzi/日本語字幕:寺尾次郎
©Jacques Rozier
『バルドー/ゴダール』と『パパラッツィ』は、ゴダールの『軽蔑』(1963)の後半1/3 を占めるカプリ島でのシーンの撮影現場に取材したドキュメンタリーで、いわば双子のような作品。『パパラッツィ』が『軽蔑』の撮影現場の外側で起きていたブリジッド・バルドーと彼女を狙うパパラッツィとの攻防戦に焦点を当てた作品であるのに対し、『バルドー/ゴダール』はその内側でのバルドーとゴダールとの関わりをとらえている。